生きる喜びおすそ分け29

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 暗い中で目が冷める。一瞬慌ててしまったが、すぐに旅行中だったと思い出す。更に言うなら、やっちまった、という気持ちでいっぱいだ。
 夕飯は部屋から少し離れた個別の食事処で頂いたが、おいしい食事と一緒にお酒も結構飲んでしまって、部屋に戻った後でちょっと休憩のつもりがそのままガッツリ寝落ちたらしい。すぐそこにベッドがあるからと、ベッドに寝転がったのが間違いだった。
 夕飯の後で、もう一度抱いて貰う予定だったのに。こんなことなら、一度目のセックスを終えた後、少し眠っておいたらという勧めに従って昼寝をしておけば良かった。もしくは、昼寝よりも優先して一緒に入った露天風呂で、もっと真剣に誘えばよかった。
 気持ちのいいセックスを終えたばかりの二人が、裸で湯に浸かってただただ景色を眺める、なんて状態になるはずがなく、いたずらするみたいに互いの体に触れ合った。もちろん、積極的に手を伸ばしたのはこちらだけれど。
 三度も出してゆるくしか勃起しなかったこちらと違って、一度しか射精していない相手は結構しっかり勃たせていたけれど、そのままの勢いで再度突っ込んではくれなかったし、手や口でイかせるのも拒まれた。いくらセックス直後で緩んでいたって、ローションもゴムも用意していた訳じゃないから、その場で突っ込んでくれなかったのは仕方がない。でも、フェラはもっと真剣に、続けたいって言えば良かった。口に出してって、もっと本気で頼み込めば良かった。
 若くないから夜まで温存させてよと言われて、夕飯の後でもう一度抱いてくれると約束してくれたから、手を引いてしまった。だって、お付き合いを続ける結論が出た後だけど、夜ももう一度頑張ってくれるって言われたら、期待しないわけにいかない。
 じゃあ夜は抱き潰されたいなぁなんてことを冗談交じりに言えば、そうやってハードルを上げまくるの止めない? なんて返しながらも、無理だともダメだとも言わないのだから、本気でしてって言ったらきっとチャレンジしてくれるし、多分、叶えてもくれるんだろう。
 どちらかというと、本気でそれを望めるのか、って問題な気がする。だって強引にイカされまくるのは結構怖い。でも、お尻だけでイカされてしまったあの強烈な快感も忘れられない。だから怖いけど、彼に手管の限りを尽くされ抱き潰されてみたいと思う気持ちは、間違いなくあった。
 なのに、気づけば夜明けが近そうだ。
 起こしてくれれば良かったのに。とはいえ、寝落ちる気はなくベッドの上にダイブしたはずが、気づけば掛布の中で寝ていたのだから、絶対に声は掛けられてるし、なんなら体だって動かされている。その時に、起こそうという努力くらいは、きっとしてくれたに違いない。
 寝てる体に突っ込んでくれたって良かったのに。疲れ切って深く寝入ってしまっていた自分が悪いのは重々承知していながらも、そう思う気持ちが止められない。
 はぁあと大きく息を吐いて起き上がった。嘆いたって過ぎてしまった時間は戻らないのだし、時間はまだある。朝食は七時半だったはずだから、三時間もあれば準備と後始末の手間を考えたって、もう一度抱いて貰うのになんら問題ないだろう。
 この時間から抱き潰して貰うのは無理だろうから諦めるしか無いけれど、じゃあもういっそ、抱かれながら夜明けを迎えるというのはどうだろうと思う。もちろん、部屋の中でではなく、明けていく空の下で。
 離れの部屋と言っても、広い庭には垣根があって、その向こうには隣の離れ用の露天風呂があるのだろうことはわかっている。そもそも隣に客が居るのかすら定かでないし、この時間に隣の客が露天風呂を利用する確率はかなり低いとも思うが、露天風呂で突っ込まれたいなんて本気で言ったらさすがに引かれるだろうか。
 まぁ本気で引かれたり嫌がられたら、その時は大人しく部屋に戻って抱いて貰えばいいか。さすがにそれを拒否したりはしないだろう。
 そこまで決めたら善は急げと、まずは自分の体の準備をしようと風呂場へ向かった。

続きました→

 
 
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