彼女が出来たつもりでいた2

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 勘違い、ではなさそうだった。それでもすぐには信じられず、相手の股間の膨らみを何度も腿でグリグリと擦ってしまったが、その間、そんな真似をされている相手のことはすっぽり頭から抜け落ちていた。
 服の背中側の布を強く握られ、腕の中の体が小さく痙攣したと同時に、ハッと我に返る。相手の顔はいつのまにか肩口に伏せられていて、ぎゅうとしがみつかれているのに、くたりと体を預けられているような感覚もある。
「ごめん、信じられなくて……」
 しまったと思いながら言い訳にもならない謝罪を耳元で囁いて、詫びるようにそっと背を撫でれば、腕の中の体が小さく震えだして、どうやら泣かせてしまったらしい。本当に、いくら驚きすぎたとはいえ、とんでもないことをしてしまった。
 どうすればいいのかわからないまま、電車はやっと次の停車駅へと到着する。
「降りよう」
 促せば小さく頷き、ぎゅうとしがみついていた腕の力も緩んだが、相手は顔をあげることはなかった。人の流れに乗って電車の外へと押し出され、やっぱり、どうしようと思う。相手を窺っても、いつものように笑って何かを提案してくれることはない。
 結局、ホームに置かれた椅子に並んで腰掛けて、黙り込むこと多分数分。次の電車の到着を告げるアナウンスが流れた後、先に口を開いたのは相手の方だった。
「あの、騙してて、ごめん、なさい。数ヶ月でしたけど、彼女としてデート出来たの、凄く、嬉しかったです」
 ホームに電車が入ってくると同時に、ありがとうございましたと告げて立ち上がろうとする相手の腕を慌てて掴んで阻止する。
「ま、待って。まさか、別れるつもりでいるの?」
 驚いた様子で振り返った相手が、まさかって、と呆然と呟く声が聞こえた。
「別れたいなんて、思ってないんだけど」
「で、でも、もう、気づいた、でしょう?」
「やっぱ男の娘、なの?」
 核心に触れる単語を口にすれば、相手は申し訳なさそうにはいと頷き、また俯いてしまう。
「全然、気づかなかった」
「練習、いっぱい、したんで」
「そっか。知らなかったとはいえ、さっき、電車の中で、酷いことして本当ごめん」
 多分間違いなく、下着の中は相当酷いことになっているだろう。そう思うと、ここで引き止めていることすら、申し訳なくなってくる。
「なんで、怒らないんですか。変態って、罵られても、おかしくないのに」
 スカートの中で勃起させて、電車の中で射精までしちゃって、と自嘲気味に告げる相手の声が届いたようで、近くを通った男にギョッとした様子で振り向かれてまずいなと思う。急行列車が停車する駅ではあるが、時間帯もあってか、降車客が通り過ぎてしまえばそこまでホームに人は居ない。けれどどうせまたすぐ、次の電車がやってくる。
「あのさ、場所、移動しよう。全然話し足りないけど、ここで話すような内容じゃない」
 出来れば二人きりで話したいけど、二人きりになるのはやっぱり嫌かと直球で尋ねてしまえば、首を横に振って否定された。
「二人きりになって、そういう雰囲気になるのが、それで男ってバレるのが、怖かっただけなんで」
「うん、じゃあ、ちょっと近くに個室の居酒屋かなんかないか、探してみる」
「あのっ」
「あ、どこかいい店知ってたりする?」
 自分は全くと言っていいほど利用したことがない駅だけれど、相手もそうとは限らない。しかし、相手の提案はこの駅で降り、落ち着ける先を探すことではなかった。

続きました→

 
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