親睦会8

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 さっきいつも通りだと思ったはずが、夕食が始まれば様子がおかしいのは明らかだった。
 酔い潰されて以降、自分は奢りでもほとんどアルコールには手を出さない。そしていつもなら、相手も最初の一杯程度しか頼まない。なのに今日は随分と摂取する酒の量が多かった。
「そんな飲んで、大丈夫なんですか?」
 親睦会の時は勧められるままに飲んでしまって早々に酔っ払っていたから、相手がどれくらい飲んでいたかの記憶はさっぱりない。ただ、意識がはっきりしだした時、自分を穿ち揺さぶるこの人に、酔っている様子はなかったはずだ。
 普段一緒に食事をする時に飲まないのはこちらに合わせているからで、本当はザルとかワクとか言われるような、酒に強い体質なんだろうか。
「うまい飯にうまい酒があったらそりゃ飲むしかないだろ。多少酔ったって、今日は帰らなくていいわけだし」
「そりゃそうですけど」
 でもここに来た目的を考えたら、出来れば多少だって酔ってほしくはなかった。帰らなくていいから酔えるな、なんて勢いで飲まれた結果出来上がった酔っぱらい相手に、しつこく求められるセックスをされるのかもと思ったら、憂鬱を通り越して酷く気が重い。
「まぁもし俺が酔い潰れたら犯してもいいぞ」
 既に結構酔ってんじゃないかと疑いたくなる発言だ。しかもおかしそうに笑っている。きっと、昼寝中に相手の体を弄っていたことをからかわれているんだろう。
 羞恥と怒りとでカッと体の熱が上がった。
「絶対しないし、もし潰れたらそのまま放置します」
「絶好の仕返しチャンスなのに?」
「犯していいよなんて言ってる相手犯して、仕返しになるはずないでしょ」
「確かに」
「というかそもそも、自分が抱く側とかすごく面倒くさいんですけど」
 言えば相手はますますおかしそうに笑っている。
「それ、仕返しって聞いて、俺がやったことそのままやり返すこと考えてるからだろ。俺の体気遣う必要ないって言ったら、突っ込んで見るくらいはするか?」
「まさかと思いますけど、もしかして、俺に抱かれたいんですか?」
 そんな願望があるかもなんて、欠片も考えたことがなかった。え、無理。男を抱くとか全くもって興味ない。
「いいや。お前にその気ゼロでちょっと安心してる」
 こわごわと聞いたら、あっさり否定された上、今度はニヤニヤと不穏な笑みを見せている。
「じゃ、抱くの面倒なら、逆レイプ的な感じでお前が抱かれれば?」
「それは仕返しどころか、もはやサービスの域じゃないすか」
「そうだな。で、そんなサービスを、なんでしてくれる気になったわけ?」
 ドキッと心臓が嫌な感じに跳ねた。ニヤついた顔からは、昼間の行為を咎められている感じは一切ないけれど、でもただからかっているのとはなんだか少し違うような気配がする。
「寝てたからって逆レイプしてやろうなんてこと、考えてませんでしたよ」
 そもそも自分で後ろを弄ったこともないのに、逆レイプなんて真似ができるわけがない。かといって、フェラしてみようと思ったとも言いにくい。それだって間違いなく、相手へのサービスに他ならないからだ。
「ただまぁ、夜にがっつりってのより、時間開けて何度かするほうがまだマシに思えたから、夕飯前に一回やっておきたくて、あなたを触って煽ってたのは否定しませんけど」
「残念だったな。夕飯前にやり損ねて、夜にがっつりコースだわ。というかお前、今日は一回で済ませる気がないの、わかってて旅行付いてきたよな。でもって、やっぱりわかってて一緒に昼寝したわけだ」
「まぁ、そうです、ね」
「いいのか?」
「なんでそれを、あなたが聞くんですか」
「お前の気持ちがわかんねーから。お前が嫌がることわざとやってんのに、何でお前、黙って俺に抱かれ続けてんの?」
 ああ、やっぱりわざとなのかと思うと、胸の深くがキリキリと痛い。はっきり言葉にしないまま、曖昧で殺伐とした関係のままで良かったのに。そしたら、続けて何度もしたいくらい欲情してくれているのだと、ひとかけらの希望を持ったままで居られたのに。
「別に。美味いタダ飯に温泉まで付けてくれたから、やりたいなら勝手にどうぞってだけです。しつこく何度もやりたいなら、やってみりゃいいじゃないですか。こっちは寝転がってるだけで気持ちよく性欲解消させて貰えるから続けてますけど、気持ちよくないセックスされたら、いくら俺でも止めますからね。もう既に結構酔ってるみたいに思えますけど、酔っぱらいの下手くそセックスとか勘弁して下さいよ」
「ふーん。なぁ、それ本音?」
 それだけじゃないだろと言われている気がして、肯定は返せなかった。確かに本音の一部ではあるけれど、それ以外の感情にだって、まったく気付いていないわけじゃない。時折胸が痛くなる理由に、欠片も思い至れないほど、自身の感情に鈍くはなかった。ただ、認めたくないし、目を逸らしていたいだけで。
「逆に聞きますけど、そっちこそ、なんで俺を抱き続けるんですか。ちょっと奢れば黙って足開く便利な穴ですか? でも便利ってほど簡単に突っ込める穴でもないですよね?」
「まぁお前風に言うなら、奢った上に丁寧に奉仕して、お前を気持ちよくしてやってるのがメインみたいだもんな。俺もちゃんと気持ちよくはなってるけども」
「そうですよ。ちょっと物好きすぎじゃないですか」
「物好きってより悪趣味なだけだな。お前の善がってる顔を見たいんだよ。元々ゲイってわけじゃないのに、俺に突っ込まれて気持ちよくアンアン喘いでるお前見ると、気分がちょっとスッとする」
 さすがに最後の方は酷くバツが悪そうだった。だったら、スッとするなんて言わなきゃ良いのに。ただ、嘘でも甘い言葉をくれようとしないところが、一貫しているようにも思う。好意から抱いているわけじゃないと、いつだってわかりやすく突きつけられている。
 二人も付き合っちゃえばいいのにと言いながら、ふわふわと幸せを振りまくように笑う同期の顔が頭の隅をチラついた。
 どう考えたってそんな展開無理だよと思って大きなため息を吐き出せば、対面に座る相手も小さくため息を吐き出して、グラスに残った酒を一息に飲み干してしまう。
 酔っぱらいの下手くそセックスは勘弁しろとはっきり忠告したにも関わらず、その後も相手はペースを落とすことなく飲み続けて、結果、めちゃくちゃ酔ったらしかった。デザートには口をつけずにこちらへ押しやり立ち上がると、お前は温泉堪能しろよと言い残して、フラフラと寝室スペースへ入っていく。
 つい先程、夜にがっつりコースと言ってニヤついていた男が、なんでこんなことになっているんだろう?
 わけがわからず呆然とその背を見送ってしまった。

続きました→

 
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