結婚した姉の代わりに義兄の弟が構ってくれる話2(終)

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 勝手に家に上がられて、無断で写真を撮られて、こちらの弱みを突かれて、いったいどこに感謝すればいいのか。
「余計なお世話だ。つか合鍵とか聞いてない!」
「余計なお世話されたくなかったら、せめてあの人との電話の時くらい、何事もなくやれてる演技し通しな。お前の強がりなんかバレバレっぽいぞ」
「そんなこと言ったって……」
 大丈夫だって演技なら今だってしてる。
「まぁ長年一緒に暮らしてた親みたいな相手を、高校生のガキンチョが欺くのは難しいよな」
「ガキじゃない」
「とか言っちゃうところが十分ガキなの。寂しいって素直に言えたら、あの人の代わりにはなれないまでも、俺がお前を構ってやってもいいけど?」
「絶対お断りだ。というか合鍵置いて今すぐ出ていけ」
「嫌でーす。お前に拒否権なんかあるわけないだろ。さっきの写真、お姉さんに送られたくないよな?」
 ニヤリと笑って告げられたそれは、明らかに脅迫だった。
「女装して泣き暮らしてるなんて知ったら、あの人きっと、お前が心配で飛んで帰ってくるぞ?」
 追い打ちをかけられて胸の中に絶望が広がっていく。
「どーすればいいの」
「なんだって?」
 ぼそりと吐き出した言葉は相手に届かなかったらしい。
「どうすれば、姉さんに言わないでくれるの」
「寂しいから構ってって、お前が素直に言えたら」
 素性ははっきりしている上に姉から合鍵を渡されているような男でも、自分からすればぽっと出の、はっきり言えば得体の知れないこんな男の言いなりになるのは心底嫌だったけれど、背に腹はかえられない。
「寂しいから、かま……って」
「うん、いいよ。じゃ、取り敢えず一緒に飯でも食おうか」
 嫌々口に出したのなんて丸わかりだろうにそこは一切スルーで、一転機嫌よく頷いた目の前の男は、キッチン借りるぞと言い残してさっさと部屋を出ていってしまった。
 慌てて追いかければ、キッチンテーブルの上には食材が詰まっているらしきスーパーの袋が置かれていて、男はそこを覗き込んで何やらあれこれ取り出している。
「何してんの……?」
「何って、一緒に飯食おうって言ったろ」
「あんたが作るの?」
「お前が作ってくれるならそれでもいいけど。いややっぱ、一緒に作ろうか」
「なんで!?」
「構ってあげるって言ってるの。今はカップ麺やらコンビニ飯やらばっか食ってるみたいだけど、料理は出来るって聞いてるぞ」
「だって自分のためだけに作るご飯、楽しくないし美味しくない」
「だから俺が来たんでしょーが」
 ふわっと柔らかに笑われた気がして、一瞬どきりとした。驚いて何度か瞬いた先に見えたのは、呆れた苦笑顔だったから見間違いだったのかもしれない。
 ほらやるぞと急かされて、渋々並んでキッチンに立ち、言われるまま料理を手伝った。
 作り慣れているのかやたらと手際が良い上に、指示慣れもしているのか、何をすればいいのかわかりやすい。更に、完全自己流で覚えたこちらの手際を褒めながらも、より効率の良いやり方やらも教えてくれたから、思いの外その時間を楽しんでしまった。
 しかもいざ出来上がったものは、ビックリするほど美味しい。
「なにこれ、メチャクチャ美味い」
「そりゃ一応プロだもん」
「は? あんた料理人なの?」
「そうなの。というかお前、本当に俺に興味欠片もないよね。近所ってほど近くはないけど、隣市に義弟が住んでるって聞いてなかった?」
 そう言われて、そういえば聞いていたなと思い出す。でも職業までは聞いてない。
「そういや姉さんが出ていく前、何かあった時には義兄さんの弟が近くにいるからそこ頼れって、住所と電話のメモ貰った気はする」
「で、そのメモは?」
「結婚式の後にグシャグシャに丸めて捨てた」
「なんでっ!?」
「泣き虫のシスコンって笑った男に頼る気なんかなかったから」
 目の前に座る男をギッと睨みつけたけれど、相手はそんな視線にびくともしない。それどころか、おかしそうに笑っている。
「何がオカシイんだよっ」
「その頼りたくなかった男に弱み握られて、今後は構い倒されるのとか可哀想だなって思って?」
 まったく可哀想だなんて思ってないのはバレバレだ。むしろ楽しくて仕方がないくらいのことを思ってそうだ。
「可哀想とか嘘ばっかり」
「そりゃあ幸せにしてあげる予定だからね」
 ギョッとしてどういう意味だと聞けば、寂しくて泣くのは今日で終わりだよと、さっき一瞬だけ見た柔らかな笑顔を向けられ、やはりどきりと心臓が跳ねた。

あなたは『この人の幸せが自分にとって一番大切なのに、どうして喜んであげられないんだろう、どうして涙が出てしまうんだろう、と自己嫌悪に陥る』誰かを幸せにしてあげてください。
shindanmaker.com/474708

 
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コメント

  • 皆さん、こんな人が好きなのでしょうね?フー(´・ω・`)

    by きよ 2016年12月30日 8:41 PM

  • きよさん、コメントありがとうございます。
    書いたキャラを読んだ方に好きだと思って貰えてたら嬉しいなとは思いますが、今回の二人がどう思われたかは、実際どうなんでしょうね?
    しょんぼり顔文字的に、きよさんにはイマイチだったのかなと思いますが、懲りずにまた他の作品も読みに来て貰えると嬉しいです。

    by レイ 2016年12月31日 10:07 AM

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