出張に行くとゴムが減る

 恋人と一緒に住むようになって2年と少しが経過した現在、仕事の部署が変わって出張する機会が増えた。
 最近、買い置きのコンドームの数の減りが早い気がする。なんてことを思ったのは確か半年くらい前で、出張から帰ってくると減っているのだと確信したのは今日だった。
 出張から帰ると、寂しかったとか言って抱かれたがる事が多いけれど、この事実を確信してしまった今、素直に彼の求めに応じてやれるのか自信がない。
 付き合いもそこそこ長いし、お互い年を取って落ち着いたとも思っているし、職場での責任やら何やらも年々増えていくしで、確かに体を繋ぐ回数は減っていると思う。出張後に寂しかったなんて言って、相手から積極的に誘ってくれるのは、正直ありがたいとも思っている。でもどうしたって浮気を疑ってしまうし、求めてくるのは罪悪感からかもと思う気持ちもあるし、まさか浮気相手のセックスと比較されてるんじゃないかと下世話な想像までしてしまう始末だ。
 浮気なんてするはずがないと言い切れないのも、回数が減っている自覚があることと、相手に求めさせている事実があるせいだと思う。
 想いが減ったわけじゃない。今も変わらず相手を想っているし、これからも側にいて欲しいと思うし、このまま一緒に暮らし続けたいとも思っている。ただ、想いが減ってはいなくても、変化はしていると思う。昔ほどガツガツと相手を求めなくなったというか、もう少し穏やかな気持ちで相手を求められるようになったというか、つまり大人になったのだと、自分では思っていたのだけれど。
 ただ、そう思っているのが自分だけという可能性はある。昔と同じように、抱き潰すほどの激しさで求められたいと、相手が思っていないとは言い切れない。
「何か、不満があったりとか、あるか?」
 思った通り、今日は久々に抱かれたいと甘えてきた相手をベッドに押し倒して、キスをして。けれどそのまま抱くことは、やっぱり出来そうになかった。
 結局、両腕の間に横たわる相手を見下ろして、そんな間の抜けた質問をしてしまう。だってコンドームの数が合わないってだけで、それ以外に疑わしいことがあるわけでもなく、いきなり浮気してるのかなんて聞けるわけがない。
「不満? なんで?」
「出張から帰ると、抱いてって言われること、多いから」
「それは寂しかったからだけど、もしかして、誘うの迷惑だった? というか、出張で疲れてるかもとか考えてなかった。ゴメン。無理してしなくて、いいから」
 申し訳なさそうに言い募る相手に、こちらが申し訳ない気分になる。
「いや、疲れてるとか迷惑とかじゃなくて」
「じゃあ、何?」
「なんで、出張後にばっか誘われるんだろうって、思って」
「そ……れは……」
 動揺したらしく、視線が迷うように泳いでいる。やっぱり出張中に何か、あるんだろうか?
「出張中って、何してんの?」
「は? えっ?」
「確かに回数は増えたけど、だいたいいつも数日の出張だろ。今回だって、二泊しかしてない。で、そんなにすぐ、寂しくなるもんなのかなって、思って」
「それは、……それは、その、……」
 少しばかり青ざめながら、そのくせ目元だけは赤く染めて、言葉を探している。まさかちょっと出張中の様子を尋ねただけで、こんなに動揺させることになるなんて思ってもみなくて、こちらも内心大いに慌てていた。というか、もう、黙ってられそうにない。
「確信してるから言うけど、俺が居ない間に、ゴムのストック使ってる、よな?」
「う、ぁあああ、待って。待って。確信してるって、え、ちょ、何言って」
 大慌てで声を荒げる相手を前に、逆にこちらの気持ちはどんどんと冷えていく。知られたくなかったんだって、知られたら困るんだって、その事実に胸が痛い。
「少し前から疑ってた。ゴム、減るの早くないかって。で、俺が出張に行くと減るんだって、今回ので確信した」
「あー、ああー、そっか。うん、その、ゴメン。ごめんなさい。その、怒って、る?」
「怒るっていうか、悲しい、かな」
「ゴメン。ごめん。ただ普段は一緒にいるから、そんなことする暇も必要もないっていうか、一緒に寝てたら、そんな気もなかなか起きないっていうかで。お前が嫌なら、もう、しないから。我慢する。けど、出張から帰ったら、やっぱりなるべく抱いてほしい」
 寂しいのは本当だよと言い募る相手の言葉に、嘘はないと思う。
「もうしないってなら、これ以上咎めないけど。でもどうしても気になるから、相手だけ、教えて。俺も知ってるような人? まさか出会い系とか使ってないよな?」
「は?」
 あっけにとられた顔をしたかと思うと、相手は徐々にその眉を吊り上げて、あっという間に随分と不機嫌そうな顔になった。
「まさかと思うけど、浮気したと思ってる? お前が家に居ない間に、誰か別の男をこの家に入れたって、思ってんの?」
「違うの?」
「違うわっ! つか、そういう心配されてたのは、さすがに心外っつうか、心折れそうなんだけど……」
 うわー最悪と嘆きながら、相手は目元を腕で覆ってしまう。もしかしたら、少し泣かせてしまったのかもしれない。
「じゃあ、なんでゴムの数、減ってんの?」
「それ、俺が言わないと、わかんないの?」
「わかんないから聞いてる」
 やがてか細い声が、一人でするのに使ってると、震えながら伝えてくれたから、そこでようやく、本当に酷い誤解をしていたことに気づいた。
 謝りまくって許してもらって、その後めいっぱい可愛がったから、相手の機嫌もすっかり元通りなのだけれど、最中言っていいのか迷いながらどうしても言えなかったことが一つある。今回は言えなかったけれど、でもきっと近いうちに、言ってしまいそうな気がしている。
 お前のアナニー見てみたいって言ったら、相手はどんな顔を見せるだろう?

 
萌えたらポチッと応援よろしくお願いします。

1話完結作品/コネタ・短編 続き物/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




Menu

HOME

TOP