兄は疲れ切っている11

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 目元を覆い隠していた腕を下げた兄が、不安げにこちらを見上げてくるから、苦笑しながら焦らしてゴメンねと謝っておく。
「んな顔しないでよ。もう挿れるから」
 困ったように逡巡したあと、それでもコクリと小さく頷くのを目の端に捉えながら、自身の準備を手早く済ませる。開かれたままの足を更に押し開き、散々弄ったせいで濡れてヒクついている兄の尻穴にゴムを被ったペニスの先端をあてがえば、んっ、と期待混じりの甘い息が漏れ聞こえた。
 今のは演技でもサービスでもなさそう、と思った瞬間に、ぶわりと増すのは欲情と興奮だ。思いっきり突っ込んで、サービスなんて出来ないくらい激しくかき回してやりたい。しかしギッと奥歯を噛み締めて、そんな暴力的な衝動を押し殺した。
 好き勝手に激しく突き荒らしても感じて貰えるほど、兄の体は抱かれ慣れてるわけじゃない。というよりも、兄の体は丁寧に優しく抱かれた経験しかなくて、焦らすような意地悪はされても、男の下衆な欲望に晒されたことはない。なぜなら、逆らわずにこちらの言い分をほぼ全て飲むことで、乱暴な扱いをするなという意思をはっきり兄に示されているからだ。
 顎の力を抜いて深く息を吐き出した後、ゆっくりと腰を進めていく。期待に甘い息を漏らしてくれるというのなら、その期待には応えておくのが正解だろう。
「ぁ、…ぁっ…ぁあ、っん」
 控えめに上がる声は、やっぱりサービス的だった。押し込まれる力に従い穴が開いて、ぬぷりとペニスの先端を飲み込んでいくさまは酷く卑猥なのに、興奮するというよりもなんだか虚しい。
 ゆっくり深くまで押し込んで、またゆっくりと引き抜く動作を繰り返し、緩やかに兄の体の熱を上げていく。
「ぁ、……ぁあっ、……そこ、きもちぃ」
「ん、ここ、な」
 気持ちがいいと教えられた場所を、優しくこねるように腰を回す。そうされるのが好きだと、知っている。
「んぁっ、あっ、ぁあっっ」
「気持ちよさそ」
「ん、んんっ、きも、ちぃ」
「うん。もっと気持ちよくなって」
 兄の作られたような甘い声に、応じて吐き出す自分の声の、もったりと甘たるい響きに反吐が出そうだ。そう思うのに、気持ちぃと漏らされる声に何度も頷いて、もっともっと気持ちよくなってと甘やかに繰り返す。
「ぁ、ぁあ、も、イキ、たい」
「いいよ、イカせてあげる」
 あっさり了承を返して兄のペニスに手を伸ばせば、ビックリしたように体が小さく跳ねた。戸惑うように見上げてくる視線は無視して、先走りを零して濡れるペニスを握ってゆるゆると扱いてやる。
「ぁあっっ」
「きもちぃ?」
「ん、うん」
 戸惑いを滲ませながら、それでも素直に頷いてくれたから、イッていいよと声を掛けて少し強めに擦り上げてやった。
「ぁ、まっ、て、や、イッちゃう、イッちゃう」
 いつもと違う気配に気づいてか、少し慌てた声が上がる。しかし手を緩めるようなことはしなかった。
「だからイッていいよ、って」
 ぐちゅぐちゅとペニスを扱きながら、軽く腰を揺すって中のイイトコロを刺激してやれば、そう持たずに白濁を吐き出してしまう。
「ぁぁああ……」
 気持ちよく絶頂を極めたというよりも、不本意な吐精だったのが丸わかりな、呆然とした失意混じりの声に苦笑を噛み締めた。
「お疲れ様」
 腸の収縮が落ち着くのを待ってからズルリとペニスを引き出せば、なんで、と力ない声が不安げに揺れる。理由はもちろんわかっている。兄だけイカせてこちらは射精せず、兄の中からペニスを抜ききってしまうのが初めてだからだ。

続きました→

 
 
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