「お前まで照れるなよ」
照れくさそうに言われて、無茶言うなと思う。というか言った。
「無茶言うな。てか本当に、いいんだな?」
「ん、いいよ。抱き潰すにしろ、そこまで酷くはされないって、信じてるし?」
「なるほど。そーやって釘は刺す、と」
「本音を言えば、ちょっとは怖い」
そりゃそうだろう。抱かれる側の負担を訴える、一回イケばもう充分みたいな兄からすれば、イカせまくるだの抱き潰すだ言われて不安がないはずがない。でも、ちょっと、なんだ?
「ちょっと?」
「ん、ちょっと、だよ」
性欲発散に付き合わされるわけじゃないってわかってるから大丈夫、と続いた言葉に、ああ、そうか、性欲発散って思ってたのか、と思う。辛うじて女代わりになるお気に入りのオモチャを使って、性欲を発散していると、思われていた。
はっきり言葉にされなければ、オモチャ扱いと言われただけじゃ、そこまで思い至れない自分自身の思慮の浅さにガッカリする。抱かれる側の負担というのは、体のことだけじゃなく、心への負担もきっと含まれていたんだろう。
両手で顔を覆ってしまった時にこちらは体を起こして傍らに座っていたけれど、顔を覆うのを止めた手は今、だらりと垂らされていた。その手に兄の手が伸びてくる。ゆるっと包み込んで、それからキュッと力を込める。
「今、嬉しくて仕方ないって、言ったろ」
ヘラヘラふわふわというよりは、優しい顔で笑う兄に、ゴメンと出そうになる言葉を飲み込んだ。謝って欲しいわけじゃないって、その顔を見ればわかったから。
「泣かした分の償い込みで、いっぱい、愛してくれるんだよな?」
もちろんそのつもりだと頷けば、優しい笑顔をさらに花開かせて、俺たちが両想いなんだって思い知るようなセックスをするんだろと、握られた手を、早くとでも言うように引かれてしまった。
誘われるまま顔を寄せて、角度を変えながら何度も繰り返し優しく唇を塞ぐ。キスの合間に好きだよと囁けば、兄が嬉しそうに笑って、俺も、と囁き返してくれる。幸せだった。
キスを深いものへ変えながら片手を下肢へとすべらせて、まだ萎えきっていないペニスは軽く撫でる程度にして、脚の間に差し込んでいく。触れやすいようにと軽く脚を開いてくれるのがわかって、喉の奥で小さく笑ってしまえば、抗議するみたいに開かれた脚がギュッと閉じてしまう。
「嬉しかっただけだって。ね、もっかい脚開いて。俺と繋がる場所、触らせて」
キスを中断して、けれど顔はほとんど上げずに間近で頼み込めば、もう、と呆れと甘えと照れとほんのちょっとの怒りを混ぜたみたいな声を出しながらも、素直に脚が開かれる。しかも、先程よりもやや広く。
キスは再開しないまま、奥に伸ばした指先で窄んだ窪みに指先を押し当てる。
「ぁ……」
ふるりと兄が身震いし、キスの途中で背に回されていた兄の手に、僅かに力がこもったのがわかった。兄が準備をしている間にこちらは下着以外は脱いでいたので、直接肌に圧が掛かってわかりやすい。
触れた場所はしっとりとしているが、約束通りローションを仕込んではいないらしく、ぬるつき滑る感触はなかった。けれど、指の腹で優しく撫でて軽く押し込むように力を加えて揺すってやれば、慣れた体は指先を飲み込もうとする動きを見せる。まるで指先に吸い付かれるみたいだった。
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