生きる喜びおすそ分け21

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 もちろんその言葉そのものを疑う気持ちはないのだけれど、伝わって居ないとわかっているなら、もっと言葉なり態度なりで示してくれればいいのにと思ってしまう気持ちを止められそうにない。だってこのタイミングで言えるなら、お尻を弄りながらだって言えただろって思ってしまう。指を突っ込んだ状態では教えられなかった、なんて理由があるようには思えない。
「後まぁ、お願いされたら、張り切ってうんと気持ちよくイカせてあげたかった、ってのもあるかなぁ。まぁ、かなり焦らしまくっちゃったから、お願いされなくてもこの後、体感して貰う事になるはずだけどさ」
 最初の二回とは比べ物にならないくらい気持ちよくイカせてあげられると思うよ、なんて言われれば、期待する気持ちはもちろん湧いてしまうのだけれど、さすがに楽しみだと笑える余裕はなかった。
 イカせてって言わせたかっただとか、可愛いと思ってるだとか言われたことを、どうにも引きずっている。
「もっと言ってくださいよ、そういうの」
 とうとう声に出してしまった。彼にとってはこれもまた、過去の恋人たちと繰り返した会話なんだろうか。
「そういうの、って?」
「今教えてくれたこと、全部です。もしくは、指突っ込みながらじゃ言えない理由でも、あるんですか?」
 もし言えない理由があるなら教えて欲しい。知っておきたい。
「あー、お尻弄りながら、可愛いね、とか、イカせてって言ってよ、とか、イカせてって言ってくれたら張り切ってうんと気持ちよくイカせてあげるよ、って言って欲しかったって話?」
「そ、です。だって俺のお尻弄りながらだって言えますよね。全然冷静そうだったし、おしゃべり出来るでしょ。俺が気持ち善すぎて頭バカになってたって、繰り返してくれたらちゃんと届きます。そしたら俺だって、イカせてってお願いするくらい、わけないのに。可愛いなんて言われたら益々恥ずかしいけど、それでも絶対、嬉しいって気持ちが勝ちますよ」
「ああ、うん、そうか。そうだね。ただ、一つ訂正させて欲しいのは、ちっとも冷静じゃないし、こっちも余裕なんて全然ないよ」
「え、嘘ですよね?」
「嘘じゃないって。男の子の体に触るの初めてだって言ってるだろ。君が気持ちよさそうにする場所とか触り方とか探るのに必死だよ」
「全然必死に見えないし、初めてって割にめちゃくちゃ気持ちいいし、むしろ慣れてそうに思えるんですけど。というか、男は初めてでも女性とのアナルセックスは経験ある、とかじゃないんですか?」
 実はあると言われたって、納得するだけで驚きはしないだろう。けれどそれを言われた相手の方が、盛大に驚いてみせる。
「ないよ!?」
「でも上手すぎません?」
「だからそれ、必死に君を気持ちよくしようと頑張ってる結果でしょ。知識面の予習をかなりしてきたのと、元々器用な方、ってのはあるだろうけど」
 器用貧乏って言葉を知ってるかと言われて、知っていると頷けば、その言葉がめちゃくちゃ身に沁みている人生だよと自嘲されてしまった。
「いやでも、俺も、器用貧乏って言われたり、自分自身そうかもって思ってたり、するんですけど……」
 生きがいを感じられないなんて言っている相手と、人生楽しみまくっている自分とでは、全然タイプが違うように思うのだけれど。でも相手はあっさりそうだねと頷いているから、相手からも自分は器用貧乏に見えるらしい。

続きました→

 
 
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