ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書3

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 感想を聞いてみたい本を数冊持って訪れた翌週末、仕事部屋にはおっさんオススメのエロ本が数冊用意されていた。
 かつておっさんの本部屋には何人も子供が出入りしていたし、本を読まずに騒いでいれば容赦なく追い出されたけれど、それでもおとなしく本を読み続ける子供は少なく、多少のざわめきがあるのは普通だった。おっさんの本部屋以外でだって本は読むし、つまり、一人静かな環境でなければ本が読めない、なんてことは決して無い。
 なのに今、一緒に読むの言葉通り、自分の持ってきた本を同じ部屋の中で読んでいる相手が、先程から気になってたまらない。ただそこに居て、静かに本を読んでいるだけなのに。
 チラチラと盗み見ていたら、ふいに目があって、フッと小さく笑われた。それは意識されている事をわかっている顔だった。
 なんだか悔しいような気持ちで、手元の本にむりやり意識を集中する。時折見られているような気配もあったが、同じように顔を上げて確かめて、フッと笑ってやるような真似は出来なかった。
 どうにも気が散って仕方なく、一冊読み終えたところで二冊目に手を出すのは諦めて、まだ読み終えていない相手を存分に眺め見てやる。
「リビング行って、勝手にお茶でも飲んで待っててもいいけど?」
 暫く見ていたらやはり気づいたらしく、手元の本から視線も上げず、そんな言葉だけが飛んできた。
「見てたいです」
「ん、そう。じゃもうちょっと待ってて」
 気が散るから出て行けと言われるのかと思えば、あっさり見つめ続けることに許可が出る。驚きながらも、その言葉に甘えて眺め続けることおよそ十五分。読み終えたと言って本を閉じた相手が、リビング行こうと立ち上がった。
 昼には少し早いけどまぁいいかと言って出された本日のランチは、サンドイッチ用の薄切りパンと皿に乗った具材だった。それとお湯で溶くだけのスープ。
 食事はテレビ前のソファではなく、二人がけのテーブルセットの方で食べる事が多いのだが、小さな机の上はバターやジャムやマヨネーズなども並んでギチギチだ。
 どうやら今日の昼食は、パンに好きなものを挟んで食べろということらしい。
「手抜きが増してませんか?」
「文句あるなら家帰って食ってくれば?」
「すみません。頂きます」
「というか、こういう飯のがお前が楽しいかと思ったんだけど」
「え、なんでです?」
 彼が作ってくれる手料理を食べるという部分への楽しみが大幅に削られた状態だというのに、いったい何を楽しめばいいというのか。
「いつも暇そうにこっち気にしてるから、作る時間の短縮って意味が一つ。もう一つは、こういう食べ方にすると、相手の好みが見えてくるかと思って。お前の好奇心を刺激するかと思ったけど、そうでもないってなら、俺だけお前見て楽しむことになって悪ぃな」
「は? 俺見て楽しむんですか?」
「お前ほどあからさまじゃないけど、俺だってそれなりにお前を観察してるよ?」
「そ、なんです、か……?」
「うんそう。お前、自分に向かう好奇心には意外と鈍いのな」
 さっき本読んでるお前のこともかなり見てたよと言われたので、やっぱり見てたんだと思いながら、気配は感じてたと返す。
「顔上げないから、よっぽど真剣に本の世界入ってるのかと思ってた。で、どうだった?」
「どうだった、……ってのは」
「感想聞いてる」
「食いながらエロ本の感想を言えと?」
「さっきお前が読んでた本の中に、食欲減退するようなエグいエロシーンはなかったろ。あれ? ない、よな?」
 確かにごくごく普通のセックスをちょっと濃厚に描写していた程度の内容ではあったけれど、食事を開始する前に感想を聞かれるのは想定外だ。出来れば先に、彼の読んでいた本について互いの感想を存分に言い合いたい。ランチタイムをそれで過ごして、エロ本の方の感想は、食後にサラッとスルッと終わらせるつもりでいたのに。
「先に、あれをオススメにした理由、聞いかせてください」
「それ聞くってことは、気づいてんじゃないの?」
「じゃあやっぱり、他のオススメも好奇心でやっちゃう系?」
「まぁそうだね」
「煽ってんですか?」
 好きって気持ちもセックスしたいという欲求も、好奇心からだと前回はっきり認めてしまった。その上で、あえて好奇心から体の関係を持ってしまう話ばかり選んだというのなら、それはもうどう考えてもこちらを煽っているとしか言えないだろう。
「煽ってるよ」
 けれど平然と肯定を返されれば、一瞬次の言葉に詰まってしまう。
「で、も……好奇心でセックスした先、どんな結論になるか、わかりませんよ。スッキリして興味失って、それで終わるかも、しれないのに」
「まぁ現実なんてそんなもんかもだよな」
「じゃあ変に煽ってくんの止めて下さいよ」
「なんで?」
「俺の結論出るの、待ってんじゃなかったんですか?」
 こちらの気持ちがはっきりしないと彼だって動けない。というような事を、前回言っていたくせに。
「まぁ結論は出てなかったけど、でも色々はっきりしてただろ。好奇心で俺とセックスしたいってさ」
「じゃあさせてくれるんですか、好奇心で、セックス」
「いいよ」
 まっすぐに見つめてくる視線に、本気で数秒、体はもちろん思考すらも固まった。

続きました→

 
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