まるで呪いのような17

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 フッ、フッ、とせわしなく息を吐く。ギュッと閉じた瞼からは時折涙があふれてしまう。それらは自分の手でグッと顔に押し付けているタオルが吸い込んでくれるが、タオルで口を塞いで息を詰めすぎれば、そうなっている原因とも言える男が背後から、呼吸はしてと促してくる。
 ほぼうつ伏せた状態で、腰が浮くようにと下に枕とクッションを重ねられ、尻タブを開かれて彼の目にそんな場所を晒すというだけでも、恥ずかしすぎて息なんて止まりそうなのに。晒したアナルを撫でられて、彼がちゃっかり持ち込んでたローションを塗りたくられて、揉まれて、今はもうずっぷりと指が一本埋まってしまっている。しかも、いざ指が入りそうって時に、やっぱり怖くなって本気で逃げようとしてしまったら、またガップリとしかもかなりの強さで噛まれて、痛い痛いと喚いている内に指が入ってた。
 酷すぎると詰りたい気持ちはもちろんあったけれど、中に入れた指を動かすことはしないまま、こちらが落ち着くまでゴメンも好きだもたくさん繰り返されて、宥めるみたいなキスを降らされたら、結局受け入れてしまうしかない。抱いていいと言ったのは自分だし、むしろ嬉しいとも言っちゃったし、ここまできてやっぱり嫌だを本気で言ったら、今度こそ間違いなく犯される。むりやりに体を拓かれて、互いの体も心もズタボロにするような、そんなセックスをしてしまう。
 抱かれたいななんて、ふわふわと彼に求められる幸せを考えて浸っていた妄想と、現実はあまりに違った。恥ずかしくて居た堪れなくて怖くて、まだそこまで痛みはないけど、違和感だけならもうとっくに耐えられないレベルに入ってる。
 ただ、こちらが相手を拒否する態度や感情を出さなければ、相手もまた必死で衝動をこらえて、優しく丁寧に扱ってくれようとしているのもわかるから、どうにか耐えているって感じだった。
 それに、どうしても抱きたいんだとか、体ごと俺のものにさせてとか、ゴメンを重ねる中にチラチラと混ざり込んでいる言葉がたまらなく嬉しい。好きって気持ちが良くわからないという彼の剥き出しの欲望は、こちらが欲しがるから好きって言ってくれてるだけって気持ちを、簡単にふっ飛ばしていくようだった。
 自分が彼に向ける、生身のセックスを想像できないような幼く拙い好きなんかより、ドロドロな執着心を抱えた彼の好きは、あまりに大きくて情熱的でクラクラする。まぁ、やっぱりこんなに好きなんじゃないかと思っているのは自分だけで、彼は今こうして晒している欲望を、今後も恋愛的な意味も含めた好きとは別物として扱うんだろうけれど。
 未知なものはどうしたって怖いし、泣くことは許されていたからそこは我慢せずにひたすら泣きまくってしまったけれど、おかげで、そろそろ挿れられそうだから一旦指抜くわと言われる頃には、涙はほとんど枯れていた。
「このまま、挿れん、の?」
 泣きまくった影響か、尋ねる声はガサガサだ。
「そりゃあ……っつか、それ、どーゆー意味で聞いてんの?」
 コンドームを装着している彼を直視できずに居るくせに、こんなことを言ってもいいのかなとは思ったけれど、でもやっぱり出来ればちゃんと向き合って、抱き合う形で挿れて欲しい。
「その、出来れば正常位? がいいな、って、思って」
「ああ、そういう……」
 やっぱり言わないほうが良かっただろうか。何やら色々考えさせてしまっているようだ。
「あの、やっぱいい。お前の好きに抱いて欲しい、し」
「いや、いい。しよう、正常位」
 体をひっくり返されて、あっさり後悔した。向き合って抱き合いたいと思った気持ちは本当でも、やっぱり彼の顔を直視できそうにない。なのに慌てて握ったままのタオルを顔に押し付けようとしたら、それもあっさり取り上げられてしまった。
「ゴメンな。すげーひでぇ顔になってる」
 困ったような苦笑顔に、胸がざわざわして不安になる。
「ご、ゴメン。やっぱいい。正常位がいいとか全然嘘だった。無理。後ろから。うんそう、後ろから抱いて欲しい」
 ぐっと顔ごと上半身を捻って、ひっくり返された体をまたもとのうつ伏せに戻そうとしたのに、肩を捕まれ阻止される。
「何そんな焦ってんの? てか顔逸らすなって」
「だっ、て……てか顔近い近い」
「お前が逃げるからだろ。で、何?」
 さあいざ挿入って段階でこんなことで待ったをかけられているんだから、不機嫌そうな声の理由なんて聞かなくたってわかる。なんで正常位がいいなんて言っちゃったんだろう。
 枯れたと思った涙がまたじわりと滲んでくるのがわかる。既にひでぇ顔だと苦笑された顔が、ますます不細工に歪んでしまう。
「ぶ、ぶさいく過ぎて、萎えたら、困る」
「は?」
「いっぱい泣いたから。顔酷いし、向き合って抱いてとか、無茶言った」
「おまっ……」
 一度言葉を詰まらせた相手はその後数回深呼吸をして、それから酷く真面目な声で、かわいいよと吐き出した。

続きました→

 
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