目に入った最初のラブホにそのまま進んで、完全に二人だけの空間をあっさり入手する。
もし緊張しきっていたら、シャワーは飛ばしてベッドに押し倒しちゃってもいいかなと思っていたのだけれど。それなりに緊張はしているものの、キョロキョロと部屋の中を見回すくらいには余裕があるようなので、先にシャワーを使うかどうかを問いかける。
「使います」
「ん、じゃあ行こうか」
「えっ?」
「そこ驚くようなこと?」
いきなり風呂場エッチとかは考えてないから一緒に行こうよと誘えば、相手は慌てた様子で首を何度も横に振って嫌がった。
「既に一緒に温泉入った仲だよ?」
まぁそれは恋人になる前の話だけど。
「俺に裸見られるの、恥ずかしい?」
一緒にシャワーを避けたところで、どのみち見るんだけど。
「ち、ちがっ、そのっ」
一向に落ち着く気配がない相手が、あわあわと言葉を探している。
「うん。ちゃんと聞くからまずは落ち着こうか」
深呼吸する? と促してみたら素直に深い呼吸を繰り返すので、やっぱりこのままベッドに押し倒してしまおうか、なんて気持ちがウズウズと湧いてしまう。早く触れたい。
「あ、あのっ」
「うん」
「じゅ、準備は一人で、できる、ので」
「ん?」
「だからその、一人で、させて欲しいっていうか」
「待って待って待って。準備?」
「だ、だって必要、ですよね?」
「それは俺に抱かれるための、体の準備?」
「そ、です」
「調べた?」
「そりゃあ……」
「調べて、自分一人で出来るように、練習した?」
どんどん顔を赤らめていた相手が、ちょっと怒ったみたいに睨みつけてくる。デリカシーがないのは認める。でもやっぱり直接聞きたいなと思ってしまう。
「したんだ?」
「しました。だからっ」
「凄い。嬉しい」
衝動に任せて眼の前の体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
「もうそこまで考えてくれてるとは思ってなかった」
「え?」
「キスだけじゃ足りなくてこんなとこ連れ込んだけど、君を抱く気はなかったんだよね」
「えっ?」
「だって男同士だよ? どっちが抱く側やったっていいんだよ?」
「あ……って、まさか俺が抱く側、でした?」
「違う違う。そういう話し合いを何もしてないのに、俺の一存で突っ込むわけ無いだろ、って話」
「じゃあ、こんなとこきて、一体何するつもりだったんですか?」
「何って、突っ込んだり突っ込まれたりしなくても、一緒に気持ちよくなれるよね? むしろ突っ込んだり突っ込まれたりしない方が、純粋にキモチイイだけで終われるはずっていうか」
体撫で回して気持ちぃって喘がせてイク時の顔とか見れたら最高って思ってたし、触って貰えたらどんなに拙くても絶対楽しいし嬉しいだろうって思ってた。
という正直な気持ちを伝えれば、相手は身体を捩って腕の中から抜け出すと、赤くなった顔を片手で隠すみたいに覆ってしまう。
「早とちり、すみません。ってか、ほんと、恥ずかしい……」
「なんでそこで謝るのかな。凄く嬉しい、って言ったのに」
俺が抱く側でいいの? と聞けば、逆になんで抱かれる側になる可能性なんか思いつくんですかと聞かれてしまった。いやだってそんなの。
「いきなり処女奪われるより、やっぱ童貞捨てたいかなって。あとはまぁ、いつも通りの好奇心? 真剣に抱きたいって言われたら、童貞捨てさせてって頼まれたら、試してみてもいいかな、くらいの気持ちだけどね」
「言わないです。てか俺が抱かれる側やったほうが、絶対マシだと思うんで」
「マシって」
凄い言い様だなと笑ってしまう。
「まぁ確かに。そう酷いことにはならないだろう自信はあるけどね」
ちゃんと調べたし、無理する気ないし、気持ちよくなって欲しいって思ってるし。だから安心して任せてくれていいよと言えば、顔を覆っていた手を外した相手が、チラリと視線を寄越した後で頷いて見せる。未だ羞恥が引かないらしく、横を向くと耳まで赤くなっているのがわかって、それはそれでなんだか可愛い。
再度引き寄せて、パクっとその熱そうな耳朶を食んでしまいたい衝動を、焦る必要はないんだからと押さえつける。
「じゃあ、先にシャワー浴びてくるから。そっちも準備、始めてくれる?」
やはりコクンと頷く相手に、ゆっくりで大丈夫だからと告げてから、一人バスルームへ向かった。
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■
HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁