いつか、恩返し22

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 ちょっと休憩のつもりが結構しっかり眠っていたらしく、目覚めた時には数時間が経過していた。隣の彼はまだ眠っているようだったので、起こさないようにそっと抜け出しシャワーを浴びに行く。
 シャワーを終えて戻れば、あの後起きたらしい相手が、まだどこか眠そうな顔でベッドに腰掛けていた。
「起きたのか」
「うん。ちょっとのつもりが結構寝た」
「俺もだよ」
「起きてすぐシャワー行ったの?」
「そう」
「俺も浴びてこようかな」
 いってらっしゃいと言えば、うんと頷いて立ち上がる。
「あ、待って。腹減ったんだけど、お前は?」
 入れ替わりに部屋を出ていく相手に待ったをかけて尋ねれば、もちろん減ってると返ってくる。
「勝手に食材漁っていい?」
 今日は相手の家で致していて、互いの家を行き来する仲ではあるが、基本的には相手の家のキッチンに立つような事はあまりしない。なぜなら双方、まだまだ拙いながらも一応は料理ができるからだ。相手の家にいる時は、相手の出してくれるものを食べたい。
「それはいいんだけど、たいした食材ないかも」
 イマイチだったらお湯だけ沸かしてカップ麺で、と残して相手は風呂場へと消えていく。それでも一応お許しは得たので、冷蔵庫や棚を開けてあれこれ食材をチェックした。
 確かに冷蔵庫の中は寂しい感じだったけれど、カップ麺で腹を満たす気にはなれないし、炒飯とスープくらいなら作れそうだ。
「あ、いい匂い」
 シャワーを浴びて戻ってきた相手が、キッチンに顔を出しついでに寄ってくる。
「ははっ、なんか、嬉しい」
 斜め後ろからフライパンの中身を覗き込まれながらのセリフだったけれど、どうにもフライパンの中身へのコメントには思えなかった。
「え、何が?」
「んー……色々」
 思わず振り返って聞いてしまえば、どこかもったいぶった様子で、んふふと笑う姿は楽しげだ。
「なんだよ気になる」
「そうだね。強いて言うなら、童貞捨てたら世界の見え方が少し変わった、みたいな?」
「あー……そういう」
 全くわからない気持ちではないから、なんとなくの相槌を返してしまう。初めて彼女を抱いた後の、何とも言えない感動や、相手への愛しさとを思い出して、なんだか胸の奥がむず痒い。あれを今、相手が自分に対して感じているのかもと思うと、どうにも気恥ずかしい。
「邪魔してごめんね。こういう話は後でゆっくりしよ」
 ちゃんと謝りたいし、と続いた言葉に、そういえばそんなことを言っていたっけと思う。驚きはしたけど、別に謝って欲しいような酷い真似をされたとも思っていないんだけれど。
 でも聞きたいことは色々あるような気がしている。きっと相手も、話したいことが色々とあるんだろう。
「ご飯出来上がるの楽しみ。手伝うことあったら呼んでね」
 やっぱりんふふと楽しげな笑いを残し、狭いキッチンを出ていく相手を見送って、調理の続きに戻った。

続きました→

 
 
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