いつか、恩返し29

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「ああ、でも、会社の寮に入るとか、保証人代行とか、保証人不要物件とか探せばいいのか……?」
「ちょ、待ってって。先走んなよ。お前が言う通り、親に頼れなくたって部屋借りる方法は色々あるけど、それを考えるのはお前が俺の申し出を蹴った場合な」
 申し出ってなんだと言いかけた相手の言葉を遮るように、一緒に住まないか、と告げる。
「……えっ?」
「引っ越し、するんだろ? そんときちょっと広めのとこ契約して、ルームシェアとかって無理?」
 従兄弟本人が了承したって、従兄弟の親がどう判断するかはわからないけれど、まずは従兄弟自身の承諾が必要だ。
「本気、で?」
「うん。まぁ本音はルームシェアってより同棲だけど」
「ど、ぅえっ、えっ」
 嫌がられてる感じではないけど、めちゃくちゃ動揺させてしまった。
「元々、お前の受験終わったら相談するつもりだった。親に縁切りされたからってんじゃなくてさ」
「あのさ、それって、大学卒業しても俺と恋人続けるって意味でいいわけ?」
「は?」
 全く想定外の質問に、間抜けな声を出してしまう。きっと声だけじゃなく、間抜け面を晒しても居るだろう。
 そんなこちらの態度に、相手は慌てた様子で口を開いた。
「だって同棲って、そういうつもりじゃなきゃ出てこない単語じゃないの」
 そりゃそうだ。そういうつもりだったに決まってる。でも相手はそうじゃなかったんだってことに、気づいてしまった。
「なぁ、もしかして、卒業したら終わりなつもりだった?」
 確かに、ただの恋人ごっこのままだったなら、卒業を期に恋人のふりなんて止めただろう。色々と面倒そうだから在学中は従兄弟の恋人でいいか、というつもりで従兄弟の恋人に収まったのも事実ではある。でもそんなの、とっくに翻っている。というよりも、今はもう、自分たちの関係が恋人ごっこだなんて欠片も思っていない。
「まさか。俺から終わらせるなんて、するはずないだろ」
 まさかはこっちのセリフだ。まさか、否定されると思わなかった。
「てことは、俺に終わりなって言われる気だった?」
 これはこれで、肯定されたら結局ショックを受けそうだ。
 始まりは確かに成り行きの恋人ごっこだったかもしれないけれど、こちらの想いがちゃんと育っていることを、相手は知っているのだから。言ってくれたらもちろん嬉しいと言われてから先は、好きだの言葉だってそれなりの頻度で口に出してきた。ちゃんと、想いは伝えてきたはずなのに。
「正確には、言わせない気だった。というかさっきのはただの確認」
 良かったと笑う顔は、随分と安堵に満ちている。
「大学卒業までに、お前に、卒業した後も恋人続けようって、思って貰えたらいいなって、ずっと、思ってた。そして、そうなるようにって、動いてたんだよ」
 実ったと笑った今度の顔は満足げだ。その顔と、しみじみと言い募る様子で、以前交わした会話を思い出す。
「あ、じゃあ、もしかして、前に俺から差し出して欲しいって言ってたのって」
 もう待てないと思ったら強引にでも、恩を返せよって言ってでも、彼が欲しいと思っていて、でも出来ればこちらから差し出して欲しかったものってのは、つまり。
「ああ、うん、そう。これ。大学卒業で終わりにならない、お前との関係」
「最悪、恩を返せよって言ってでも、俺と恋人で居続けたいって?」
「そうだよ」
 もう叶ったからなんとでも言えと、拗ねたみたいに少しばかり口を尖らせて見せるから、その唇に吸い付きたいなと思ってしまった。

続きました→

 
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