まるで呪いのような7

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 しばし互いを見つめ合った後、揃って大きく息を吐く。
「どっちから言う?」
「お前から」
 言えば再度小さく息を吐いてから、わかったと頷き話し出す。
「さっきも少し言ったけど、お前を先輩って呼ぶの、好きじゃない」
「それは知ってるよ」
「特に学年が変わる4月が嫌い」
「それも知ってる」
「うん。ただ、知ってるお前に気遣われるのは嬉しいけど、それも嫌い」
 初耳だと言えば、嬉しいが勝ってたから言わなかったのだと返された。
「お前、俺に凄く気を遣うよね。それって俺が怒ったり拗ねたりすると面倒くさいからだろ?」
 すぐに肯定できずにためらえば、怒ったり拗ねたりしないから認めていいよと言われたけれど、やっぱり頷くことなんて出来ない。
「お前の機嫌が悪い時、面倒くさいと思うことがないとは言わないけど、そもそもそこまでお前に気遣ってる自覚がない」
 慣らされ過ぎと言って笑った相手は、笑っているのに泣きそうにも見えた。
「恋人になった俺が同じ学校行ったら、お前、今以上に俺を気遣わなきゃならなくなると思ったんだよ。お前はきっとそれも受け入れちゃうだろうけど、これ以上お前の目指してる人生の妨げになりたくないし、恋人って関係があれば、学校行ってる間くらいお前と離れてても大丈夫って思ってた。実際、小学校と中学校ってほぼ隣なのに、お前が中学に上がっちゃった時より、お前が遠い高校通ってても、今年のがずっと気持ち楽だったし」
 ずっと恋人になって良かったと思っていたと言った相手は、それから少し申し訳なさそうに、でもお前は俺のっていう安心感のためだけに恋人になったとも言えると続けたから、胸がきゅっと締め付けられて痛い。
 やっぱり、だとか、そうだと思った、だとか。そんな言葉が頭の中を巡っている。
「多分お前も知ってた、だろ?」
 そっと尋ねられて、でも頷けなかったし、知ってたと吐き出すことも出来なかった。唇が、震えている。
「高校上がったら、別れてって言われるかもとは思ってた。でももう逃がす気なんてなかったから、お前と同じ高校は通わなくていいって、思った。ただ、同じ高校に行っても、お前に別れ話出されると思ってたから、同じ高校に通わないから別れるって言われてるらしいのだけ、すごい想定外」
「だ……って、」
 咄嗟に吐き出した声は酷く震える涙声で、慌てて唇を噛み締めた。しかもそんな自分の声に触発されたみたいに、とうとうまた涙がこぼれ落ちるから、抱えたままだった膝にもう一度顔を埋めてしまう。
「ちょっと、待っ、て」
 落ち着いたらちゃんと自分の話もするから。できるだけ正直に、惨めな片想いも晒すから。そんな気持ちを込めながら、どうにかそれだけ吐き出した。
 だってだってと膨らむ想いに胸が苦しい。なんでなんでと脳内にあふれる言葉は煩雑でまとまりがない。胸の中も頭の中もぐちゃぐちゃになっていて、悲しくて苦しくて辛いのがどこから来ているのかわからないまま、ただただ涙になってあふれて行くようだった。
 そんな中、横から伸びてきた腕にグイと引き寄せられて抱きしめられる。さっき泣いた時は放置だったくせに。驚いて硬直してしまえば、耳元で嫌かと短く問われた。それは酷く優しい声音だった。
 嫌なわけがない。ただ、なんでこんなことをするのかわからなくて余計に混乱するし、なのに嬉しいのがますます切ない気分にさせるし、落ち着くどころじゃなくなってしまう。
「どんだけでも待つから、お前に触らせてて」
 やはり優しいままの、なんだか少し甘ったるい声音と、そっと背を撫でる手。こんな彼を、自分は知らない。

続きました→

 
 
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「まるで呪いのような7」への2件のフィードバック

  1. 有坂レイさん、はじめまして!へきと申します。
    pixivで”雷が怖いので”を見つけてからレイさんの書くblにすっかりハマってしまい、今ではこちらのサイトにお邪魔するのが毎日の楽しみです。
    “まるで呪いのような”も、すっごくキュンキュンします><今後二人がどうなっていくのかすごく楽しみです…!

    そして、気づいてしまったのですが、"西向く侍"ではない月は、31日と翌月の1日の2日間、待たなくてはいけないのですね…!偶数日が待ち遠しいです!
    寒い日が続きますがお体にお気をつけて、頑張ってください!失礼します。

  2. へきさんはじめまして(^^♪
    pixivからこちらまで来て下さって、しかも通ってくださってるみたいで、本当ありがとうございます。
    いいなと思ってもらえた作品から、他のも読んでみようと思ってもらえたことが凄く嬉しいです!
    今書いてる二人の今後を楽しみだと言って貰えたのも、とても励みになりました。

    今日は月替りの連続奇数日で更新お休みしますが、明日からまた一日置き更新頑張っていきますので宜しくお願いします。
    コメントどうもありがとうございました〜

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