別れた男の弟が気になって仕方がない28

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 探るような視線に諦めのため息を小さく吐きだし、それから口を開く。
「お前の兄貴とのことだし、あんま言いたくないというか、どこまで話していいかもわかんないんだけど、要は俺の性癖の話なんだよね」
「せい、へき……?」
「そう。性癖。初めて会った時言ったろ。あいつが本当に好きなのは俺じゃないってわかってても、俺たちはそれなりに上手く付き合えてるって。それ、俺の性癖のせいなんだよ。あいつは俺の性癖を知ってて、だから俺を恋人に選んだの」
「それは、どんな……」
 当然そこは聞かれるよなと思いながら、叶わない恋をして苦しんでる子が可愛くて仕方なくて、つい慰めてやりたくなる性癖だと答えた。相手はその言葉の意味を飲み込むためか、眉間に僅かな力を込めながら黙り込んでしまう。
「つまり、あなたに対して叶わない恋をしてる俺を可愛いとか言ってるんですか? それを慰めたいから恋人になってやる、って話、ですか? 俺に、あなたへの片想いを続けながら恋人として側にいろって言ってます? 意味分かんないんですけど。もしそうしたら兄にしてたみたいに、目一杯甘やかし続けてやるって事なら、お断りです。絶対イヤだ」
 やがてそんな答えを導き出したらしい相手の気色ばんだ言葉に、思わず首を傾げてしまった。
「あれ? なんでそうなる。というかそんな理由で恋人になりたがるとか支離滅裂すぎだろ。あと、自分と兄貴とを重ねて考えるなって」
 自分相手に叶わない恋をさせたまま、恋人として付き合おうとか、それは一体どんな鬼畜の所業だ。
「だってそう聞こえたんですよ。違うんですか」
「違うよ。えーと、つまり、俺はそんな性癖持ちだから、可愛い抱きたいって思う子は誰かに片想いしてる場合が多くて、その片想い相手が自分だったって経験はなかったというか、俺を好きって思いながらそれ言い出せなくて泣いてるような子抱くのは、実のところ初めてだったわけ。付き合わないかって言ったのは、そんなお前とこれっきりなのが残念すぎるから。お前の好きに、俺も同じ好きで応えられると思ったから。だよ」
「両想いになったら、叶わない恋で苦しんでる可愛い子じゃなくなりますけど」
「そうだね。正直、お前と付き合った場合、今後俺の性癖がどう作用するかはわからない」
 自分の性癖に関してはかなり早い時期から自覚があったので、過去に恋人としてそれなりの期間付きあった相手の殆どは、セックスに於ける志向や嗜好が近いこと、人間性に好感が持てることなどを意識していて、信頼できる安全なセックスパートナーとしての面が強かった。
 彼の兄だってそうだ。遊び慣れた相手だったからこちらもそれなりに警戒したし、セックスパートナーとして信頼に足るかどうかの証明はして貰っていた。他の恋人たちに比べたら性癖に合致した分の情が強く湧いたけれど、結局相手は恋愛感情をこちらに向けては来なかったから、相思相愛的な恋愛に関しては自分だってなかなかの初心者と言える気がする。
 そしてそれを意識したら、ますますこの子を逃がせないと思ってしまった。
「だってもしお前が俺の恋人になってくれたらだけど、両想いの恋人って、俺にとっても初めてだよ?」
 ビックリした顔をするから、本当だよとダメ押ししておく。少しでも相手の気持ちが揺さぶれたらいい。
「ねぇ、俺の恋人になって?」
 さすがに今度は、絶対イヤですと即答されることはなかった。でもハイもわかりましたも返らないし、頷かれることもない。
 彼の中で引っかかっていることはなんだろう。それらをどうにかして引き出し、ひとつずつ潰して納得させていくしかないんだろう。もしくは、もう一度抱いてみるのもありだろうか。
 ちゃんと彼の想いを受け止めるつもりのセックスをしたら、さっきとは違う顔を見せるかもしれない。けれどそんなセックスを持ちかけるなら、彼を頷かせた後、はっきり恋人という関係になってからの方がいい気もする。
「あの、……」
 グルグルと考えるなか、おずおずと相手が口を開いた。何か聞きたいことがありそうだ。
「うん、何。この際だからもうなんでも聞いて」
 そして全てに納得できたら、どうか恋人になると言って欲しい。
「あなたを好きになるはずがないって思いながら、あれだけ可愛いって言いまくって抱いてくれたのは、最初っから、俺が誰かに片思いしてるとは思ってたからですか?」
「あー……それ、ね」
 正直に思っていたと告げたら、更にその相手が誰かを追求されてしまった。
「それはまぁ、その、お前の師匠だって言う、例の幼馴染を、お前も好きだったんだろうって思ってた」
 言えばやっぱりという顔をされて、どうやら呆れられたようだった。

続きました→

 
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