いつか、恩返し7

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 生まれたときから付き合いがある従兄弟なのに、辛うじて友人と呼べそうな関係になったのは高校に入ってからで、それ以前の、今となってはやや黒歴史な一方的ライバル時代を全く引きずっていないとも言い切れず、今もまだ、はっきり友情とはいい難いような想いを抱えている。胸を張って、彼のことを友人だとは言い切れないのだ。
 そんな相手と、成り行きで形だけの恋人になった。つもりだったのが、相手にとっては形だけの恋人ではなく、好きな子との恋人ごっこだった。らしい。
 しかも、恋愛的な意味で好きになって欲しいとは言う気がなくて、このまま恋人ごっこを続けられればいいんだそうだ。
 けれど、今まで通りでなんて言われたって、それを知ってしまった以上、相手の想いをまるっきり無視なんて出来ない。気にしないようにしていても、ふとした瞬間に、相手は自分を好きなんだと思ってしまう。意識してしまう。
 結果、男同士での恋愛だとか、セックスだとかを、興味の赴くまま調べてしまった。だってもし、相手の気持を受け入れた上での恋人になるなら、キスだってその先だって、するようになるかも知れないんだから。
 つまり、結論はもうほぼ出ていると言っていい。
 キスやその先をするようになるかも知れない、と考えた時点で絶対無理だと思ったなら、調べる必要なんて無い。というよりもそこで嫌悪感があったら、調べるって行為自体も無理だろう。要するに、自分には相手の気持ちを受け入れる用意があって、相手に求められたら行為にだって応じるだろうって事だ。
 今まで通りで、と言っている相手に対して、なんで自分の方が先にその気になってんだ、という自覚というか困惑はもちろんあった。そしてそんな自分の困惑に、どうやら相手も気づいている。
 それは自宅で一緒に夕食を食べて、そろそろ帰るという相手を玄関先まで送った時のことだ。じゃあまたと言いあって、背を向け出ていく相手を見送って、施錠する。という一連の流れの中の、最初の部分で躓いた。
「じゃあ、……」
 躓いたのは自分ではなく相手の方だ。こちらの顔をジッと見たかと思うと、こちらが焦れてなんだよと口に出す直前に、クスッと笑いをこぼす。
「またねのちゅーとか、してみる?」
「は?」
「最近お前、もうちょっと恋人っぽいことしてみてもいいのに、って思ってるだろ? ああ、でも、いきなりキスはハードル高い?」
 ハグくらいから試そうかと言いながら、目の前の男が大きく腕を広げてみせる。黙ってその腕の中に一歩進んで、自分から先に相手の背を抱けば、すぐに自分の背中にも相手の腕が回された。
 嫌悪はないが、酷く不思議な感じがした。腕の中の硬い感触も、背に当てられた大きな掌も、ふわっと香った何かにも。ときめきや興奮とは言い難い、不可解なドキドキが身を包んでいる。
 そんな中、腕の中で相手が楽しそうに小さく身を揺する。クスクスと笑っている。
「今まで通りの恋人ごっこができればいいよ、って言ったのに。お前、まんまと俺の策に嵌ってる自覚、ないだろ」
「さく、って?」
「俺が本気でお前を好きって言ったら、お前は俺と恋人になれるか、もっと言うならキスしたりセックスしたり出来るか、考えるだろ。考えて、調べて、できそうって思ったら、お前は試してみたくなるタイプ」
 出来そうって思ったなら試していいよと、耳元で甘やかな声が囁いた。

続きました→

 
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