いつか、恩返し35(終)

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「執着逆転してるって話もしたし、同じ学部学科選んだのもお前のためだけじゃないし、お前が俺に恩を感じてるって言うから、それも存分に利用してきたわけ。つまり、本気で恩を返せなんて言える立場じゃないんだって」
 むしろ俺がお前に恩返ししたいくらいだよ、なんて言いながら顔が寄せられて、ちゅ、と唇を吸っていく。
「お前は無自覚と言うか実感ないだろうけど、お前が俺にくれてるもの、お前が思う以上に多いから。子供の頃からずっと、いろんな形で、お前に支えられてきてる。さっきちらっと話した程度じゃ、ホント、伝わってないと思うけど」
 だからさ、と言葉を一度区切った相手の手に促されて両足を開けば、先程下着まで剥ぎ取られて剥き出しな下半身の隙間に相手の手が差し込まれてくる。もう片手にはローションボトルが握られていて、器用に蓋を外すと、中身を差し込んだ手の平に流し落としていく。
「で、だから、の続きは?」
 くちゅくちゅと湿った水音をたてて慣らし始める相手に、しばらくは黙って従っていたが、途切れたままの言葉の先が気になって問いかる。
「んー、だから、俺が今、お前に恩を返せっていうのは、お前が恩返ししなきゃって思い続けてるから、そろそろそれを終わりにしようってだけなんだよね、って話?」
 恩返しなんか要らないって言うより、恩返しって名目で何かして貰うほうが、お前的にスッキリするんじゃないの、と続いた言葉は確かに的を得ている。つまり、これで恩を返し終わったという気持ちの区切りを、つけてくれようとしているだけらしい。
「あー、うん、その、ありがとう?」
「ここでありがとうが出てくるの、お前も大概、可愛いからね?」
「いや、可愛さはお前のが格段に上」
 張り合うように言い切れば、どっちがより可愛いかなんて話じゃないのにと、おかしそうに笑われてしまった。
「お前に可愛いって言われるのも嬉しいんだけど、でも今日は、いつものお前以上にお前を可愛いって言うつもりだし、思いっきり可愛がるから」
 覚悟してよねと言われて、そういや抱き潰したいって話だっけと思い出す。わかったと頷けば、すっかり快感を得ることを覚えてしまった前立腺を、楽しげにグニグニと押し揉まれて、嬌声をあげながら体を跳ねた。


 決して相手の本気を疑っていたわけではないのだけれど、結果、見事に抱き潰されて、目覚めになんだか呆然とする。なんか、色々と凄かった。一方的に、やや強引に、何度となく快感を引きずり出されて、叩き込まれて、体も頭の中もバカみたいにキモチイイだけになって、いつ行為が終わったのかも覚えていない。
「なんか、随分ぼんやりしてるけど、大丈夫?」
「あー、うん」
 こちらが目覚めたことに気づいた相手が心配そうに声をかけてくるが、呆然とした気持ちは抜けないまま、曖昧な返事を返してしまう。
「大丈夫じゃなさそう。てかまだキモチイイに浸ってたりする?」
 雰囲気がエロいと苦笑されながら、優しい手付きで頬を撫でられれば、うっとりと目を閉じそうになる。気持ちがいい。
「なぁ、」
「うん、何」
 結局目を閉じてしまいながら相手に呼びかければ、甘やかすようなとろりとした声音が返ってくる。その声にも、思い出して体の奥のほうが疼く気がした。
「はは、凄っ」
「何が?」
「お前の好きを、徹底的に叩き込まれた、って感じがする」
「叩き込んだ、で間違ってないと思うけど」
 肯定されて、思わず笑う。確かにそうだ。あれはそういうセックスだった。
 再度眠りを誘う気持ちよさに抗い、どうにか目を開け体を起こす。体のあちこちが軋む気がして眉を寄せれば、すぐさま心配そうな声が大丈夫かと問うてくる。
「体は平気だけど他がやばい」
「他?」
「ああ、色々と凄い。やばい」
 まるで要領を得ない発言に、相手も何かを感じ取ったらしい。
「もしかして、それは俺にとって嬉しい話?」
「多分」
「ならいいや。何か、して欲しいこととかあれば言って」
「俺もお前を抱きたい」
「ダメとは言わないけど、さすがに今すぐは無理じゃないの」
 疲れ切ってるでしょと言われて、そういう意味じゃないと返す。
「俺も、お前を抱き潰すみたいなセックス、したい」
「ああ、うん。もちろんいいよ。今度ね」
 あっさり了承されて拍子抜けもいいところだ。
「本気で?」
「だって嫌がる理由がない」
「でも俺に好き勝手させる理由もないだろ」
 だってこちらは、恩返し代わりに抱き潰されるのを了承したのだから。色々と凄い体験ではあったし、気持ちのいい思いはたくさんしたし、不快な思いをしたわけではないけれど、酷い目にあったという気持ちも無いわけじゃない。
 しかし相手は納得した様子でそういう話かと言った後。
「むしろ俺が恩返ししたいくらいだ、って言ったろ」
 だから俺にも恩返しさせてよと笑う顔はなんとも幸せそうで、今すぐ押し倒せないのが残念でならなかった。

< 終 >

 
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