アナニーグッズを見られてしまった、という開き直りもあって、躊躇うことなくアナルで感じる姿を晒せば、彼との遊びはあっさり玩具を使った疑似セックスへと変わっていった。
前立腺マッサージを受ける際に玩具類を使用して貰ったこともあるが、金銭を支払ってサービスを受けている、という意識があるせいか、それを擬似セックスだなどと思ったことはないのに。過去に自分を抱いたことがある相手だからなのか、勃たない代わりと明言されているせいなのか、もしくは金銭が絡んでいないからか、相手が男だからなのか。
彼と風俗嬢以外に経験がないので、なぜそう感じるかはわからないし、彼の中でこれがどういう扱いかもはっきりしていないけれど、擬似的なものにしろ、昔はさして感じなかった彼とのセックスがたまらなくキモチイイのが、なんとも不思議な気持ちにさせる。
勃たない彼は自分の快楽を優先した自分本意な動きをしないし、ちゃんとこちらを気遣うだけの余裕があった。まぁそれは勃つ勃たないではなく、重ねた年齢によるものかもしれないけれど。
彼とのこんな遊びに慣れてしまったら、彼がここを出ていった後、自分はどうなってしまうんだろう。同居生活は五ヶ月目に突入して、彼自身が言い切った半年という期限まで、あと二ヶ月もない。
いつ出ていくとも、もう少し居させて欲しいとも、言われていないし、聞いてもいなかった。だとしても、とりあえずで始めたバイトだって半年もきっちり週五で働けば、どこかに部屋を借りて新生活を始められる程度の貯蓄は出来るはずだ。家賃として毎月四万ほど貰っているし、それなりに食費も雑費も掛かっているだろうけれど、細々増えた私物の中に高額そうな品はないし、どこかへ遊びに行ったなんて話も聞いたことがない。
このまま一緒に暮らさないか、なんて誘える広さのある部屋ではないし、そもそも、思いのほか彼との疑似セックスが良くてこの時間を手放したくない、なんて理由があまりに酷すぎる。
彼との遊びを流されるままに受け入れた自業自得とわかっていつつも、今後をあれこれ考え不安定に気持ちが揺れる。そんな中、これ使ってみたいんだけど、と彼がアナニー用品を入れた箱から持ち出してきたのは、S字結腸の開発に手を出してみようかと思って購入した、全長40センチ超えの細長いアナルビーズだった。
「こんな長いの、ほんとに入るのか試してみたい」
「いや待って。無理」
「開封済みだし、使ってんじゃないの?」
「使ったことはあるけど無理」
「箱の中身、お気に入りの逸品揃いって話は?」
「いや確かに言ったけど。それは別」
「なんで?」
「それはこれから、お気に入りになるかも知れないし、ならないかもしれないヤツ。というか、奥はまだ未開発だから、それ使われても気持ちよくはなれないんだって。どこまで入るか試したいってだけなら、ダメとは言わないけど、でもきっとつまんないよ」
痛いって言ったら絶対そこで終わりにしてくれるのが条件だけどと言えば、相手は随分と妙な顔をしてみせる。
「奥、気持ちよくないのに、こんなの買ってんの?」
「奥も気持ちよくなれるような体になれないかな、って理由で買ってんの。順番が逆」
「お前今、恋人居ないんだよな?」
「え、なんで今? というか今更それ確認?」
驚けば、居ないんだよなと再度確認されてしまう。
「居ないよ。で、それが?」
「恋人のが奥にあたって痛いから、自分で慣らそう開発しよう、ってならわからなくないけど、恋人が居ない今、開発する理由って何? 次の恋人が奥に届くような立派なの持ってなかったら、むしろ、そんなとこ開発すんのまずくないの?」
ちんぽのデカさで恋人選んでんの、と聞かれて、酷い誤解を受けていることに気づいた。
「男の恋人なんて、過去に一人だって居たこと無いんだけど」
「は? え? あー……じゃあ、ハッテン場とか出会い系とかそういう?」
それとも風俗かと聞かれて、風俗は大きなくくりでは間違いではないけれど、でも彼が想像している風俗とは絶対に違うだろうなと思う。
「違うって。ただの趣味。オナニーの延長で、アナニーしてるの。基本は自分でアナル弄ってるだけ。まぁ、風俗は利用することもあるけど、でも弄ってくれるのは女の子。男で俺の体弄り回したことあるのなんて、お前だけだよ」
相当驚いたらしく、相手は目を瞠ったまましばし呆然として、それから、嘘だろうと言った。もちろん、わざわざ嘘つく理由がないと返した。
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