別れた男の弟が気になって仕方がない37

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 今日の内に恋人になってしまいたい気持ちはあるが、ここまではっきりと自分の気持ちが自覚できた以上、今日の所は諦めてもいいような気がしてきた。
 取り敢えずは連絡先を交換して、ゆっくりと相手を口説いていくのもいいかもしれない。もしまた首を縦に振ってもらえなかったら、今度はちょっと引いてみようか。
 なんてことを思いつつ相手の返事を待てば、相手は困ったように、そして少し怯えるように口を開く。その様子から、ああもう今日は無理そうだと思ったのに、けれど相手の口からこぼれてきたのは恋人となることを嫌がる言葉ではなかった。
「俺と恋人になっても、あなた、幸せになれますか?」
 あなた優しいからデートとかしてもこっちに気を遣ってばっかりになりそうだし、愛想ないし背も変わらないくらい高いし年の差あるし子供だし、可愛いって言ってくれるけどきっとそれベッドの中限定で普段は可愛げなんてあるはずないし、なんてツラツラと続いていく言葉を思わず聞き続けてしまった。
「ちょ、待って待ってストップ」
 ハッとして、慌ててそれを中断させる。
「恋人になったらちゃんとデートとかしてくれる気があるってだけで既に嬉しいんだけど、気を遣うことに関してなら、お前が楽しんでくれたり喜んでくれたらそれでいい。そうなるために気を遣うのは俺にとっちゃ当たり前で苦痛じゃない」
 第一、本当に自分ばかりが気を遣うデートになる気がしない。わかりやすくはないかもしれないけれど、相手だって彼なりに気を遣ってくれそうだし、それに気付けないほど鈍感でもないつもりだった。いやまぁそこに、勘違いの思い込みが発動しないとも限らないけれど。
「それに、お前が愛想いいタイプじゃないのなんて言われなくても知ってる。ベッドの中含めて、お前は可愛げよりふてぶてしくて図太いって感じだけど、それでもお前が可愛くてたまらない瞬間があるのは事実だし、そのうちそのふてぶてしいとこも可愛いって言い出すかもな」
 あとはなんだっけと、彼がこぼした言葉を思い返しながら続けていく。
「年の差はむしろお前が嫌がる要素だろ。心配して色々口出ししちゃって、お前にうざいって言われるの、容易に想像できる。それに、保護者気取りで子供扱いした自覚はあるけど、ガキ臭いってバカにした覚えはないし、結局はそれも俺にすりゃ可愛いなって思う要素の一つだよ」
「可愛いで何もかもが済む問題じゃないでしょう。あれこれ心配しなきゃならない子供の相手なんて、面倒だったりつまらなくありませんか?」
「つまらないどころか、あれこれ心配しなきゃならないくらい無垢な子を、自分好みに育てられるって考えたら最高だろ。もちろん、エッチなことも含めた話な。もっともっと気持ちぃ事、俺にいろいろ仕込まれちゃうかもね?」
 にやりと笑って、少々余計な事を足しつつ否定してみた。嫌そうな顔をするかと思ったら、どうやら照れさせてしまったようだ。頬をうっすら赤く染めながら、戸惑う様子が可愛らしい。
「後はー……そういやお前、背ぇ高いの何かコンプレックスあんの?」
 そういえば、大柄な男を抱くことが出来る相手を探している、だとか、こんな自分を抱ける相手なら誰でもいい、という言い方をしていたような気がする。
「コンプレックスというか、この身長で抱いて貰いたい側って、オカシクないですか?」
「いや、全然。てかお前がセックスしたいって男漁りしたら、お前モテまくるはずだよって、俺、言わなかった?」
「それ、俺が抱かれたい側ででも、ですか?」
「お前が抱かれる側での話しかしてないつもりだったけど」
 兄の遍歴をある程度知っているようだったけれど、逆に言うと、兄の話だけが彼の知るこちらの世界なのかもしれない。恋愛もセックスも避けてたって言っていたし。
「自分より小柄な相手じゃなきゃ抱きたくないって奴もそりゃいるだろうけど、逆に自分より大柄で圧倒的に男臭い相手をアンアン言わせたい可愛い系、なんてのも居るし様々だよ。要は自分がいいなと思った相手と、性嗜好が合えばいいだけの話。俺はお前を可愛いなって思いながら抱けるの証明済みなんだから、なんの問題もない」
 取り敢えずはこんなものだろうか。
 不安はできるだけ言葉にしてほしいし、言葉にされたものはなるべく全て否定してやりたいが、勢い良くあれこれ言われてしまうと取りこぼしてしまいそうで困る。

続きました→

 
 
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