お腹の中で、相手のペニスがどくどくと脈打っている。多分間違いなく、射精している。
良かったと思ったらやっぱりふへっと笑うみたいな息が漏れて、応じるみたいにふふっと笑い返される。先程安心すると言われたせいもあるだろうけれど、柔らかに笑われて、素直に、安心したんだな、と思ってしまった。
「よか、った」
今度は口に出して、またふへへと笑ってしまえば、相手はどうやら苦笑している。
「君、本当に面白いよね」
「おもしろい?」
「うん。あと、不思議な子だなぁとも思ってる」
どういう意味だと聞きたかったけれど、それより先に抜くよと宣言されて、お尻からぬるんと相手のペニスが抜けていった。抱え上げられていた腰も下ろされて、相手の体が離れていく。
そのまま後始末を始める相手に倣って身を起こし、こちらの汚れを拭いてくれようとする手を断って、差し出されたティッシュケースから数枚引き抜き腹に散った自身の精液や股の間のローションとを拭った。
腰を高く持ち上げられていたので、胸の辺りまで濡れてしまっていたのが恥ずかしい。その水分の多くが、イキたいのにイキたくないという状況に、大量に垂れ流した先走りだとわかっていたからだ。
自身の体をざっと拭き終えて、改めて確認したベッドの上は、思ったほど汚れてはいない。どうやら犠牲になったのはこちらが風呂上がりに羽織ったバスローブと、腰の下に差し込まれていた枕に巻いていたバスタオルくらいらしい。
「なんかほんと、器用、ですね。器用ってか、準備がいい?」
だって腰の下に枕入れようって言われてから、バスタオルを巻いたわけじゃない。まったく気付いてなかったし、もっと言うなら、彼がバスタオルを剥がしているのを見てようやくその事実に気付いたくらい全く意識されていなかった。つまりは、最初から枕を使うことも、それで汚してしまうことも想定し、こちらが部屋に戻る前に、枕にバスタオルを巻いていたってことだ。
「えっ?」
「だってベッド、綺麗なままだから」
「ああ、うん、まぁ、やっぱりある程度は気を遣わないと」
「ラブホじゃないから?」
「それも多少はあるけど、元々派手に汚すのが楽しい的な嗜好がないよね。もしかしてそれが不満だったりする?」
終わった後にシーツごとドロドロになってるほうが、激しくセックスした感じがして好きかと聞かれて、慌てて違うと首を振った。
「そういうとこまで気を配りながらすると、ああなるのか、って思っただけというか」
「ああなる、って?」
「一緒に楽しんでくれてないみたいに感じる、っていう」
「あー……」
「あ、でも、それは誤解っぽいってのはもうわかってるんで大丈夫です」
「それはまさか、俺も一緒に楽しんだよ、ってのが君が満足するくらい伝わったってこと?」
「まさかって」
なんでそんなに驚かれるんだと笑いながら、楽しかったですかと聞いてみる。もちろん、楽しくなかったなんて絶対言われないのをわかっている上での質問だ。
「実際どうなんです? 俺とのセックス、あなたも楽しめました?」
「そりゃ、楽しい気持ちも嬉しい気持ちも、もちろんあったよ。ただ、さっきも言ったけど、俺がちょっと楽しいなとか嬉しいなとか思ったところで、それらは君の満足行くレベルの感情ではないだろう、って思うだけで」
「確かにわかりにくいな、とは思うんですけど、でも、ちょっとってほど少なくもなさそうかな、って思いましたけど。まぁ、本当にちょっとだとしたら、俺の満足レベルがあなたが思うよりずっと低いって事じゃないですかね」
「なるほど。その発想はなかった。というかそれ本気で言ってる? よね?」
「本気ですけど」
「本当に満足行くレベルだった?」
疑り深いと笑ってしまえば、信じられなくてと返される。
「じゃあ正直に言います。一緒に楽しんでくれてる、ってのが満足レベルで感じられたか、といえば、そこまでではないんですけど」
「ほらやっぱり」
「まぁ最後まで聞いてくださいよ。俺に満足したって言われるセックスをしようと張り切ってるってのは、ちゃんと伝わりましたから。本当にちゃんと頑張ってくれてる、ってわかるのは、凄く嬉しかった。あと、実を言うと、あなたが俺とのセックスを一緒に楽しんでるとか、俺を好きでたまらないから手放したくなくて頑張ってるとか、そういうの、あんまり伝わってこないのが、逆に、良かったって安心しちゃった部分もあって」
「えっ!?」
逆に良かったなんて言われるとは思ってなかっただろう。ほぼ予想通りではあるけれど、随分と盛大に驚かれてしまった。
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