兄は疲れ切っている36

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 なんとなく戻りづらく、風呂の湯がたまるのをその場で待ってしまってから部屋へ戻れば、兄はベッドの上には居なかった。すぐにベッド脇に降りてベッドに背を預けて座り込んでいるのに気づいて焦る。
 どうしたのと声を掛けながら近寄れば、声に反応してゆるっと頭を上げた兄が、こちらを向いてへらっと笑った。力のない笑みは疲れがにじみ出ている。
「体起こしとけって、お前が言ったんだろ」
「ああ、それで」
「でさぁ……」
 へらへらっと笑い続けながらも、じわっと頬を染めていくから何事かと思ったら、漏れ出た精液がやばいって話だったので、こちらの顔も釣られたように熱くなる。
「やばいって、何がどうやばいんだよ」
「シーツ汚した。あと、部屋着も」
「あー……まぁそれくらいは仕方ないんじゃねぇの。てか汚した部屋着ってつまりそれ?」
 座る兄の尻の下に敷かれている布に見覚えがある。
「そう。さすがに、カーペット汚すのはって思って。あと直に座るのもやだった」
「んじゃ、風呂出たら俺の分の部屋着使っていいよ。で、その感じだと立って歩くのも辛いよな」
 抱いてっていいかと言えば、さすがに驚いた様子で目を見張ったあと、けっこう体重あると思うけど、と返される。頭脳労働タイプの運動嫌いでも、小柄とは言えないどころか男性平均身長よりは幾分高い、並の体格の男の体がそこそこ重いのなんてわかりきっている。
「だーいじょうぶだって。俺の筋力舐めないで」
 絶対落とさないからと言いながら、兄の隣にしゃがみこんで、背と膝裏に腕を差し込んだ。兄は照れ戸惑いながらも、嫌がることなく首に腕を回してくる。
「えーこれやっぱ、恥ずかしいな」
「今更今更。ほら、立ち上がるからもっとぎゅってして」
 下に敷かれた部屋着ごと一緒にすくい上げて立ち上がれば、慌てたようにぎゅっとしがみついてくるから可愛かった。
「んじゃ風呂いこっか」
 言って歩きだして数秒、兄が悩ましげに唸るので思わず足を止める。
「どした? どっか痛い?」
 歩く振動が酷使した腰に響く、なんてこともあるかもと尋ねてみたが、すぐに平気だと返ってくる。どこも痛くはないと言い募る声音が、何かを隠している気がして、本当かとしつこく聞いてしまった。
「結構むちゃした自覚あるから、どっか痛いなら正直に言ってよ。もっと静かに歩いた方がいい?」
「あ、じゃあ、もっと静かに」
「あ、ほら、やっぱどっか痛いんだ」
「違っ」
「違くないだろ。腰? それとも穴の方?」
「違うんだって。てかもういいから、さっさと風呂場連れてってよ」
「静かに歩くのは?」
 どっちでもいいよもう、と若干キレ気味に急かされて、それ以上の追求は出来ないまま、極力静かな歩調で風呂場へ急いだ。
「あ、待って。ここでいいよ。下ろして」
 そのまま浴室に連れ込もうとしたところ、脱衣所で待ったが掛かる。なんで、と思いながらも、洗面台の椅子に座らせる形で下ろしてやれば、よろりと立ち上がった兄がまた嫌そうに小さく呻いた。
「大丈夫!?」
「平気だって。てか、いいって言うまで、お前はここで待機な」
「え、なんで?」
「なんで、って、そんなの……」
「ただ立ってるだけでもそんな頼りなさげなくせに、一人で風呂場になんて行かせられるわけないだろ」
 一緒に入るという主張に、兄は必死で嫌だと抗ってくる。意味がわからない。と思ったら、とうとう兄が焦れた様子で、中に出されたもの洗うんだから一緒に入れるわけがないだろうと言う。
 ああなるほど。とは思ったものの、わかってないな、とも同時に思う。
「うん、だから、俺が洗ってあげるつもりなんだけど」
 絶対イヤだ、とすぐさまキツく拒否されたけれど、こちらだって引く気なんてなかった。

続きました→

 
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