親切なお隣さん31

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 そしてあからさまに気を抜いたせいで、相手にも相当気にしていたと思われたらしい。
「もしかしてそれを気にしてた?」
「それ?」
「初めてなのに初めてじゃないみたいな反応しちゃいそう、って」
「まぁそれも多少は。てか俺が初めてなの、やっぱ嬉しいとか思います?」
「そりゃあ素直に嬉しいよ。だって君が実は経験済みですって言うとしたら、それ、高確率でパパ活とかだろ?」
「グゥッ」
 見事すぎる指摘に、言葉が喉に詰まって変な音が鳴った。そんな反応を見せたら、経験あるって言ってるようなものなのに。
 そしてまんまと、パパ活経験済みと認定されたっぽい。
「まぁ君がパパ活したことあっても、おれと出会う前の話なら仕方ないとも思ってるから大丈夫。もっと早く出会いたかったってちょっと悔しい気持ちも沸くけど、早く出会ってたからってそれが阻止できるかもわからないし、そもそも君を同じように好きになってるかもわからないし」
「あんなにパパ活否定してたのに?」
「それは君が金銭的に困ってるなら助けたいと思ってたし思ってるからだよ。だから学費の問題を相談してくれたときは本当に嬉しかった。あと君を明確にお金でどうこうするのは絶対に嫌だったから、牽制の意味合いが大きかったよ」
 おれがパパ活してくれたらいいのにって割と本気で思ってたでしょ? と、疑問符付きだけどやっぱり指摘には違いない言葉が続いて、諦めの境地でハイと返した。
「ちなみに、君がご飯作ってくれるのをパパ活みたいなものって言ったり、おれとパパ活するのがありっぽいお誘いしてこなかったら、おれは自分の中に湧いた君への感情を、恋愛感情とは思わなかった可能性がある。というかその可能性が高い」
 だからまぁ、君が何かしらのパパ活経験済みだったからこそ今があるとも言える、なんて言われて一気に頭の中に疑問符が湧きまくった。
「えっ??? なんで???」
「いやだって、お金払ったらおれとエロいことしてもいいって思ってるんだ、ってのは結構衝撃的だったというか、あれがなかったらそういう対象に考えなかったと思うんだよね」
 じゃあもし、食費以外にもお金出す気があるならエロいサービスも考える、なんて言わなかったら。もしもバイト感覚で手間賃をねだっていたら。好きにはならなかったってことだろうか。
「まるで俺のせいでおれを好きになったみたいな……」
「それはちょっと違う。昔貰った恩を返すのがそもそもの目的だったし、最初は大家さんとかと同じカテゴリに入れてたっていうか、好意を持つのはいいけど恋愛対象にしていい相手ではない認識だったの。それが、君のパパ活発言で、もしかして恋愛対象にしてもいいのかなってなっちゃった」
「あー……大家さん大好きっすもんね」
 思わず呆れ混じりに苦笑すれば、同じように苦笑を返しながらも。
「まぁ君におれと恋愛したい気持ちがなかったのも知ってるんだけどね。恋愛感情抜きでお金を挟んでエロいことをする、というのがおれにはどうにも受け入れられなくて、君をこっちに引きずり込んだとも言える」
「あの、もしも俺が、エロいサービスとか言い出さないで、食事作り続けてもいいけど手間賃出してってバイト感覚で頼んでたら、俺と結婚とか言い出さなかったんすか?」
「そうだね。そういう形でおれからお金を引き出してくれてたら、君を恋愛対象にはしなかったかもね。君のご飯の魅力の前で、就職後も副業として続けないか、とか、エロいこと抜きでいいからパートナシップ契約しない? みたいなぶっとんだ提案してる可能性もなくはないけど」
「そこまで凄いもの作ってる認識、ぜんぜんないんすけど」
 これは度々感じていることでもある。嬉しいなとは思うけど、妙に評価が高すぎるとも思う。
「ご飯の味だけの話じゃなくて。君がおれの好みとか健康とか考えながら作ってくれてるってわかるのが、まず凄く嬉しいんだよね」
 もしかしたらこれは弟くんの影響もあるのかもだけど、と言われて、たしかにそれはあるかもなと思う。
 美味しいとかは言ってくれなくても、不味いと残されることがあまりなかったのは、弟の好みを意識してたからという気はするし、食材の産地まで気にするくらい健康意識が高かったから、栄養面をそれなりに考慮するのだって当たり前だった。
「それに、君と一緒に食べる時間も、お弁当を開ける時のワクワク感も、特売品が買えたって喜んだり、食材の値段が上がって落ち込んだり、レシートまとめて食費報告してくれたり、そういうの全部ひっくるめて、君が作るご飯の魅力と思ってる」
「後半ちょっとよくわかんないすね。特売品買えたとか食材高くなったとかの報告が? 魅力に? なるんすか?」
「だってもう君への好意は恋愛感情だし、愛しいって気持ちで見ちゃうし、君を恋愛対象にしてなかった場合どうなってたかなんて正しく想像するのは無理だよね」
 開き直って言い切られたけど、恋愛感情だからと言われたところで、特売品だの食材高騰だのの報告が魅力に感じるって話に納得が行くわけではないんだけど。
「エロいサービスも考える、なんて言ったこと、後悔してる?」
 納得行かない気持ちをどう受け取ったのか、そんなことを聞かれて首を横に振った。後悔なんて、欠片もしていない。

続きました→

 
 
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