別れた男の弟が気になって仕方がない36

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 さっきも片想いになること前提で抱かれたのはなぜか聞いたけれど、さすがにもうドMだからと茶化されることはなかった。
「あなたが、本気で俺を心配していたから、ですかね。簡単に体の関係を持つなって、それは凄くリスクの高いことだからって、繰り返してたから。それが事実だってことは、多分俺もわかってたから」
 だから色々考えてみたんですと、彼は言葉を続けていく。
「もし、誰でもいいという気持ちで抱かれて、その相手にスキという気持ちが沸かなかったら。他の誰かに抱かれるまでしても、気になるのはあなただったら。あなた以上に気になる誰かを探して回るのは、あなたが言うようにリスクが高すぎますよね。その誰かがすぐに見つかるかもわからないのに。そうなってからやっと、あなただから好きって認める事になる可能性を考えたら、あなたが俺を抱く気になってる今、あなたへの気持ちに決着つけてしまったほうがいいんだろうって結論になりました。あなたのことが気なる気持ちをちゃんと恋に変えて、そして失恋して、前に進まなきゃって思いました」
 今抱えてる想いに決着がつけば、次の恋に行けるって兄に言ってたでしょうと言われて、そういやあの時、リビングの扉の向こうに彼も居たことを思い出す。
 思いの外しっかりと、自分の発した言葉の多くが彼に受け止められている。
「お前、可愛すぎなんだけど」
 こみ上げる愛しさをそのまま吐き出した。
 なんだかあれこれチグハグで、でもひたすら一生懸命だった彼とのセックスを思い出す。
「なんか、頭がいいバカって感じ。ホント、可愛い。どうしよう」
 次々とあふれてくる愛しさに、どうしようもなくクフフと笑いを零してしまうせいで、相手はいたく不満げだ。
「なんかムカつくんですけど。なんなんですか」
「うん、ゴメンね。辛かったね。しなくてもいい失恋、させちゃったね」
 始める前にこれを聞き出せていたら、失恋前提のセックスなんてさせなかったのに。でもどう頑張っても、体を重ねる前の彼から、これらの情報を聞き出せた気がしない。
 今、聞き出せているのだって、しつこく食い下がってようやくという感じだし。ああ、でも、本当に、粘ってよかった。
「え?」
「したでしょ、失恋。俺がお前を引き止めたから辛うじて残してくれてるけど、俺が約束通りお前の言葉をなかった事にしたら、お前はお前が決めた通りに俺への恋を捨てたんだって、わかるよ」
「お前失恋したねって、そんな嬉しそうに言われてる俺は一体どうしたら……?」
 不満と戸惑いがせめぎ合っているような顔だ。そんな顔になってしまうのは当然だと思うのに、笑っていてはダメだと思うのに、それでも愛しさが溢れていくような状態は続いたままだった。
「そうだね。じゃあ、失恋したんだから、次の恋に進むってのはどう?」
「それ、って……」
「うん。相手は俺で」
 恋人になってと、もう何回目かわからない言葉を繰り返す。
「好きだよ。お前が可愛くて仕方ない。だから、失恋直後のお前に付け込ませてよ。お前が俺を好きだから、恋人になろうって言ってるんじゃない。俺がお前を好きだから、恋人になって。俺を、もう一度、好きになって」
 こんな風に誰かを口説くなんて初めてだった。しかもそれが九つも年下の、子供扱いして保護者面で心配していた相手だなんて、本当に不思議で仕方がない。不思議で、たまらなくドキドキする。
 可愛いとか愛しいとか思う相手はたくさんいたけれど、彼らが見ていたのは自分ではないとわかっていたし、その想いのベクトルを無理矢理自分に向けようと思ったことはない。一途に誰かを想っている姿がいじらしいのであって、セックス一つで簡単に気持ちがこちらに向いてしまうような相手を、可愛いとか愛しいと思い続けることは出来なかったから、失敗して揉めたこともないわけじゃないし、一時的な慰めを与えるときは随分と慎重にもなった。
 何度かは恋人も作ったけれど、恋人というのは信頼できるセックスパートナーのことで、恋愛の真似事を楽しむことはしても、好きで愛しくてたまらないから恋人になってくれなんて言って始まった相手は居ない。

続きました→

 
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