知り合いと恋人なパラレルワールド10

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 あの日の朝、ちゃんと違和感を感じながらも寝起きでつい口を滑らせたことを、心底悔やむが後の祭りだ。
 そう言えばあの時も、先輩は下手だっただろうとかなんとか言っていた事を思い出す。久々で辛かったってどういう事だと思いながら、確かめるように問いかける。
「先輩も、向こうの俺のこと、抱いたんですよね?」
「ああ」
「俺だって向こうの俺ほど上手くないですから、きっと先輩のこと楽しませてあげられませんよ?」
「残念ながら、向こうのお前のテクどうこうがわかるような生活はしてなかったな」
「え? でも、向こうの俺のこと、抱いたって……」
 今まさにそれを肯定したばかりじゃないかという思いに応えるように、先輩は自嘲混じりに苦笑して、一度だけだと言った。
「こっち飛んでた俺との連絡が一切取れなくなったって泣かれて、つい慰めた」
 あっ、と何かが繋がった。
「じゃあ久々って向こうの俺が抱かれるのがって意味で……?」
「それ、覚えてたのか」
「向こうの俺、よく先輩前にして我慢してましたね。来てた先輩、抱いてくれってかなり迫られたって言ってましたけど、そういうのなかったんですか?」
 向こうの自分はかなり積極的らしいし、人生初の恋人が男なんて勘弁してくれだとか、男に抱かれた経験なんて一切ないと言って、こちらへ来た先輩を最初拒絶した自分とは違って、元々男が恋愛対象なら据え膳みたいな事にはならなかったのだろうか?
「本気で誘われたのはこっち戻る前夜くらいだな。ここでは恋人だって話を聞いた最初の夜、代わりにはなれないぞって言ってあったし、向こうもまぁそれは分かってたよ。いくら似てても別人だろ」
「あー……」
「なんだよ」
 先輩らしいと思ってしまったがそれは言わなかった。話を戻すように、そういやと切り出す。
「あの時、やっぱり下手だったとかも言ってましたよね?」
「ああ、言ったな」
「向こうの俺、きもちくなれなかったんですか?」
「さあどうだろな」
 どことなく言い渋る様子に、聞かれたくない話だったのだろうかと思う。
 自分の中では、なんとなく向こうの世界の自分も結局は自分自身という気持ちが強いが、先輩は常に似てても別人というスタンスなのだから、考えてみれば他人のセックス事情を問うたのと同じかもしれない。
 友人に、お前彼女ちゃんとイかせてやったの? と聞くようなものだろうか。そんな真似はしたことがないし、先輩だってそういう話を友人とするタイプではなさそうだ。
 向こうの世界とこちらの世界を同一視してると痛い目見るぞと言われたばかりで、一体何をやっているんだか。
「そんなに気になるなら、今からお前が自分の体で試したらどうだ?」
「ふぇっ?」
 謝るべきかと口を開きかけた所で、ニヤリとした笑みと共にそんな言葉を投げかけられて、妙な音が口から漏れた。
「俺と、付き合うんだろう?」
 一度立ち上がった先輩は、脇のベッドに腰かけ直す。
「ごちゃごちゃ言うよりお互い試したほうが早い」
 確かにその通りだし、きっとこれはチャンスだ。なのに動けずにいたら、先輩がかすかに笑ったようだった。
 もしかして揶揄われたのかとも思ったが、冗談には聞こえない誘いだった気がして、考えるほどに混乱してくる。
「おいで」
 短い言葉は思いのほか柔らかな声で響いた。その声に促されて体の強張りが解けていく。
 期待するなと言いながらそんな風に優しく呼ぶのはずるいなと思いながら、それでも短い距離を移動して、自分も先輩の隣に腰掛けた。

続きました→

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH

 
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