「でもセックスなんて、別にしなきゃしないでいい、んですよね? それを俺がしてって言うから、してくれるだけで。俺と恋人続けるために必要だから、頑張ってくれてるだけで」
「そうだね。だからこそ、君には楽しんで欲しいし、出来る限り気持ちよくしてあげたいと思うし、君が楽しんでくれたらホッとするんだよ」
「いやだから、そうだね、と、だからこそ、の間がわからないというか、なんでそうなる? ってなるんですけど。そこまでする価値、俺にあります?」
何が何でも別れると言い張ったら、残念だと思いながらも別れを受け入れる、みたいな事も言っていたくせに。
「ああ、ちょっとわかってきたかも」
「え、何がです?」
「君にとってはあまりに当たり前過ぎて、俺のためにと何か特別頑張ってくれてた訳じゃないから、君が人生を楽しむ隣でそれを眺めさせて貰うことに対して、俺が君に差し出しているものが多すぎると思ってる。そういやデートを割り勘にしたがってもいたし、今までのデートで俺が支払いをかなり多めに持っていたことも、この部屋も、俺が君に奉仕的なセックスをする気でいることも、そこまでする必要性がわからない。どう? あってる?」
「そういう気持ちは、確かに、ありますけど……」
肯定すれば、やっぱりねって感じになんだか嬉しそうにされたけれど、なんでそれが嬉しいのかはさっぱりわからなかった。
「ちなみに俺は、君に想って貰うだけの価値が自分にないと思ってる」
「えっ?」
「だって本当に、仕事から離れて個人で付き合ったら、つまらない男でしか無いだろ? 君の思いつきと好奇心と好意とに甘えて、君にデートプランをたてさせて、しかも、君が楽しんでるとこを見せろと言う割に、自分から君を楽しませてあげようともしない、割と最低な部類の男だと思うんだけど」
まぁ確かにその通りではある。というか自覚はしっかりあったらしい。ただ自分にとっての問題はそこじゃなかったけれど。
デートだとか恋人だとかって単語の意味に、勝手に振り回されていた自覚はある。自身の想像するそれらと全く当て嵌まらない関係が虚しいのは、彼とのもっと親しい触れ合いを、もっと言うならセックスを、期待する気持ちがあるからだと気づいたせいだ。
気づいてしまったらさすがに、その気持ちを隠して今まで通りの何もないお出かけを純粋に楽しむなんて無理だと思った。こちらがデートを楽しまなくなったら、彼から別れを切り出してくるだろうと思った。
だからこそのラブホで、最後に一回抱いてもらえたらラッキーくらいの気持ちで……
そう思ったところで、彼が最低な部類の男だという理由に、もう一つ思い当たってしまった。
「しかも俺が別れる気だってわかってから、ちょっと本気出すから考え直して、ですしね」
今まで手ぇ抜いてましたを思いっきり言っちゃう辺り、本当に酷い男だと思う。でも最初っから恋人には不向きだと自己申告されていたのだから、本当はそこまで酷い男ではないってこともわかっていた。本人からの色々な忠告を全部無視して、デートだ恋人だと浮かれて近づいてしまった自分が悪い。
「ああ、うん、まぁそれも確かに酷いね」
「あ、いや、今のはただの言いがかりで」
「そう? ただそれに関しては、俺と付き合うのに飽きたとか疲れたとかって理由じゃなかったからであって、つまんないからもう止めますだったなら引き止めたりしなかったよ、ってのはわかってて欲しいかな、とは思うかな」
「俺が、あなたを好きだって、知ったからですよね。お詫びって言ってましたし。あ、お詫びだからか。お詫びだから頑張ってくれてるのも、あるんですよね。そういえば」
「お詫びも兼ねてはいるけど、お詫びだから楽しんで貰えると安心する、はやっぱちょっと違うかなぁ」
難しいとぼやけば、そうだね難しいねと相手にも苦笑しながら同意された。
「でも、この辺りのことはっきりさせとかないと、君、俺とのセックス楽しんでくれそうにないからなぁ」
「そういう余計なこと考えられないくらい、ぐちゃぐちゃに感じさせられる激しいセックス、とかでもいいんですけど……」
ちょっと投げやりな気持ちでそんなことを言ってしまえば、それは最終手段でと返ってきたから、可能性がなくはないんだと知ってドキドキが加速していく。
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