親切なお隣さん30

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 それでもどうにか、核心に触れてしまわないように言葉を選びつつ口を開く。なんでもないですで押し切れる気がしなかったというか、あれだけぶち上げていたテンションが、この土壇場でガクッと落ちてしまったことを気にするなとも言えないからだ。
「あの、俺、自分で弄ってた、って、言ったじゃないすか」
「そうだね」
「しかも壁向こうのアンタにバレるくらい、喘いでたわけじゃないすか」
「うん、まぁ、君の話を聞く限りではそうなるよね」
「で、ずっとアンタに抱いて貰う想像で気持ちよくなってたのが、今、現実になろうとしてて、しかも今のアンタは俺の恋人で、でもそこまでは想像したことなくて、あー、その、ずっと都合がいい妄想ばっかしてて、アンタが実際にどんな反応するのかわかんないのは怖いっつうか、がっつく気満々だったのに引かれたらやだなとか、そもそもホントに俺を抱けんのかな、とか、なんか色々考えすぎて、その、お尻使うセックスに抵抗とか、は、ない……ってことでいいんすか?」
 黙って聞いてくれたので、何言ってんだろと思いながらも思いつく限りのことをダラダラとぶちまけてしまえば、相手はまず、大丈夫だよと口にした。ただし、続いた言葉はその大丈夫を全く保証していなかったけど。
「正直なところ、経験のあるなしで言えばアナルセックスはしたことがないんだけど」
「ちょ、っと!」
 思わず、それでよく大丈夫とか言い切るよな、という気持ちが溢れてしまった。
「気持ちはわかるけど、取り敢えず最後まで聞いてよ」
 自身のとりとめのない吐露を黙って聞いてもらったあとなので、そう言われてしまったら黙って最後まで聞くしかない。そう思ったのに。
「君が口へのキスを許してくれたあと、いつかはって思いながら男同士でのアレコレをおれもかなり調べたし、一応自分の体で試してみたりもしたわけ」
「は? えっ? 試した?」
 初っ端から聞き捨てならない単語が飛び出てきて、口を挟まず聞き続けるのは無理だった。
「そう。試してみたの。だって君が抱く側ならって言い出す可能性だってあったわけでしょ。おれとしては、君が結婚というかおれとのパートナーシップに応じてくれるなら、そこは譲ってもいい。って言えたほうがいいよなって思って」
「言えたほうがいいと思って?」
 なんか変な言い回しだと思いながら繰り返してしまえば、いくら好きになっちゃったからって年下の男の子に抱かれたいって感情が素直に湧いてはこないよと、苦笑とともに告げてくる。
「つまりね、君に抱かれる想像で弄って気持ちよくなるのは無理だったし、君に抱かれたいなと思ったこともないんだけど、君にどうしても抱く側がいいってお願いされたら頷けるかな、くらいにはなってるんだよね。って言ったらやっぱドン引き?」
「ドン引きっていうか、えぇぇ……」
 引くというより戸惑いが凄い。相手が抱かれる側になる可能性を考えたことは欠片もなかったせいだ。
「俺が抱く側とか考えたことなかった、す」
「できればそのままそんなこと考えずに、抱かれる側で満足してもらえるといいなと思ってるよ。というかおれとしては、おれが君を抱けないとしたら、君がやっぱり無理だとか痛いとか言いだす場合だけだと思ってる」
 経験はないけど抵抗なんてないし、むしろ期待ばっかり膨らんでると言って、やっぱり相手は苦笑している。
「めちゃくちゃデカいとかじゃなければダイジョブ、す」
 こんくらいなら、と思わず所持しているディルドのサイズを手で示してしまって、やっちまったと思うが後の祭りだ。
「あ、や、その……」
「もしかして、随分具体的だねって突っ込むべきとこなの?」
 慌てすぎてて怪しいよと言いながらも、笑ってくれているだけマシだろうか。
「アンタのちんぽ、勝手に想像して買ったんすよ。ディルド」
 がっくりと肩を落として、仕方なく正直に告げる。隠しても仕方がないと言うか、隠して経験済みと思われたくはなかった。
「バイブじゃなくて?」
「え、気にするのそこ、すか?」
「いやだって君がアンアンしまくってたのがバイブの性能のおかげとかだったら、おれに勝ち目ないかもって思って」
「勝ち目……」
「だからけっこう期待しちゃってるんだって。そんな経験あるわけじゃないし、アナルセックス初めてだし、君を満足させられる自信なんか全然ないんだけど。でもそれはそれとして、君が気持ちぃって喘いでくれる姿が見たいと思うのは当然じゃない?」
 結構力説されてしまったが、そんな力説されても困る。というか、当然じゃない? なんて聞かれても答えに困る。
「俺がアンアンしまくっても引かないんすか?」
「なんで引くと思うの?」
「全然初めてっぽくないから? つかディルド突っ込んだ時点で処女じゃないとか言われたら、まぁ、そうなんすけど。でも、」
「誰かに抱かれた経験があるわけじゃないなら初めてでいいと思うよ」
「そ、すか」
 本物ちんぽは突っ込まれたことないですと申告する前に、相手がこちらの言いたいことを汲んでくれて、しかも肯定してくれたから、一気に気が抜けたと言うか、気が楽になったのは間違いない。

続きました→

 
 
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