別れた男の弟が気になって仕方がない19

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 何をわかってないかを教えてくれるのかと思いきや、相手は黙ったまま肩口に頭をグリグリと押し付けてくるだけで口を開かない。今にもまた、言いたくないという言葉が聞こえてきそうだ。
「俺が何をわかってないかも、教えてはくれないの? それも、言いたくないこと?」
 先手を打ってこちらから聞いてやれば、グリグリと動かしていた頭がピタッと止まった
「ならもし、何を言われても、今日この場限りで忘れてあげるよ。って言ったらどう?」
 別れてしまったとはいえ彼の兄の連絡先を消去したわけではないし、何かの拍子にどこかで顔を合わせたときに、互いを避け合うような事もきっとないだろう。普通に久しぶりと互いに声を掛けて、近況を報告し会う程度の親しさは残っていると思う。少なくとも自分はそういう態度を取る。
 それを前提に、何かの拍子にこちらの口から、彼の兄に知られたら困るような内容なのかもしれないと思った。たとえば、結局踏み込んで聞けずに居るけれど、もしも想像通りに、彼が叶わない想いを抱く相手が兄の恋人となった幼馴染だったとして、それを隠し通したいと思っているなら、兄と多少でも繋がりのあるこちらにそれを知られるのは嫌だろう。
 もしくは、本当に大事な想いは誰にも晒したくないタイプ、という可能性もあるだろうか。思えば彼の兄も本命についての詳細は隠しきっていた。内面的には似たところのある兄弟だから、だとしたら、忘れてあげるよなんて言葉はなんの意味もなさないかもしれない。
「忘れてって言えば、忘れてしまえるものなんですか」
 非難めいた口調は、嘘をつくなと言いたげだ。仕方なく、先程の言葉を訂正する。
「揚げ足取るね。それは言葉のアヤだよ。忘れてって言われたら、今後、お前含む誰かに話すことは絶対にしない。みたいな意味。誰にも言いふらしたりしない二人の秘密、ってのじゃなくて、お前自身に対しても、忘れたふり、何も知らない振りをし続けてあげるよって事」
「俺が何を言っても、なかった事にしてくれる、って事ですか?」
「そうだね。そうして欲しければ」
「本当に?」
「本当に」
 念を押すように聞かれて肯定すれば、少し考えた後でじゃあと言って口を開いた。忘れてあげるという言葉で彼の気持ちが多少なりとも動いたということは、やはり兄には知られたくないという思いが強いのだろうか。
「もし、優しくされて気持ち良くなっちゃって、名前呼んだり、ス、キ……とか言い出したり、しても、それ聞かなかったことにしてくれるなら……奥、使わなくていいから、俺の体でイッて、下さい」
 これはうっかりとか衝動とかで、幼馴染の名前を呼ばれてしまうパターンかなと思う。とは言っても、彼の兄が隠し通した本命の名前なんて、ずっと知らないままなのだけれど。もし知っていたら、彼が押しかけてきた最初、恋敵かもなどという誤解をすることだってなかっただろう。
「ああ、気持ちよくなりたくないってそういう話? 感じさせられて頭真っ白になって、何口走るか怖いから嫌だった?」
「まぁ、それも理由の一つでは、あります」
「理由の一つ、ね。まぁでも、わかった。お前が思わず何か言っちゃっても、聞かなかったことにすれば、お前に優しく触ってもいいんだな?」
「はい」
 どうしても引かなかった彼がようやく折れたようにも見えるし、話し合った結果互いの妥協点がそこになったというだけなのかも知れない。それでもまだ何かが引っかかっていて、再度彼を抱くことに躊躇いはあった。
 しかしこれ以上こちらも、嫌だダメだと言えそうにはない。
「なら、もう一回お前に突っ込むけど、いろいろ落ち着いちゃった後だから、キスから再スタートね。腕緩めて頭上げて?」
 抱っこしてあやし続けていた時間が長くて、さすがにだいぶ興奮が冷めていた。
 はいという言葉と共に、ゆっくりと肩口に押し当てられていた頭が上がる。そっと触れた唇は柔らかで、こちらを受け入れる意思を示すかのように、既に薄く解けていた。

続きました→

 
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