あからさまに呆気に取られた顔をされて心底恥ずかしい。服を脱がされきってもいないのに、アチコチにキスされて撫でられてあっさり感じて、固くしたペニスを布地越しに撫でられ揉まれて擦られただけで簡単にイッてしまった。
向こうの先輩に触れられた時はここまで呆気なく果てたりしなかったのにと思うと、下手だなんてのは謙遜で、もしかしてこっちの先輩の方が上手かったりするんじゃないかと疑ってしまう。
「先輩、ヘタとか嘘ばっかじゃないすか」
「加減が利かなくてイかせちまうのは下手だからだろ」
言われてみれば、なるほどそれも一理あるかもしれない。
「あー……」
「なんだその微妙な『あー…』って」
「言われてみれば納得? みたいな」
「そりゃ良かった。てか悪かったな。もっと早く脱がせるべきだった」
手際が悪いせいで汚したなと謝られてしまったから、布越しに触られるのも焦れったくてたまらなかったからいいですと返しておいた。
「お前のそういうとこには救われるよ」
苦笑ではあったけれど、柔らかで優しい目をしているから、どことなく嬉しくなる。
「ほら、脱がすぞ」
促されて脱がされるのに協力しつつ、ぎこちなくても、これはこれでなんだか悪くないなと思った。
それはきっと、向こうの自分の影を見ないで済むからだろう。向こうの自分の代わりではなく、自分自身に触れて貰っているという実感。
「なんか、先輩が下手で良かった……かも?」
「なんだそりゃ」
「慣れてないみたいな感じが嬉しいかなって。それに俺、先輩が下手とか関係なく、きっとめちゃくちゃ気持ち良かったって感想になりそう」
「それはありそうだと俺も思うが、お前はちょっと俺に対して好意的過ぎだろ」
「だって好きですもん。あ、もちろんこっちの、今俺の前の前にいて、俺に触れてくれてる方の先輩を、ですよ?」
「わかってる」
「それだけですか?」
こちらの言いたいことは当然伝わっているようで、先輩はしばし逡巡した後、ようやく待ち望む言葉をくれた。
「あー、もうっ。俺だってお前が好きだよ。じゃなきゃ、いくら元々男が恋愛対象だからって、出来る限り優しく、出来るだけ気持よくしてやろう、なんて考えながらお前のこと抱こうとしねぇよ」
「えっ、ちょっ、今なんか、」
「ああ、うん。ちょっと余計なこと言いすぎた。お互い少し黙ろうか」
少し赤くなった先輩の顔が、グッと近づいて唇を塞がれた。
照れる先輩なんて珍しすぎる。もっとじっくりその顔を見てみたかったけれど、そんな事を言えるはずもないので、大人しく腔内へ侵入してきた舌へ応える事に集中する。
その後も向こうの先輩とは全然違う触れ方に目一杯感じさせられて、きっちり3回イかされた後、先輩のを扱いてイかせて終わった。
本当は先輩のを入れて欲しかったけれど、お願いだからとねだっても、かなりキツイし傷つけそうで自信がないからと言って先輩が頷くことはなかった。
「どうすれば先輩の入れて貰えるようになります?」
放心するほどぐったりして寝落ちという程には疲れなかったので、余韻に浸るようにして先輩にひっつきながら尋ねたら、頻繁に弄ってゆっくり拡げてくしかないだろと返される。
「自分で弄るの、アナニーとか言うんでしたっけ?」
「ああ」
「それの方法、検索してみます」
「まぁ、お前が自分で拡げるのも一つの手ではあるだろうけど、別に急ぐ必要もないだろ」
「早くちゃんと抱かれたいんですよ、先輩に」
「向こうの俺にも、本当には抱かれてないからか?」
「どういう意味ですか?」
「向こうの俺にも突っ込まれたりしてないだろ、お前」
疑問符のない断定だった。
「あれは経験あるって反応じゃない。せいぜい指で弄られた程度じゃないのか?」
「そ、ですよ」
言い当てられて仕方なく肯定する。
「せっかく向こうの俺がお前の処女残してくれたんだから、自分で弄って拡げたりするなよ。勿体無いから」
「は?」
「お前の体が俺に慣れていくのを、じっくり堪能させろって話。その間に俺の方も色々と上達するだろうしな」
責任持って拡げてやるから一人で急ぐなよと釘をさす先輩の顔は、本気が滲む真面目なものだった。
「それじゃ不満か?」
どう反応していいのか困っていたが、もちろん不満があるわけではない。慌てて首を横に振ったら、満足そうに笑ってくれたので、なんだか色々どうでもよくなった。
急いで体を繋がなくても、先輩はもう、ちゃんと自分の恋人なのだ。
< 終 >
お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH
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連載お疲れ様です。
先輩が優しくてグッときました。
恋人になれてよかった。
今回も楽しみに読ませて頂きました。
ありがとうございます。
さっそくのコメントありがとうございます!!
楽しんでもらえて嬉しいです(*^_^*)
当初の予定にはまったくなかったのですが、先輩と無事恋人になれて本当に良かったです。
それと、一度承認した方は承認無しでコメント表示される設定のはずなんですが、なんだか上手く機能してないみたいですみません。なんでだ……
面白かったです!(^O^)/
うまくいってよかったよかった。
これで安心して寝られます。
こっちの先輩がゲイであっちの先輩がノンケ設定も本当に面白かったです。すごく良いアイデア!
睡魔さん、こちらにもコメントありがとうございます〜
面白く読んでもらえて良かったです(^^♪
先輩は別世界の自分と自分自身を混同したりしないから、こっちの先輩がゲイじゃないと、戻った後にあれは別の人ってことで恋人になってはくれないだろうなーと思ってしまって、だったら性癖がこっちと向こうで基本逆にすれば良いんじゃん! みたいな感じで作った設定でしたが、良いアイデアと言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます!