気持ちよくイキまくった代償はそれなりに大きく、ペニスを抜かれた後も布団から起き上がることが出来なかっただけでなく、甘い快感がじんわりとお腹の奥に残り続けてもいる。こちらがそんな状態だったものだから、シャワーを浴びに行くなんてのも当然無理で、汗やら何やら色々な液体でベタつく体をホットタオル拭いてくれたのは相手だった。
「……ふっ……ぁ……っ……」
甘たるい息を漏らしている自覚はあって、相手が困ったように、そのくせ酷く嬉しそうに、笑いを噛み殺している。
「だれの、せいだと」
「S字の先抜いてってねだったお前の自業自得?」
確かにそうだと思ってしまったら、口を閉じるしかなかった。相手は今度こそ、おかしそうに笑っている。
「嘘だよ。お前が俺に惚れてくれるまで、しつこく何度もお前イカせた俺のせい。今だって、お前疲れ切ってるのわかってるのに抱き足りなくて、もっともっと、お前が俺のちんぽで突かれるの気持ちぃって喘ぐの見たくて、必死で我慢してる」
「本気、で?」
「本気で」
即答されて思わず迷えば、したい気持ちは本気だけどする気はないぞと、少し慌てた様子で言い募る。
「どっちだよ」
「いやだって、お前、俺がどうしてももっかいしたいとか言ったら、いいよって言い出しそうで」
「だって、そりゃあ、そう言われたら」
「お前のそういうとこに散々つけ込んできた俺が言うのもなんだけど、お前とちゃんと対等に付き合いたいって言ったろ。良いんだよ。無理して応じようなんて考えなくて。今日は疲れたからまた今度ねって言ってくれれば」
なんでもかんでも受け入れようとしなくてもと言われて、別に無理して応じようとしてるわけじゃないんだけどなと思う。
「相手がお前ならまぁ良いかって思っちゃうだけで、無理して良いよとか言う気はないんだけど、でもまぁ、今日は疲れたからまた今度ね」
その今度はそう遠くない未来だとわかっているし、次の約束をするのも悪くない。これはこの先も続いていく関係なのだと、はっきりするようでなんだか嬉しい。
彼に向かって初めて告げる、またしようねの言葉がむず痒く、ふへへっと笑ってしまえば相手は妙な顔でグゥと呻いた。けれど、どうしたと聞いてもなんでもないと返されて、ごまかすみたいな軽いキスが一つ。
「腑に落ちない」
「いい。わかんなくていい。それより、これどうする。シーツまで濡れてる。ていうか、シーツの下もやばいかも」
これ、といって彼が汚れ防止に敷いていたバスタオルを持ち上げれば、確かにシーツにまで濡れているとわかる染みが広がっている。
「うわっ、えっ、なんで」
「なんで、て、お前が気持ちよさそうに潮吹きまくってたせいだろ」
「は? えっ? 潮噴き? って、あの?」
頭の中に大量の疑問符が巡った。
男でも潮吹きできるというのはもちろん知っているが、射精後の亀頭を刺激し続けるという方法がメジャーらしいのに、今回、ペニスはほとんど扱かれていない。ペニスの先から粘度の低い液体をぴゅっぴゅとこぼしていた自覚もなくはないのだけれど、でもそれは何度も吐き出して薄くなった精液だと思っていた。
「でもペニス弄られてなかったけど」
「前立腺への刺激でも潮吹きするってどっかで読んだから、ってっきりそれだと思ってたけど」
「えー……」
アナニーに関してはそれなりに自分も情報を漁るけれど、アナニーで目指す先と言えば、やっぱりドライオーガズムじゃないのかと思う。いつかは自分もと思っているけれど、ペニスに触れずにイクときはトコロテンしてしまうので、残念ながら未だドライを経験したことはない。
そして、アナニーで潮吹きを目指すというのはそうメジャーでも無いというか、言われればそんな記事も読んだことがあるような気がしないこともないけれど、でもペニスに触れないままで潮を吹いていたかまで記憶にない。
なんてことをわざわざ説明する必要はなかった。という事に気づいたのは、ふんふんと話を聞いていた相手が、じゃあ今度はドライ目指してみるかと笑った時だ。
「えっ?」
「まさか、セックスとオナニーは別とか言って、一人でアナニーしてドライオーガズム目指す気だった?」
「え、いや、そういうわけじゃ」
「そういや今も平日の夜とか、一人でアナニーしてたりすんの?」
「えっ?」
「週末、俺とするだけじゃ足りなそう?」
「いやいやいや。充分。じゅーぶん足りてる」
彼にアナルを弄られるようになってから先、彼の居ない平日の夜に、一人でしたことはなかった。元々、それなりに準備が必要なのもあって、仕事の後でなんて余程のことがなければしない。
「アナニーは別腹って言われるかと思ってたけど、なんだ、平日はしないんだ」
言えばあからさまにがっかりされた。どうやら今後は平日の夜にもそういうことが出来るかもと期待していたらしい。
「まぁでも、キスしたりハグしたりできりゃいいか。あ、準備の問題なら、手で抜くのもありだったりする?」
「なぁ、それ、平日の夜にも来るって言ってる?」
「え、うん。言ってる。昼仕事就いたの、お前と一緒の時間増やしたかったからだし」
あっけらかんと肯定されて、平日の夜なんて飯食って風呂入ったら寝るだけみたいな生活なのにと思う。思うだけでなく、口に出しても言ってみた。
「平日の夜なんて、飯食って風呂入ったら寝るだけなんだけど」
「一緒に飯食うだけでもいいよ。あ、いや、ハグとキスと一緒に夕飯、だな。俺の職場近いし、俺のが早く帰れるだろうから、夕飯は俺が用意するし」
食べたらすぐ帰るよと言った後、少し迷って、逆にお前がうち来て食べてくのも有りかなぁなどと言い出す。
「待て待て待て。というかそもそも、お前の家ってどこなんだよ。そんな毎日行き来できるくらい近いの?」
「ああ、言ってなかったか。イチマルニ号室だよ」
指を下に向けた相手が告げたのは、真下の部屋番号だった。
<終>
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