昔好きだった男が酔い潰れた話6

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 それらを指摘して、もう一度わからないと言ったら、相手は困った様子で無理だよと返す。
「だからなんで無理なんだ」
「だって、そんなの……お前が好きって言った頃の俺と、今の俺じゃ違いすぎるし」
「それを言ったら俺だって随分と変わってるはずだろう。ああ、それとも、お前は今の俺だから好きなのか」
 年に数回会うかどうかの相手だから、好きだなんて事が言えるのかもしれない。昔の記憶に少しばかり現在の情報を足しただけのイメージに好きだと言っているのなら、それも仕方がないのだろうか。
「違うっ」
 そんな思考を払うように、強い声が否定を返す。
「あの頃は男相手のどうこうを考えられなかっただけだって言ったろ。自分がそっちの側って自覚してたら、お前の告白だって受けてたよ。それで、上手くいったかは別として」
 弱々しく付け足された最後のセリフが気にかかる。
「まるで付き合っても上手く行かないみたいな言い方だな」
「行くわけ無い。そもそもお前、なんで俺に告白なんてしたんだよ。お前こそ、男なんて恋愛対象外だろ」
「確かにお前以外の男に告白したことも、告白されたこともないが、お前が好きだと思った気持ちまでお前に否定される覚えもないぞ」
「俺がそう思わせただけだ。って言ったら?」
「意味がわからない」
「自分で言うのも何だけど、俺はちょっとタチが悪い。その上司いわく、無自覚に男誘うんだってよ。言われりゃ確かにそういうとこあるかもって思うよ。俺、男友達にちやほやされんの、基本的に好きだしな」
 自嘲気味の乾いた笑いがなんだか痛々しい。
「ようするに、俺の事も無自覚に誘ってたと言いたいのか」
「そう」
「それの何が悪いんだ」
「は?」
「ようするに自覚がなかっただけで、あの当時からお前は俺を好きだった、という告白だろう?」
「はああ??」
 あまりに驚かれてこちらも驚いた。そんなに的はずれな返答をしたつもりはなかったが、相手は小さく吹き出した後、もう我慢できないと言いたげに笑い始めてしまう。
「お前のそういうとこ、ホント、好きだよ」
 斜めにポジティブでと続いたそれは褒め言葉ではなさそうだったけれど、しおしおと萎れた様子よりは笑ってくれていたほうがマシだったので黙っていた。
 やがてひとしきり笑い終わった後で、彼は酷く真剣な表情で見つめてきたから、自然とこちらも次の言葉を待って居住まいを正す。
「俺はお前が思ってるより色々問題抱えてると思うんだけど、それでも俺と恋人になってって言ったら、お前、オッケーする?」
「聞き方が卑怯だ」
「そうだね」
 あっさり肯定を返した彼は更に続ける。
「お前が恋人になってって言わない理由をあんまり聞くから、言ってみただけだもん。お前に見えないだけで、障害は俺の中にいっぱいあるって話」
「俺に見えないのはお前が話さないからだろう。お前の抱えてる問題とやらは、やはり俺には話せないのか?」
「色々ありすぎてどう話せばいいのかわかんないって。ただ、俺は自分自身の事で手一杯だから、恋人になんかなっても楽しいとは思えないよ」
 それこそセックスメインでもない限りと続けた彼は、ニヤリと笑ってセックスしてみる? と聞いた。そこに話が戻るのかと思ったら思わず溜息がこぼれ落ちる。
「ほらな。お前さっき、俺以外の男に告白したことも、男に告白されたこともないって言ってたじゃん。てか彼女いた事もあったよな。セックスは女としか経験ないんだろ? でもって俺とするつもりもない。ならそんなお前が俺と付き合って何すんの?」
「するつもりがないとは言ってない」
「溜息ついたくせに」
「そこに話が戻るのかと思っただけだ」
「何度も、恋人になれって言わない理由を繰り返し聞いてきたお前に、それ言われたくないんだけど」
 不満気に唇を尖らせる様子に、確かにそうだなとは思った。
「お前にとってセックスはどの程度重要なんだ?」
「どういう意味?」
「俺がお前とのセックスに応じたら、俺と恋人になる事に意味が見いだせるのかと」
 恋人になんかなっても楽しいとは思えない。と言った先ほどの彼の言葉が頭のなかにこびりついていた。
「楽しい事がなにもないのに、恋人になっても仕方がない。という理由なら、わからなくはないからな」
「あー……」
 彼は微妙な面持ちで、溜息にも似た声を発した後。
「セックスするかどうかはすごく重要。って言ったら、お前、俺と、セックスする?」
 恐る恐る訪ねてくるので、もちろんするときっぱり告げた。

続きました→

 
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