いつか、恩返し(目次)

キャラ名ありません。全35話。
同じ市内在住の同い年な従兄弟。メインは大学時代の4年間。
幼い頃から視点の主は従兄弟と競い合ってきたが、高校入学後に力量の差を認めて謝罪。その後、家庭の事情から従兄弟に同じ大学の同じ学部学科へ入学して貰うことになり、そこで大きな借りができる。
親元を離れた大学生活中、従兄弟と恋人ごっこをしたり、従兄弟に恋愛的な意味で好かれてると知ったり、従兄弟の誘いに乗ってセックスしたりで、最終的にはごっこをはずした恋人になります。
視点の主は好奇心旺盛で、その好奇心に付け込まれるような形で抱く側も抱かれる側も経験しますが、描写は抱く側の方が多め。
恋人ごっこを開始する前、視点の主は彼女持ちで非童貞。従兄弟は高校時代に彼女が居たけれど童貞。後ろはどちらも非貫通です。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 一緒の大学へ行こう
2話 従兄弟のゲイ疑惑
3話 形だけの恋人
4話 お酒解禁
5話 従兄弟の好きな子
6話 今後も今まで通りで
7話 試していいよ
8話 どっちでもいい
9話 便利な言葉「好奇心」(R-18)
10話 もう挿れて(R-18)
11話 きっと好奇心ではない(R-18)
12話 憐れで、健気で、愛おしい(R-18)
13話 優越感と見下し
14話 可愛いと繰り返す
15話 交代
16話 童貞なんて聞いてない(R-18)
17話 集中させて(R-18)
18話 抱く側でも可愛い(R-18)
19話 相互アナル弄り(R-18)
20話 背面騎乗位(R-18)
21話 チャレンジ(R-18)
22話 炒飯とスープ
23話 微妙に噛み合わない
24話 win-winな関係
25話 嬉し泣き
26話 好きを言う理由
27話 もう少し、このままで
28話 大学卒業後の進路
29話 欲しかったもの
30話 卒業後は同棲決定
31話 今だから言える
32話 親近感
33話 そろそろ知ってて
34話 恩を返すために
35話 抱き潰された(R-18)

 
 
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いつか、恩返し35(終)

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「執着逆転してるって話もしたし、同じ学部学科選んだのもお前のためだけじゃないし、お前が俺に恩を感じてるって言うから、それも存分に利用してきたわけ。つまり、本気で恩を返せなんて言える立場じゃないんだって」
 むしろ俺がお前に恩返ししたいくらいだよ、なんて言いながら顔が寄せられて、ちゅ、と唇を吸っていく。
「お前は無自覚と言うか実感ないだろうけど、お前が俺にくれてるもの、お前が思う以上に多いから。子供の頃からずっと、いろんな形で、お前に支えられてきてる。さっきちらっと話した程度じゃ、ホント、伝わってないと思うけど」
 だからさ、と言葉を一度区切った相手の手に促されて両足を開けば、先程下着まで剥ぎ取られて剥き出しな下半身の隙間に相手の手が差し込まれてくる。もう片手にはローションボトルが握られていて、器用に蓋を外すと、中身を差し込んだ手の平に流し落としていく。
「で、だから、の続きは?」
 くちゅくちゅと湿った水音をたてて慣らし始める相手に、しばらくは黙って従っていたが、途切れたままの言葉の先が気になって問いかる。
「んー、だから、俺が今、お前に恩を返せっていうのは、お前が恩返ししなきゃって思い続けてるから、そろそろそれを終わりにしようってだけなんだよね、って話?」
 恩返しなんか要らないって言うより、恩返しって名目で何かして貰うほうが、お前的にスッキリするんじゃないの、と続いた言葉は確かに的を得ている。つまり、これで恩を返し終わったという気持ちの区切りを、つけてくれようとしているだけらしい。
「あー、うん、その、ありがとう?」
「ここでありがとうが出てくるの、お前も大概、可愛いからね?」
「いや、可愛さはお前のが格段に上」
 張り合うように言い切れば、どっちがより可愛いかなんて話じゃないのにと、おかしそうに笑われてしまった。
「お前に可愛いって言われるのも嬉しいんだけど、でも今日は、いつものお前以上にお前を可愛いって言うつもりだし、思いっきり可愛がるから」
 覚悟してよねと言われて、そういや抱き潰したいって話だっけと思い出す。わかったと頷けば、すっかり快感を得ることを覚えてしまった前立腺を、楽しげにグニグニと押し揉まれて、嬌声をあげながら体を跳ねた。


 決して相手の本気を疑っていたわけではないのだけれど、結果、見事に抱き潰されて、目覚めになんだか呆然とする。なんか、色々と凄かった。一方的に、やや強引に、何度となく快感を引きずり出されて、叩き込まれて、体も頭の中もバカみたいにキモチイイだけになって、いつ行為が終わったのかも覚えていない。
「なんか、随分ぼんやりしてるけど、大丈夫?」
「あー、うん」
 こちらが目覚めたことに気づいた相手が心配そうに声をかけてくるが、呆然とした気持ちは抜けないまま、曖昧な返事を返してしまう。
「大丈夫じゃなさそう。てかまだキモチイイに浸ってたりする?」
 雰囲気がエロいと苦笑されながら、優しい手付きで頬を撫でられれば、うっとりと目を閉じそうになる。気持ちがいい。
「なぁ、」
「うん、何」
 結局目を閉じてしまいながら相手に呼びかければ、甘やかすようなとろりとした声音が返ってくる。その声にも、思い出して体の奥のほうが疼く気がした。
「はは、凄っ」
「何が?」
「お前の好きを、徹底的に叩き込まれた、って感じがする」
「叩き込んだ、で間違ってないと思うけど」
 肯定されて、思わず笑う。確かにそうだ。あれはそういうセックスだった。
 再度眠りを誘う気持ちよさに抗い、どうにか目を開け体を起こす。体のあちこちが軋む気がして眉を寄せれば、すぐさま心配そうな声が大丈夫かと問うてくる。
「体は平気だけど他がやばい」
「他?」
「ああ、色々と凄い。やばい」
 まるで要領を得ない発言に、相手も何かを感じ取ったらしい。
「もしかして、それは俺にとって嬉しい話?」
「多分」
「ならいいや。何か、して欲しいこととかあれば言って」
「俺もお前を抱きたい」
「ダメとは言わないけど、さすがに今すぐは無理じゃないの」
 疲れ切ってるでしょと言われて、そういう意味じゃないと返す。
「俺も、お前を抱き潰すみたいなセックス、したい」
「ああ、うん。もちろんいいよ。今度ね」
 あっさり了承されて拍子抜けもいいところだ。
「本気で?」
「だって嫌がる理由がない」
「でも俺に好き勝手させる理由もないだろ」
 だってこちらは、恩返し代わりに抱き潰されるのを了承したのだから。色々と凄い体験ではあったし、気持ちのいい思いはたくさんしたし、不快な思いをしたわけではないけれど、酷い目にあったという気持ちも無いわけじゃない。
 しかし相手は納得した様子でそういう話かと言った後。
「むしろ俺が恩返ししたいくらいだ、って言ったろ」
 だから俺にも恩返しさせてよと笑う顔はなんとも幸せそうで、今すぐ押し倒せないのが残念でならなかった。

< 終 >

 
 
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いつか、恩返し34

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 最初にベッドへ行こうかと誘われた時、間違いなく、自分は相手を抱きたい意味で可愛いと口にしていた。相手だって、それをわかっていて、ベッドという単語を出したものだとばかり思っていた。
 しかし今現在、押し倒されたベッドの上で、楽しげな顔の相手にズボンと下着とを剥ぎ取られている。
「俺が抱く側、のつもりだったんだけど」
 本気で抵抗してはいないし、既に双方、今回の役割は決まったと思っているのだけれど、それでも、当初の予定と違うということだけは伝えて置きたくて口を開く。
「知ってる」
「どこで変わった?」
 会話の途中で、今日は抱く側をしたいと思うような何かがあったんだろう。そう思って聞いたのに。
「最初に誘った時からだよ。強いて言うなら、お前が、恩を返せって言ってでも、卒業後も恋人で居続けたいって言うつもりだったのか、って聞いた時から」
「つまり、強引に奪い取らずに叶ったのが嬉しくて?」
「それもあるけど、どっちかって言ったら、お前の中に残ってる俺への恩、いい加減返して貰おうかと思って」
 そんなものなくってもお前はもう俺から離れていったりしないだろうから、お互い長いことなんとなく背負い続けてた負い目だの恩だの精算して、卒業後は対等な、ただの従兄弟で友人で恋人な俺たちで過ごしたい。と言った相手の主張に頷くのは構わないのだけれど、ベッドの中で返す恩とは一体何だという疑問は残る。しかもこちらが抱かれる側でだ。
「普段の俺ならノーって言いそうなこと、恩を返せよって言ってやる気でいる?」
 一体どんな抱き方をする気だとこわごわ聞けば、お前がノーって言うようなプレイ思いつかないと返されて、確かにと思いながら思わず唸る。
 好奇心を刺激されながら、こういうのやってみないかと提案されたら、喜んで応じてしまうだろう自覚はあった。相手が提案してくるのであれば、安全性などはそれなりに保証されていると思っていい、という信頼も大きい。
「出来るかどうかは置いといて、抱き潰す、つもりで抱きたい」
「ああ、」
 わかる、と言いそうになって慌てて口を閉じた。どうしたって相手の体を気遣うから、あまりむちゃなセックスはしたことがない。むちゃなというか、長時間に及ぶプレイと言うか、何度も相手を一方的に果てさせるというか。それはどちらが抱く側でもだ。
 出来れば同時に果てたい、という気持ちは相変わらず持っていて、基本的には、お互いに一度ずつ果てたら一回終了で休憩を入れるし、だいたいはその一回で終わってしまう。二回目をやることがないわけではないが、その場合は立場を入れ替えて、って事が多かったように思う。つまり、どちらかが逆側もしたい、って思った時は二回目がある、という感じだった。
 連休だとか長期休暇中だとかに、部屋にこもってセックス漬け、みたいなことは経験があるけれど、あの時だって、充分な休憩を挟みながら、適度に立場を入れ替えながらで、もうしばらくセックスはいいって思うくらいにやりまくったのは事実でも、相手を抱き潰すような激しい行為は一切なかった。
「俺をお前の好きなように抱く、ってので、本当にお前への借りは全部チャラ?」
「そう」
「正直言えば、親から切られた俺の立場でお前に同棲申し込むってのも、またお前への借りが増えるなって感じなんだけど」
「あーもう、ホント律儀だなぁ。俺だってお前が一緒に住んでくれることで得られるもの大きいと思うから、それはもうお互い様ってことでいいんじゃないの。というかさ、さっき散々、俺が子供の頃とかお前が謝ってきた後の高校時代のこととか話して聞かせたのに、恩を返してってのに素直に応じようとしてんのも、割と驚いてるからね?」
「ん?」
 どういう意味だと彼の言葉を脳内で反芻しようとしたところで、呆れた様子の溜め息と共に、お前が返さなきゃならない恩なんてないって言ってんだと告げられた。

続きました→

 
 
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いつか、恩返し33

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 焦ってたようには全く見えなかったと言えば、笑って、絶対知られたくなかったからと返ってくる。
「つまり、今ならもう、知られても良くなった?」
「そうだね。そろそろ知ってて貰ってもいいかなって」
「大学卒業するから? それとも、俺が親に縁切り宣言されたから?」
「どっちも。あと、お前が卒業したら同棲しようって言ったから」
 お前からそう言ってくれたの本当に嬉しいんだと笑ってみせる顔は、確かに嬉しそうだった。
「でもお前、それずっと狙ってたわけだろ。手に入って当然の結果じゃないんだ?」
「そりゃ努力が実った、とは思ってるけど。でもずっと狙ってたはちょっと違う。狙い始めたのなんて、お前とセックスするような仲になって随分経ってからだよ」
 お前が俺をどんどん受け入れてくから、だんだん卒業後もこのままでいられないかなって欲が出たんだと続けた彼は、大学の4年間はなるべく互いの親抜きで、お前との関係を見つめ直すための時間だと思っていたと言う。
「俺はお前を、恋愛的な意味も含んで気になっているんだろうって、高校時代には自覚してたけど、でもお前と恋人になりたいとまでは思ってなかったし、なれるとも思ってなかったんだ。仲の良い友人、もうちょっと言うなら親友と呼べそうなくらい、お前に近づきたかっただけでさ」
 お前が謝ってきた時点で執着は完全に逆転してんだよねと、なんだか申し訳なさそうに苦笑されて、そういえば執着されていたかったって話だったと思い出す。
「俺が親の言いなりにお前と張り合うの諦めたから、俺からの執着を取り戻そうとして友達になろうとした、って感じではないよな?」
 だって友達って、執着し合うような関係では無い気がする。少なくとも、彼に向けていたライバル心と、その他の友人たちに向かう友情は全くの別物だった。
 執着を取り戻そうとしたのなら、最初から恋人狙いだった方がまだわからなくない。恋人という特別な相手への関心の方がまだ、彼へと向かっていたライバル視に近い気がする。
「執着を取り戻そうとはしてないね。お前が俺への執着を捨てるのは、お前にとっていいことだって判断は出来てたし。ただ、ずっと意識されてたのに、それがパチンと一瞬で切れてなくなるのが、怖かったんだよ。だからお前が謝ってきた後、俺の方から話しかけたり、謝られたんだからもう気にしてないって素振りで、かなり友好的に振る舞ったろ」
「ああ、まぁ、確かにそうだった。お前いいやつなのに、親の刷り込みで嫌な奴って思ってただけなんだなぁって、思った記憶あるわ」
「お前のそういうとこ、ホント、好き。てか、お前がそう思ってくれてるっぽいのわかってたし、ホッとしたし、それで好きになったとこある。同じ大学行って、ちゃんと関係作り直したら、一生モノの友人ってやつが俺にも出来るかも、とか思ったよね」
 結果は恋人だけどこれも一生モノになるといいよね、とこちらの反応を窺うように言うので、そうだなと同意を返してやる。そこまで先を含めて、卒業後に同棲という話を持ちかけたわけではないけれど、別に一生彼との恋人関係が続いたって構わない。
 あからさまな安堵と共に嬉しそうに笑った相手に、ねぇもうベッド行こうよと誘われれば、もちろん嫌だなんて言うはずがなかった。

続きました→

 
 
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いつか、恩返し32

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「だから、俺に執着しててほしかった?」
「そうだね。高校一年の時、お前に謝罪されて凄くホッとしたし嬉しかったのも事実だけど、どうしようとも思ったからね」
「そういや、ずっと嫌われてて寂しかったとか言ってなかったか、あの時」
「そんな事言ったんだっけ」
 絶対言ったと言えば、確かに言ったねと苦笑するから、決して忘れてしまったというわけでもなさそうだ。
「寂しいなんてなかなか感じられないよ、って」
 言ったばっかだけど、という言葉を遮るように、言われると思ったと言って、相手は苦笑を深くする。
「なんていうか、お前は昔っからやっぱちょっと特別なんだよ」
 一度言葉を区切り、少し迷った後で、嫌な話になりそうだけど聞くか、と問われた。
「嫌な話って、どんな感じの?」
「お前のとこの親子関係とか。俺が、昔のお前を、お前の親を、どう見てた、とか」
 嫌な話、と前置いたってことは、当然批判的な話をされるってことなんだろう。でも、批判されて当然のことをしてきたと思っているし、もしこちらが嫌な思いをするだろうからと飲み込んでくれていただけなら、この機会にちゃんと聞いておきたいと思った。
「あー、うん。言っていいよ。知りたい」
「じゃあ言うけど、従兄弟ってのもあったし、俺とは違う意味で、お前が親の犠牲になってる様に見えてたんだよ。うんと小さな頃は、なんで従兄弟なのに仲良く出来ないんだろ、とか、なんでこんなにライバル視されて嫌われてるんだろって思ってたけど、ある程度年齢が行けば背景にも目が行くようになる。お前が俺を嫌うのはお前の親が原因で、お前を俺にけしかけてるのもお前の親なんだって、わかっちゃうよね。正直言えば、悪いけど、俺はお前の親を嫌ってる」
「いや、それは嫌って当然だろ」
「実は、お前と同じ学部学科にした理由の一つに、お前の親がうちの親に張り合って、学費も生活費もきっちり出してくるの見越して、ってのもある。お前んちの方が経済的にキツイのもわかった上で」
「ちょ、待って。つまりそれ、うちの親への嫌がらせも含んでた、とかいう話?」
「まぁ、そういう話だね」
 あっさり肯定されて思わず笑った。理由なんてどうだっていい。それによって、自分が快適な大学生活を送れた事実は変わらない。
「俺のために同じ学部学科にしてくれたと思ってたけど、まさかそんな理由も込みだったとは思わなかった」
「お前のために確保した学費と生活費だよ。嫌がらせって面もあった、ってだけで」
「うん。大丈夫。わかってる。というか、俺、もしかしてお前に相当同情されてたりした?」
 さっき親の犠牲になってるように見えていた、と言っていたし、その可能性はありそうだ。優越感と見下しでお前のことを可愛く感じる、なんてバカ正直に言ってしまう自分とは違う。同情してる事実があっても、こちらが不快に感じるだろうと、それを隠しきってくれていたのかもしれない。
「そりゃ、同情が全くなかったわけではないけど。お前が親に逆らえなくて、必死に俺を追い抜こうと足掻いてるの、可哀想だなって思うこともなくはなかった。でも、結局は俺自身、それを利用してた部分があるからさ」
 さすがにそれを同情と呼ぶ気にはなれないよね、と続けたということは、もっと違う別の感情があるらしい。
「同情じゃないなら、何?」
「お前に対して感じてたのは、どっちかというと親近感」
「親近感?」
「そう。同一視というか、お前のとこの親子関係とうちの親子関係はだいぶ違うんだけど、それでも、お前を自分に近い存在として見てた」
 さっき、謝罪された時にどうしようとも思ったって言ったろ、と言うので、言ったなと返せば、お前が自分自身で親と決着つけて開放されてしまったら、俺だけ取り残されるのかって思ってさすがに焦った、などと言い出すから驚く。記憶の中、そんな様子が欠片だって見つからないからだ。

続きました→

 
 
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いつか、恩返し31

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 全く気づかなくてごめん、という気持ちで口にしたそれは、けれどあっさり否定されてしまった。
「いや別に、そんな苦労はしてきてないから、気にしないで」
「いやだって、気にするな、っつってもさ。しんどいだろ。親から無関心とか、金さえ出しゃいい扱いとか」
 うちのように妙なライバル心を子供に植え付けるのも大概どうかとも思うけれど、お前なら出来るという、親からの期待やら信頼やら愛情やらを感じていなかったわけではない。従兄弟との差をこちらが歴然と感じて居る中でさえ、息子を信じ切って、お前にだって出来ると言い続けるタイプなのだ。能力差を直視できない愚かさは感じるし、親自身の見栄だのプライドだのに付き合わされていたとも思うけれど、そこに親の愛なんてなかったと言うつもりもなかった。
「別に。慣れだよ、そんなの。親がそういうタイプって、年齢一桁で気づいてた上に、わざわざ困らせて親の愛情はかったこともない、ホント可愛げのない子供だったしね。だからかな。子供の頃、お前が俺にライバル心むき出しに執着してたの、嬉しかった面もあるんだよな」
「嬉しかったとか初耳なんだけど。というか、そもそもこっちが一方的に張り合ってただけで、友達でもなかったし、なんつーかあまり俺らに接点なかったよな?」
「接点なかったけど、お前が俺を意識してるのは感じてたよ。俺がお前の上に立ち続ける限り、お前は俺を意識し続けるんだ、ってわかってたからこそ、維持し続けた成績と周りからの評価、って部分もあるから、中学生辺りなんかは俺の成績支えてたの、実は主にお前」
「は? なんだそれ」
 今だから言うけど、なんて言いながら暴露される話には驚くばかりだ。
「嫌われてるのわかってたし、なんで嫌われてるかもわかってたし、でもお前の執着を俺に向けさせとくにはお前の先を走り続けるしかなかった、って話」
「俺のことなんか、眼中にないかと思ってた」
「いやだって、お前との友好的な関係なんてはなっから諦めきってたし、どう接すればいいのかわかんなかったんだって。せっかく従兄弟で近所に住んでるんだから、もっと仲良く出来たらいいのに、って気持ちはあったけど、でも仲良くなった結果、お前の執着がなくなるのも嫌だった。ってのもあるけど」
「マジか……ってか、お前、俺よりたくさん友達いたし、だいたいいつも話題の中心にお前がいたし、彼女だっていて、なのに俺に執着してて欲しかったとか、意味わかんないんだけど」
 俺を喜ばせようとしての嘘なら要らない、と言えば、今更嘘なんか言わないし本気で嘘だって思ってるのかと真顔で聞き返されてしまう。
「嘘言われてるとは思わないけど、そうだったんだ、って信じられる話でもない」
「自分が快適に生活するために上手く立ち回った結果、としての友人だったり彼女だったりだったから、俺の周りなんて、外から見るほどの親しさも信頼もないハリボテだよ。お前と恋人関係になる少し前のこと、思い出せよ。俺とつるんでた奴ら、あっさり俺から離れてったろ」
 大学に入ってからはそこまで友人を作ってないのも、彼女を作らなかったのも、必要がなくなっただけ、ということらしい。
「地元はさ、なんだかんだで周りの目が煩かったのもあるし。沢山の友人も、親が嫌な顔をしないタイプの彼女も、親の信頼を勝ち取るために必要だったから作ってた」
「そんな付き合いしかないの、寂しくない?」
「さぁな。そういうもんだと思って生きてりゃ、寂しいなんてなかなか感じられないよ。でも自覚はできなくても、こんだけ必死にお前を落としたこと考えたら、寂しいって気持ちはあったんだろなって思うよ」
 必死にお前を落とした、という言葉に、キュウっと心臓が締め付けられる思いがした。

続きました→

 
 
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