じっくり考えてみたところ、スリットで快楽を得ることへの興味というよりは、やはり、番となった相手の発情を何もせずに過ごすことへの、後ろめたさだったり焦燥だったりが大きそうだった。
自身の繁殖期は３人で過ごすのに、番の繁殖期で自分だけが除け者になるのは、多分、きっと、寂しいのだと思う。
自分たちの番登録は手っ取り早く彼が同席するための手段だったし、彼の本当の番相手はニンゲンの方という認識ではあるけれど、２度も繁殖期に付き合わせて、かなりの回数発情を受け止めてもらって、どうやら情が湧いてしまった。
つまりはニンゲンに指摘されたように、好きになったから抱かれたい、という理由で合っているんだろう。
ただ、それを告げてみたところで、相手はやはりいい顔はしなかった。
そんなつもりで番になったわけでも、繁殖期の相手を務めたわけでもない。という相手の言い分は最もだと思う。自分自身、相手の繁殖期を前にしてこんな気持ちになっていることに、それなりに驚きもあるからだ。
だとしても。
体格差が大きいのは事実なので、訓練したところで受け止められるほど広がるかはわからないけれど、でももう情は湧いてしまったし、ニンゲンは協力してくれそうだし、訓練しないという選択肢はない。
「訓練はします。繁殖期に帯同させるかは結果次第でお願いします」
はっきりとそう言い切れば、相手は渋々「わかった」と返してきた。
「ただし、２人だけで訓練するのは認めない」
「まさか手伝う気ですか？」
それともニンゲンに危害が及ばないかという見張り役だろうか。スリット部を撫でられたり舐められたりの経験はあるが、中に指やら舌やらを突っ込まれたことはないので、もしかしたら初期は暴れたくなるような不快感でもあるのかもしれない。
撫でられたり舐められたりでも、ぞわっとなってシーツを握りしめてしまったことは何度もある。
「まさかってなんだ。当たり前だろう？」
「仕事、ありますよね？」
「夜だ。俺が部屋に戻ってからでいいだろう」
番が繁殖期のために準備するという話なのだから仕事が終わったあとのプライベートの時間で行うべき、と言われてしまうと、そうですねと返すしかなかった。
そのやりとりを聞いたニンゲンは、許可が取れたことに喜び、夜に３人でという部分で更に喜んだ。
「夜ってことは泊りか？」
どうだろう？
そんな話は出なかったから、普通に何時間か訓練したあとで自室に帰るんじゃないだろうか。そういや１度の訓練にどれくらい時間をかける予定なのかは聞いていない。
「訓練終わったら部屋帰る、思う」
「泊まってけばいいのに」
繁殖期はこの部屋にこもるのだし、大きなベッドは３人で横になれる広さが充分にある、というのはわかっているが。
「でも俺、泊まれ言われてない」
「そっか。で、いつから？ 今夜は？」
「まだ決まってない、これから」
「頻度も？」
「週２、言ってた」
最低でも週２くらいは時間が取れるようにする、とは言っていたし、そう言ったからには時間を捻出するのだろう。
ニンゲンと２人だけで訓練できるなら毎日だってチャレンジしていたと思うから、正直、少ないなと思ってしまったけれど、それなりに忙しいヒトだから週に２度も自分のために時間を裂かせてしまう申し訳なさもかなりある。
「週２かぁ〜……」
「少ない思うか？」
「アイツの繁殖期に間に合うかどうかって話なら、まだなんとも言えないかな」
指も舌も入れたことがないから中の広さも感度も未知数。と言われてしまうと、それはそうだと納得するしかない。
「訓練、毎日したい、思ってた」
「まぁそれは仕方ないよな。アイツ忙しそうだし」
「まさか一緒する、思ってなかった」
「そうか？ 俺は全然納得だけど」
番を他人の手で開発されたくないのは普通じゃないのと言われて首を傾げた。
「俺、あのヒトの訓練、手伝ってない」
別に手伝いたかったとも思わないし、すでに開発されきったあとだったからこそ、好奇心も手伝って受け入れてくれたのだとも思っている。
「それはそうだけど、前提が違うっつうか」
まっさらな体に舌とか指とかを突っ込んで、繁殖期に勃起ペニスを突っ込めるように広げたり、中を弄られて気持ちよくなれるようにするんだから、それは突っ込むやつが準備しないとダメだろと言われたけれど。
「お前、俺抱く、しない？」
スリットの訓練過程でニンゲンに抱かれる想定だったけれど、ニンゲンの方はそれを含めて手伝うと言ってくれたわけではなかったのだろうか。
続きます
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