ベッドの上に座る彼の開かれた足の間に収まって、後ろからそっと抱きしめられている。服は脱いで居ないけれど、ズボンのフロントは全開で、取り出したペニスを自分で握って扱いていた。
耳元で繰り返される好きだの言葉も、呼ばれる自分の名前も、とても柔らかで甘い。
どんなことを想像しながら抜いているのか告げた最初はやっぱり酷く驚かれた上に、彼自身のエロ妄想とのあまりの差にか、だいぶ気まずそうな顔もされたけれど、それでも相手はすぐにわかったと頷いた。あっさりと、抱きしめて、好きだって言って、体中にキスを落としてくれると言った。
それを、抱きしめて好きって言ってくれるだけがいいと頼んだのはこちらだ。彼の前に裸体を晒して、隅々まで唇を落とされるなんてことが現実になったら、ちょっと耐えられる自信がなかった。絶対に恥ずかしいばっかりで、気持ち良くなれると思えなかった。
ただ、抱きしめられて好きって言われるだけでも、結果的には恥ずかしいばかりで、とても妄想と同じように気持ち良く射精することなんて出来ない。というか、実際に触れられて初めて、彼の手でイカされるという妄想をまるでしていなかった事に気づいた。
普段頭の中で繰り広げている通りのことをしてくれる気だった相手は、だから本当に抱きしめて好きだと繰り返すだけのことしかしてくれない。というのは嘘で、彼は最初、当たり前みたいに、抱きしめて好きだって言いながら握って扱いて抜いてくれる気でいた。だから、性器を彼に握られるなんて妄想をしたことがないと知った時には、やっぱり相当驚いていた。
つまりバカ正直に告げてしまったせいで、彼の腕に抱かれながら、自分で自身を慰める羽目になっている。しかも時折背後から覗きこまれてる気配がするし、耳元で響く声はびっくりするほど甘ったるいし、やたら恥ずかしくてちっとも集中できない。萎えないくせに、イケもしない。
「ね、も、やめたい」
「なんで?」
「だってムリ。イケそうにない」
「でも勃ってんじゃん」
「そうは言っても、ぁ、ひゃぅっ! ちょっ、何?」
首筋に何かが触れて、一気にゾワッとしたものが体を駆け巡った。
「んー……」
「ちょ、えっ、やっ、やんっ、なに、なにして」
何をされているかはさすがにすぐにわかったけれど、背後から抱きしめる腕にけっこうな力が込められていて、簡単に抜け出せないまま上ずったみたいな声を漏らす。というか数年前に抜かれて以降相手の方が背が高いとは言え、身長にはそこまで差がないのに、こんな簡単に腕の中に閉じ込められると思ってなかったから、内心は大いに慌てていた。
「ぁ、あっ、ぁうっ、ひっ、んんっ」
さすがに居た堪れなくなって、必死で口を閉じながら力いっぱい前傾すれば、ようやく首筋を舐めたり柔く噛んだりしていた相手の気配が遠ざかる。
「やっぱお前脱げよ」
「は? なんで。やだよ」
「取り敢えず上だけでいいから。首と背中にキス落とすの追加してみよ。あ、耳とかもキスされたい?」
「やだってば。てか俺はもーやめよって言ってんだけど」
「でもイケないのは刺激足りてないからだろ?」
「違うっ!」
恥ずかしくて集中できないのが理由だと言えば、相手は不満そうな声を上げた。
「えーっ」
しかもその後、また首筋に唇が触れる感触がする。
「おまっ、もっ、やだって言って、ぁ、あ? ちょ、えっ? いっ、痛っ、イタイイタイイタイ」
痛いと喚けば歯を立てるのは止めてもらえたが、ジンジンとした痛みは残っていたし、肌に残った歯型を確かめてでもいるように、舌が何度も行き来した。
「悪い、少し跡付いた」
多少は本気で申し訳ないと思っていそうな声だけれど、それでもそこまで悪い事をしたなんて思ってなさそうだ。
「は? 少し?」
「少しだよ。痣になるほど強く噛んでない。でも、ゴメンね?」
「かなり痛かったんだけど。つうかそれは許せって意味のゴメンなの? こんな酷いことしたけど捨てないでって縋りたい意味のゴメンなの?」
「どっちも。それと、ちょっとこの後もっと酷いことするかもだけど許して、って意味もある、かも?」
「ん? 何するって?」
「さすがにここで止めるの無理だから、もし泣かせちゃったら本当にゴメン」
大好きだよと囁く声はとても甘い。そうして欲しいと言ったからくれてるだけの言葉だとしても、こちらを喜ばせたい彼の本気が篭っているのは伝わってくるから、嬉しくてたまらない気持ちになる。なのに、まだ微かに痛みの残る場所へ再度唇を落とされれば、先程の痛みを思い出してしまう。嬉しさよりも恐怖が勝って、身が竦んで震えてしまう。
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