期待していいなら泊まりで。クリスマスプレゼントは貴方が欲しい。
そう伝えた結果、彼が言うところのビジネスホテルに毛が生えた程度らしいシティホテルの一室で、彼がシャワーを浴び終えるのを待っている。
望んだ通りの展開のはずなのに、胸は重く沈んでいた。
自分が渡したプレゼントだって、彼の弟でもある親友に付き合って貰って選んだだけあってかなり喜んで貰えたけれど、でも今日彼がくれたものと、これからくれようとしているものを考えたら、全く釣り合っていないと思う。
クリスマスデートが出来るなんて思っていなかったから、どうしてもクリスマスにはここへ行きたいなどという場所や店はなく、それならデートプランは決めさせてと言われて相手に任せてしまったけれど、それだって、受験生であるこちらを気遣って余計な時間を割かずに済むように、そう言ってくれただけ程度に思っていたのだ。
でもランチからスタートした本日のデートを、終始ご機嫌に笑う彼にあれこれエスコートされてしまって、ディナーを予約したという店に入る頃にはすっかり滅入っていた。彼任せにせず一緒に今日のプランを考えていたところで、違う結果になったかはわからないけれど。
だってあまりに慣れている。告白したあの時期にたまたまフリーだっただけで、高校大学あたりは彼女が居ない期間のほうが短かったらしいから、きっと何度も恋人とクリスマスを過ごして来たんだろう。この部屋だって、ビジネスホテルに毛が生えた程度などと言ったって、前回取り敢えずで入ったホテルより、同じツインルームでありながらやはり格段にこちらの方が雰囲気がいい。要所要所を外さず押さえているという感じが、ありありとわかって辛かった。
比べてこちらは、彼が初恋で、もちろん初めての恋人だ。恋人と一緒に何処かへ出かけるデートだって今回が人生初めてで、悲しくなるくらいあちこちの場面でテンパって内心あたふたとしてしまった。表情に出ることは少ないようだけれど、一瞬動きが止まってしまったり、きっとまた怖い顔をしていただろう。
そんな自分に、彼はやはり終始優しかった。色んな場面で細やかに気遣ってくれた。
ちょっと甘ったれな弟を溺愛してるような人だし、きっとあれこれ気遣い世話を焼くのが、元々好きなんだろうというのはわかる。恋人という関係になったせいで、自分もまた、彼の中では庇護対象になったらしいのも感じている。弟でも女の子でもないのに、弟と同じ年齢だからか、それとも過去への罪悪感がそうさせるのか。
彼の弟のように、もしくは彼が付き合ってきた女の子たちのように、その優しさや気遣いに甘えて喜んでありがとうと笑えば良いのだ、ということもわかってはいた。でも素直に甘えるなんて真似が、自分に出来るわけがない。彼に甘やかされるのを嬉しく思う気持ちはないわけじゃないけれど、でも甘えたいよりは自分が彼を甘やかしてみたいと思う。
なんせ抱きたいと思っているような相手なのだ。彼から与えられるものだけで満足なんて出来っこない。自分の手で、自分自身の力で、彼の色んな姿を見たいし、引き出したいと思ってるのに。弟になりたいわけでも彼女になりたいわけでもない。一人の男として見てほしいのに、五歳という年の差も、経験値の差も、どう埋めたら良いのかわからない。その差を埋められる気がしない。
出来ることなら自分が彼をエスコートして、素敵なクリスマスデートを過ごしたかった。なのに自分が彼にしたいと思うようなことを、あっさりと彼にこなされてしまって、自分の立場ってなんなんだろうと気持ちが揺らぐ。
ここに居るのが自分ではなく女の子なら、今日のデートにふわふわと甘く幸せな気持ちにさせられたまま、その気持を壊されることなく彼に優しく抱かれてクリスマスデートを締めくくるんだろう。なのに彼は、今日一日不慣れな年下の恋人を散々優しくエスコートした挙句に、締めくくりとして抱かれるための準備をしている。
責任感でも罪悪感でも同情でもいいから彼が欲しい気持ちは確固としてあるのに、この後、差し出されるまま彼の体を抱いてしまうことに躊躇いを感じずには居られなかった。それでも、彼の体を目の当たりにしたら、そんな躊躇いは彼を組み敷きたい欲望の前に霧散するのだろうか。
バスルームの扉が静かに開く音がして、胸がギシリと軋む気がした。
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レイ様こんばんは!
胸がキュンキュンしてます!(>_<)
完結まで待とうと思ったのに、また読んでしまいましたT_T
ああ、親友の兄貴がヤバイ……
睡魔さん、まだまだ途中ですが、完結前に待ちきれずに読んで下さってありがとうございます!
胸キュンしてもらえて嬉しいです(´∀`*)ウフフ
兄さんいっぱい頑張ってくれてるのに、うまく噛み合わない感じが書いてて楽しいです。きっとバスルームで兄さんも溜息ついてるんだろうなぁとか考えてしまいます。
幸せな初エッチまではもうちょっと掛かりそうですが、最後までお付き合いよろしくお願いします〜