全く気づかなくてごめん、という気持ちで口にしたそれは、けれどあっさり否定されてしまった。
「いや別に、そんな苦労はしてきてないから、気にしないで」
「いやだって、気にするな、っつってもさ。しんどいだろ。親から無関心とか、金さえ出しゃいい扱いとか」
うちのように妙なライバル心を子供に植え付けるのも大概どうかとも思うけれど、お前なら出来るという、親からの期待やら信頼やら愛情やらを感じていなかったわけではない。従兄弟との差をこちらが歴然と感じて居る中でさえ、息子を信じ切って、お前にだって出来ると言い続けるタイプなのだ。能力差を直視できない愚かさは感じるし、親自身の見栄だのプライドだのに付き合わされていたとも思うけれど、そこに親の愛なんてなかったと言うつもりもなかった。
「別に。慣れだよ、そんなの。親がそういうタイプって、年齢一桁で気づいてた上に、わざわざ困らせて親の愛情はかったこともない、ホント可愛げのない子供だったしね。だからかな。子供の頃、お前が俺にライバル心むき出しに執着してたの、嬉しかった面もあるんだよな」
「嬉しかったとか初耳なんだけど。というか、そもそもこっちが一方的に張り合ってただけで、友達でもなかったし、なんつーかあまり俺らに接点なかったよな?」
「接点なかったけど、お前が俺を意識してるのは感じてたよ。俺がお前の上に立ち続ける限り、お前は俺を意識し続けるんだ、ってわかってたからこそ、維持し続けた成績と周りからの評価、って部分もあるから、中学生辺りなんかは俺の成績支えてたの、実は主にお前」
「は? なんだそれ」
今だから言うけど、なんて言いながら暴露される話には驚くばかりだ。
「嫌われてるのわかってたし、なんで嫌われてるかもわかってたし、でもお前の執着を俺に向けさせとくにはお前の先を走り続けるしかなかった、って話」
「俺のことなんか、眼中にないかと思ってた」
「いやだって、お前との友好的な関係なんてはなっから諦めきってたし、どう接すればいいのかわかんなかったんだって。せっかく従兄弟で近所に住んでるんだから、もっと仲良く出来たらいいのに、って気持ちはあったけど、でも仲良くなった結果、お前の執着がなくなるのも嫌だった。ってのもあるけど」
「マジか……ってか、お前、俺よりたくさん友達いたし、だいたいいつも話題の中心にお前がいたし、彼女だっていて、なのに俺に執着してて欲しかったとか、意味わかんないんだけど」
俺を喜ばせようとしての嘘なら要らない、と言えば、今更嘘なんか言わないし本気で嘘だって思ってるのかと真顔で聞き返されてしまう。
「嘘言われてるとは思わないけど、そうだったんだ、って信じられる話でもない」
「自分が快適に生活するために上手く立ち回った結果、としての友人だったり彼女だったりだったから、俺の周りなんて、外から見るほどの親しさも信頼もないハリボテだよ。お前と恋人関係になる少し前のこと、思い出せよ。俺とつるんでた奴ら、あっさり俺から離れてったろ」
大学に入ってからはそこまで友人を作ってないのも、彼女を作らなかったのも、必要がなくなっただけ、ということらしい。
「地元はさ、なんだかんだで周りの目が煩かったのもあるし。沢山の友人も、親が嫌な顔をしないタイプの彼女も、親の信頼を勝ち取るために必要だったから作ってた」
「そんな付き合いしかないの、寂しくない?」
「さぁな。そういうもんだと思って生きてりゃ、寂しいなんてなかなか感じられないよ。でも自覚はできなくても、こんだけ必死にお前を落としたこと考えたら、寂しいって気持ちはあったんだろなって思うよ」
必死にお前を落とした、という言葉に、キュウっと心臓が締め付けられる思いがした。
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