ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書2

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 レトルトソースを掛けただけっぽいパスタと、インスタントをお湯で溶いただけっぽいスープと、野菜もしっかり食えと言わんばかりに多目に盛られたサラダという昼食を食べながらの本日の話題は、さっきまで読んでいた大人向けじゃない方の本の感想だった。
 以前は本を追加したところでわざわざ教えてくれることはなかったけれど、最近は仕事部屋の方ばかりお邪魔しているせいか、今日は玄関先で顔を合わせた最初に、一応言っておくと言って普通の本部屋に本を追加したことを教えてくれた。
 だったらと向かった本部屋には、追加された本が五冊ほど、わかりやすく他の本とはわけるようにして入口付近の棚に並べられていた。前はこんなわかりやすく置いてはくれず、いつの間にか増えていたのに。
 たくさん並んだ本の中から、今まではなかった本を見つけだした時の嬉しさや楽しさを思うと少し残念ではあるけれど、すぐに新しい本が読めるようにとわけておいてくれた彼の気遣いをありがたいとも思った。
 二冊ほどを読み終えたところでほぼ昼時だったので、次の本へは手を出さずに彼をランチに誘ったのだが、そういう経緯だったので、読んでいた本とそれについての互いの感想を言い合う形になったのはごくごく自然の流れだろう。
 同じように感じた事に嬉しくなったり、全く違う感想や視点に驚いたり感心したり、感想を言い合うというのはあまりに楽しい時間だった。
「こういうの、もっと、したいかも」
「感想の出し合い?」
「うん、そう」
「別に構わないけど、昔読んだ本だとすぐには内容思い出せないからなぁ。しかもお前が最近読んでるのって仕事部屋に置いてるエロ本がメインだろーが。あーでもまぁ、エロ本挟んで互いのセックス感やら語っておくのも悪かねぇか?」
「ちょっ、待って。エロ本の感想を言いあいたいなんて言ってない」
「そうか? 俺はお前のエロ本への感想、気になるけど」
「ええっ!?」
 さらりと言われて驚いたら、なんでお前にあの部屋開放したかわかってる? と問われて、ぐっと言葉に詰まってしまった。
「別にうちの本が読みたいなら、社会人になったならもう来るなとか言うつもりなんて最初からなかったし、好きなだけ通い続けりゃいいと思ってるよ。でもそれは普通の本部屋の話な」
「あの部屋に入れてくれたのは、俺が、あなたを好き、みたいな話をしたから、でしょ」
「きっかけはまぁそれだけど、あの部屋を開放したのは、お前の気持ちがふわっふわしててはっきりしてないからだ。お前の気持ちがはっきりしないと、こっちも動きようがない。大人向けったって完全ヌキ目的なのもあれば、恋愛ベースなものもあるし、そういうの読んで俺とどういう関係になりたいのか、セックス含めて考えろって意味だよ」
 急かす気はないけど待ってないわけじゃないからなと言われて、気持ちを聞かずに居てくれる相手に甘えすぎていたと反省する。
「すみません。考えてないわけじゃ、ない、です」
「ならいいよ。待ってないわけじゃないとは言ったけど、正直、お前がこのままはっきりさせず、ダラダラと俺にボッタクられながら週末に一緒に昼飯食う関係に落ち着くなら、それはそれでありだとも思ってる」
 確かに、このままだとそんな関係に落ち着いてしまいそうな気配はある。しかし膨らむばかりの好奇心が、セックスを含む関係を提示された状態で、相手に触れないという選択をさせないだろうとも思う。
「今の関係に落ち着くつもりはないです。セックスは、したいです」
 言い切ったら少しばかり目を瞠られた。
「そうなんだ。そこはもうはっきりしてるんだ?」
「はい」
「それでその場合って、俺を抱きたいの? 俺に抱かれたいの?」
「そ、れは……」
 言い淀んでしまったら、ますます驚いたらしい。
「セックスしたいって気持ちははっきりしてるのに、抱きたいか抱かれたいかの自覚はまだなんだ?」
「いえ。正確には、どっちもしてみたい、です」
 正直に言ってみたら、あー……となんとも間延びした声を返された。
「好奇心旺盛だねぇ」
「知ってます」
「じゃあ、俺を好きって好奇心はどの辺がメインか自覚ある?」
「あなたを好きって気持ちが好奇心からだって、知ってたんですか?」
「ああ、やっぱそうなの。で、俺の何がお前の興味引くの? 俺がゲイだって隠してないから、男相手のセックス試してみたいって思った?」
「男相手のセックスを試したいというより、セックス中のあなたを見てみたいという好奇心ですかね。だから、抱かれてるあなたも、抱いてるあなたも、両方見たい。みたいな。でもって、その好奇心のメインがどこかを説明するのは、ちょっと、難しいです」
 好奇心からの好意だと自覚してからは、その好奇心の出処についてもそれなりに考えたけれど、この家に通い続けて積み重なったものが色々としか言いようがない。平気で家の中に他人を受け入れるのに、その間その相手を放置して仕事部屋に篭ってしまうという彼の態度がまず普通じゃない。というかこの家には普通じゃないことが溢れている。
「そんなにおかしなこと言いました?」
 わずかな動揺が見て取れるのと、ほんのりと赤くなったような気がする頬を見ながら、もしかして照れてます? とは聞けなかった。
「いや。でもちょっと想定外の返事が来た。そこまで色々はっきり自覚あって、でもまだ俺とどうなりたいかの結論はでてねぇの?」
「ないです。好奇心が満たされてしまった後、あなたとどうなりたいのかわかりません」
「頭でっかち。もしくは真面目バカ」
「は?」
「お前、ここ以外でも本は読む?」
 唐突に話が変わってわけがわからないと思いながら、そりゃ読みますよと返した。
「じゃ、今度お前のオススメだって本持ってきて。俺もお前と一緒に本読むわ。でもって昼飯食べながらそれぞれ読んだ本の感想出し合いしよう。あ、お前が読むのは仕事部屋の本な」
「ちょ、俺だけエロ本の感想言わせるんですか」
「そう思うならお前のオススメエロ本持ってこいよ」
 楽しみにしてると笑われたその笑顔が珍しくて、気づけばわかりましたと了承を返していた。

続きました→

 
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