どれだけ準備を重ねていたのか、その場所は簡単に指を飲み込んでいくし、相手も明らかにその場所を弄られることで感じ始めている。だから、柔らかに指を締め付けられながら、つい一人で慣らしてる姿を想像してしまうのは多分きっと仕方がない。
あー勿体無い。というか出来れば自分の手でここまでしたかったとか、でも四月になったらすぐ出来るようにって考えてくれてたの嬉しいとか、自分で慣らしちゃおうっていう思考がバカ可愛すぎるとか、せめてそれ見たかったとか、あーでも自分でする所はそのうち頼み込んだら見せてもらえるかも知れないとか。更にそこへ、目の前に投げ出されている相手の姿態や鼓膜を震わせる甘い声に対する、エロいヤバい可愛いエロいシコイ可愛すぎてヤバいチンコ破裂するヤバいエロい、などというアホ丸出しの思考が混ざりこんで、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
頭の中が沸騰しそうに熱くて、鼻血を吹き出さないのがいっそ不思議なくらいだった。
あッアッと聞こえる甘い声に混じる、ハッハッと荒い息遣い。せっかくの可愛い声を邪魔する煩くてウザいそれが自分のものだと、始めはわからなかった。
あ、これ、自分の息だわ。気付いた瞬間、慌てて口を閉じてみる。途端に耳の中がクリアになった。けれど甘い声を堪能出来たのはほんの僅かな時間だった。
「ど、した?」
何かを感じ取ったらしい相手が、喘ぐのを堪えて訝しげにこちらを眺めてくる。
「どーもしないけど」
「嘘」
へらっと笑って誤魔化して、思わず止めていた指の動きを再開させようとしたところで、それを許さない響きを持った声が嘘だと断言した。
「何か、あっただろ?」
「いや、ほんと、大したことないから」
「気になるって」
口を閉じたということが、そんなにも気にされる要素になるとは思わなかった。まぁでも、気になるってなら正直に言ってしまえばいいんだろう。こんなの隠す意味もない。
「いやそんな真剣になられても……たんに自分の息が煩いなって思っただけだって。で、口閉じればいいんじゃーんって気付いただけなの」
お前の声だけ聞きたかったのと付け加えたら、相手が照れくさそうに頬を染めていくからますます可愛い。
「それだけ?」
「そう。それだけ」
「な、……んだ。ビックリ、した」
「それで、お前的には何が起きたと思ったわけ?」
「別に、何も……」
口ごもる相手に、嘘だと断言してやった。
「今度はお前が正直に言う番。何が不安になった?」
「それは……その、急に、自分の声だけになって、しかもなんか随分甘ったるい声出してるな俺って思ったら、その……覚めたのかなって、思って」
「さめるって、何に?」
「俺に」
「ごめん。ちょっと意味わかんないかも」
もうちょっと詳しくと言ったら、小さな溜息を吐き出して、怒らないでよと念押しされた。怒るようなことなのか。とは思ったけれど、理由によっては怒るなんて言ったら絶対に言わないのはわかっているから、聞き出すには怒らないよと返すしかない。
「おこんねーよ」
「じゃあ言うけど、女みたいな声出して喘いでる俺に呆れたのかなって思ったの。告白してきたのお前だし、ヤりたいと言いだしたのもお前が先だけど、お前別に元々男が好きって奴じゃないよね? 俺以外の男に欲情したりしないよね? 何かが狂ってたまたま俺が対象になっただけだよね? だから、ここにきて唐突に正気に返ったのかも、って思って……」
「バカか!」
思わず怒鳴ってしまった。相手の体がビクッと震えて、怯えられたのだとわかって焦る。
「あーいやゴメン。バカなのは俺かも」
深呼吸して、埋めていた指を一度抜いて相手の体を引き起こした。
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