先程、家族と縁が切れる可能性を口にはしたが、義兄は認めてくれるかもしれない。という気持ちは確かにあった。
応援されたとまでは思わないけれど、あの口ぶりから言ったら、話し合った結果が恋人になる事だったと報告しても、それを頭から否定される事はないのではないか、くらいのことは思っている。
「にーちゃん?」
不安げな声に呼ばれて、また色々と考え込んでいたことに気づいた。苦笑しながら、思考の中身を口に出す。
「義兄さんとの会話、思い出してた。義兄さんや姉さんもお前の気持ち知ってて応援してるって可能性は?」
「言ったことないし、聞かれたこともないけど、ばーちゃんが言ってる可能性はあるかも。でも応援されてると思った事はないかなぁ」
母から姉に話が流れている可能性はかなりあると自分も思った。しかしそれをどこまで真剣に考えているのかも、受け入れる気があるのかどうかも、まったくわからない。母の話だって、男の孫が息子の嫁になりたいという話を応援しているなんて、やはりにわかには信じられなかった。
「俺は今の両親とも姉さん義兄さんともほとんど付き合いがないから、実際どういう反応をされるかはまったく予想が付かない。でも世間一般では叔父と甥が恋仲になる事を歓迎する親族ってのはかなり稀な部類だと思うし、お前の話を信じて報告した結果、縁を切られる可能性もやっぱり考えずにいられない」
「内緒にしておこうって話?」
「違うよ。自分から知らせるかどうかは別問題で、知られた時にもし否定されても、俺と恋人でいる事を選ぶかって話」
知りたいのは彼の覚悟だ。
「そこまでの覚悟があるってなら、俺も腹くくってお前と一緒にいられる道探すから」
「にーちゃんは俺のために最悪家族捨てる覚悟が出来てるって事?」
「俺は元々かなり疎遠になってるし、一応ちゃんと仕事もあるからな。いつか勘当される日が来るかもって想定は、してなくもなかったし。けど、大学進学したい高校生の甥っ子に、最悪家族を捨てさせる、もしくは家族に捨てられる身にさせる覚悟、なんてもんは一切出来てない。出来るわけがない」
大学進学とともに随分と疎遠にしてきたが、学費も生活費の大半も親がかりだったし、何かと親の署名や捺印が必要だった。叔父である自分が代われる部分も多少はあるかもしれないが、やはり経済的な部分は大きく不安がある。
「お前が、そういう可能性を一切考えてなかったことも、嫁になりたい発言済みってのも、俺にはまったくの想定外で、もしお前が言うように本気で応援してくれてるってなら、こんな懸念は必要ないんだろうけどな」
お前の言葉を信じきれなくてゴメンと言ったら、俺も自信を持って大丈夫って言えるわけじゃないからと、苦笑しつつ首を横に振られた。その苦笑がまた泣き顔に変わってしまうかもと思うと気が重い。それでも提案せずにはいられない。
「お前がまだそこまで考えられないってなら、今はまだ、恋人って関係に進むのは待ったほうが良いと思ってる。せめて、お前が大学卒業して、自分の手で食えるようになるまでは」
相手の言葉を信じてやれないのに、信じてくれとしか言えないのが辛いが、待っている間にお前への気持ちが変わることはないからと告げれば、甥っ子は真剣な顔になって考えさせてと言った。
「最悪家族捨てるかもなんてのは俺もちょっと想定外だったから、答え出すまで待ってくれる?」
「ああ、もちろん。じっくり考えていい。進学先についても、俺を選ぶってなら、もし万が一親に切られたらって場合含めて考えろよ。さすがに俺にも、お前の学費分まで背負い込んでやれるほどの稼ぎはないから」
「えっ? てかさ、にーちゃん的にはもし俺が覚悟決めてにーちゃん選んじゃった場合、どんだけ最悪な未来を想定してんの?」
「最悪の未来というか、親から縁切られたらお前の学費と生活費と全部俺に被さってくる、という事は考えてるよ。いやまぁ、もちろんその場合は奨学金借りて貰うけど」
「そんなの当然だけど、っていうか……」
「何?」
「にーちゃんも大概俺に甘くない? 最悪学費と生活費ひっかぶる覚悟って、何それ?」
「俺を選んだせいで、本来なら親から受けられるはずの物が受け取れなくなるなら、それは俺がなんとかしないとならないだろ」
「にーちゃんってさ……」
笑いたいのか泣きたいのか微妙な顔になった甥っ子は、体ごとこちらを向いたかと思うとそのまま胸の中に身を寄せてくる。
「俺、なんでにーちゃんが臆病なのか、ちょっとわかった気がする。考え過ぎだし自分一人で色々背負い過ぎだよ」
「あー……それ、さっき義兄さんにも指摘されたかも。そんなつもりはあんまりないんだけどな」
「無自覚だから厄介なんだろ。俺は、にーちゃんが俺を選んでくれるだけで、もう充分なのに」
「甥と恋仲になるってのは、そんな簡単な話じゃないよ」
「うん。ゴメン。俺もちゃんと考えるから。俺を好きって言ってくれて、にーちゃんの覚悟も教えてくれて、本当、ありがと」
身を寄せられた時に思わず抱きしめてしまった肩が小さく震えて、やはりまた泣かせてしまったと思いながら、宥めるようにその背をそっと撫で続けた。
あなたは『「今更嫌いになれないこと知ってるくせに」って泣き崩れる』誰かを幸せにしてあげてください。
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