いつか、恩返し14

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 結局、彼が一番問題にしたのは、優越感だの見下しだの憐憫からの可愛いではなく、そんな自分に嫌気がさしている、という部分だった。こちらが自己嫌悪じみた感情を持つことで、彼と距離を置きたがったり、せっかくなんだかんだ着々と進展している恋人ごっこが中断されるのを嫌がった。
 ある意味、徹底している。彼の主張は一貫していて、酷くわかりやすい。
 しかも彼は、そんな彼の主張を理解していながらも、割り切れずに気持ちを揺らすこちらに対して、なぜかかなり好意的だった。
 お前は根っこの性質が善人なんだよと言って、正直者のお前とはむしろ安心して付き合えると笑う。全くいい意味で使ってないことを教えたというのに、可愛いって言っていいよとも言う。実際に可愛いと言えば、嬉しさと恥ずかしさを混ぜたみたいな反応をする。その反応すら可愛いと思ってしまうこちらに、楽しげに笑ってみせたりもする。
 優越感で見下されて、健気で不憫で憐れだ、と思われることが嫌ではないというのが正直かなりの驚きだ。彼を見下している相手が自分だという部分が、ますますその気持ちを大きくさせる。だって、本来なら彼を見下せる要素なんて欠片もないことは、自分自身良くわかっている。
 なのに、彼の言い分としては、どんな感情からだろうと、可愛いって思われて大事に扱ってもらえるなら儲けもの、だそうで。可愛いって気持ちからたくさんのキスが貰えるなら、断然そっち優先で、見下しも憐憫も気にしないという割り切り方がすごい。
 そこまで割り切られてしまったら、こちらはもう何も言えない。相手が喜ぶならと、なるべく気にせず、可愛いと思ったままを口から吐いて、可愛いと思ったまま相手に触れるセックスを繰り返した。
 だんだんと行為に慣れて、変化していく相手の体も、相手の反応も、いちいち可愛くて仕方がない。
「ぁ、ぁぁ……ぁあ、ぃい……きもちぃ……ぁ、っ」
 気持ちよさそうにとろける声を聞きながら、可愛いと呟くように告げてキスを落とした。
「んっ、ふふっ」
 くすぐったそうに、嬉しそうに、笑う顔もやっぱり可愛くて、何度もキスを繰り返す羽目になる。こんな時、決していい意味ではないはずの可愛いでも、彼にとってはいい意味の可愛いと変わらないのだと、思い知らされるようだった。
「ぁんっ……ね、……も、いきた、」
 甘えた声にねだられて、穿つ速度をあげていく。あっあっと溢れる声が連動するように早く、こらえきれないとばかりに少しずつ音量をあげていくのを感じながら、なるべく同時に果てられるようにと調整する。
 ほぼ同時にイケた時の達成感がたまらなく好きで、つい狙ってしまう。お前らしいと笑った相手も一応は協力的だった。
「ぁ、ぁっ、あっ、いく、いくっ、も、いっちゃうっ、ねぇっ」
 そう言いながらも必死に耐えて、こちらの絶頂が近づくのを待ってくれているのだ。
「いいよ、俺も、いく」
 告げればホッとした様子で緊張が緩み、次いで腸内が大きくうねる。
「あっ、あああっ」
 気持ちよさげにトプトプとペニスの尖端から白濁を吐き出す姿を見ながら、収縮する腸内に持っていかれるまま自身もまた吐精した。
 しばし余韻を堪能してから、ゆっくりと繋がりを解いて、彼の隣に寝転がる。甘えるみたいにすり寄ってくる体をゆるっと抱きかかえて、無言のままちゅっちゅと顔のあちこちに軽いキスを落とせば、やっぱりくすぐったそうに、嬉しそうに、んふふと笑ってみせる。
 可愛い可愛いと繰り返す内に、それを彼が幸せそうに受け止めるのを見ている内に、だんだんと優越感だの見下しだの憐憫だのが、自分の中でもどうでもいいものとなって薄れていくのは、確かに感じていた。

続きました→

 
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