別れた男の弟が気になって仕方がない29

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 あなたって勘違いな思い込み激しいですよねと、やはり呆れた口調の指摘に反論出来ない。
「前に、兄の本命が俺だと思ってた、とも言ってましたし」
「言ったね。あの時も、今も、色々勘違いしてゴメンな」
 彼ら兄弟は揃って本命に関する情報を隠蔽するから、仕方がない部分だってあると思うのだけど、さすがにお前たちのせいだとは言えそうにない。そういうのは無遠慮に踏み込んでいい部分ではないと思っているし、自分から話さない事に関してはこちらからは触れずに居たほうがいいという判断も、結局は自分自身の選択だ。
「別に謝られたいわけじゃないですけど……」
 あの時も、過ぎたことだし目的は果たしたから別にいいと言っていたっけ。でも、どう見たって「けど」の続きがありそうだ。
「けど、何?」
「損な性分だな、と思って」
「はぃ?」
「性分というか、それが性癖?」
 なんか大変そうと続いた言葉に、思わず待ったをかける。
「ちょっと待って。なんか俺、今、お前に同情されてる?」
 しょうもない性癖持ちな自覚はあるが、二桁近く年下の子供に同情される謂れはないはずだ。
「別に、かわいそうとは思ってないですけど……」
「けど、何?」
「お人好し過ぎて、不安になる」
「それ、お前が不安に思うようなこと? 俺をお人好しだって言うなら、そこにつけ込んでくれていいんだけど」
「兄には見事に付け込まれたみたいですけど、でも結局兄もあなたに振られてるわけですし」
「おい待て。それは聞き捨てならない」
 誰のせいで別れることになったと思ってると言ったら、あっさり俺ですねと返ってくるから、なんだか微妙に会話が噛み合ってなくてモヤモヤする。
「話戻そう。俺がお人好しだと、何が、不安?」
 できるだけ明確にとも付け加えておく。なんせ勘違いと思い込みが激しいと指摘されたばかりだし。
「それは……変な思い込みと勘違いで、俺のためにとか言って、簡単に手を放してくれそうな所が。ですかね」
 明確にと言ったのに、それでもやはりイマイチ意味がわからず首を傾げてしまえば、なぜか拗ねた様子で、口が少しばかり突き出された。
「恋人になれって、あなたが言ったんでしょう」
「え? あ? ああ、そっか。恋人になった場合の不安、って意味……か?」
「そうですけど」
「はは。嬉しい」
「恋人になるなんて言ってませんよ。まだ」
「でもちゃんと、そうなる可能性を考えてくれてる。その不安を拭えたら、恋人になってくれるの?」
 期待を込めて聞いたのに、でも無理ですよねとバッサリ切って捨てられてしまう。
「酷いな。チャンスもくれない気?」
「性分やら性癖やらを簡単にどうこうできるなんて思ってないって話ですよ」
「じゃあどうすればいいの。どうしたらお前は俺と恋人として付き合ってみてもいいって言ってくれるの」
「幾つか聞いていいですか?」
「どうぞ。なんでも聞いてってさっきも言ったし」
「俺の好きに同じ好きを返せる気がしたって言ってましたけど、それ、恋愛感情なんですか? こんな年下の思いっきり子供扱いしてた相手に? 保護者的感情で、それこそ俺への同情がそう錯覚させてるとかじゃないんですか?」
「あー……」
 発した声は自分でもわかる程に落胆が滲んでいた。そもそもこちらの好きが信用ならないと、そう突きつけられているも同然だ。
 好きが信じられないって話かと聞けば、躊躇いがちではあったがはっきりと頷かれてしまう。
「じゃあ、もう一回セックスしてみる?」
「なんでそうなるんですか」
「お前が俺を好き、俺もお前を好き。って前提でやったら、さっきとは違うものが見つかるかもよ?」
 さっきの今なら比較もしやすいだろと言えば、嫌そうに眉を寄せただけではなく、嫌ですと冷たく言い放たれた。
「なんで?」
「き、もちよく、なった、ら頭、回んないし」
「頭で理解するんじゃなくて、俺の好きをそのまま感じてって話だけど」
「だとしても、です。あなたの本気とか、嘘とか、見分けつくわけない、し。絶対流されるだけ」
 やってる最中に恋人になれって言われたら、それだけで頷きそうで嫌だなんて、色々と可愛すぎてどうしてくれよう。
「そんなこと言われたら、逆にやるしかないなって気になるだろ。むしろそれ、最中に恋人になれって言ってくれってお願いなの?」
「違いますよっ。というかしませんよ、あなた」
「なんで言い切るかな」
「だって俺が嫌だって言ってるから」
 好きは信じないのに、そういう部分だけしっかり信頼されていることに、ズルいなぁと思いながら苦笑した。

続きました→

 
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