いつか、恩返し5

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 彼にも責任があると言ったって、むりやり飲まされたわけじゃない。どう考えたって自業自得で、こちらの非が大きいはずなのに。
 いろいろして貰うばっかりで、いつか返したいつもりの恩は、むしろ積み上がっていく。なんて気持ちをうっかりこぼせば、やっぱり相手は大げさだなと笑った。
「というかさ、あの時、彼女振って俺の恋人になってくれたのは、恩返しのつもりだと思ってたんだけど違うの?」
「そりゃ、恩を返したい気持ちがなきゃ、お前が孤立しても放っといたとは思うけど。でも恋人になってって言われたわけでもないのに、半ばむりやり押しかけ恋人してて、どこが恩返し?」
 恩の押し売りならした、と言えば、そういう認識だったの!? と相手は一度驚いた後で、またしてもおかしそうに笑っている。
「恩返しねぇ」
「何かして欲しいことあるなら言えよ」
「うーん……現状そこそこ満足してはいるからなぁ。確かに、恋人になってくれとは言わなかったけど、お前がお前の意思で俺を選んで、放っとけないからって理由にしろ俺の傍にいたいって言ってくれたのは嬉しかったし、周りに俺と恋人って思われるのを受け入れてくれてるのも、ちゃんと感謝してるよ」
 押し売られたものでもちゃんと返されてるよと言って貰って、少しばかり安堵する。
「なら、いいけど」
「うん。お前と恋人ごっこする日が来るなんて、まさか思ってなかったから、実は今、結構楽しんでるし」
「実は、とか言われなくても、さすがにそれは俺にもわかってるわ」
 何が楽しいのかはわかんないけど、と続ければ、びっくりした様子で、お前は楽しんでないのかと聞き返される。
「楽しいよ。お前と一緒になにかするのは普通に楽しい。ついでに言うなら、お前の隣はかなり居心地いい。でも恋人ごっこが楽しい! という心境に至ってはいないな」
 そもそも恋人ごっこというほど恋人らしいことをしているわけでもない。周りに恋人と認識されていることと、一緒に過ごすことをデートと呼んでいるくらいしか思いつかない。一応、甲斐甲斐しく世話を焼いて貰う、というのが本日追加されたみたいだけれど。
「ああ、なるほど」
 言えば納得顔で頷かれた。
「で、お前は何がそんなに楽しいわけ?」
「え、恋人にご飯作ってもらったり、恋人に作ったご飯食べてもらったり、恋人と一緒にゲームしたりテレビ見たり、恋人と映画見に行ったりカラオケ行ったり買い物行ったり、昨日みたいに恋人の誕生日祝ったり、全部何もかも楽しいけど」
 すごい勢いで恋人の単語を混ぜられて思わず笑う。
「いやお前、恋人ったって相手が実質形だけの俺で、本当に楽しいのかって話だろ?」
「ああゴメン。言い方変えるわ。好きな子にご飯作ってもらったり、好きな子に作ったご飯食べてもらったり、好きな子と一緒にゲームしたりテレビ見たり、好きな子と映画見に行ったりカラオケ行ったり買い物行ったり、昨日みたいに好きな子の特別な日祝ったり、初めてのお酒で酔いつぶれた好きな子をお持ち帰りするのも、全部、何もかもが楽しい」
「待て待て待て待て。え、何だって?」
「好きな子とごっことはいえ恋人になれたら、楽しいのは当たり前、って話」
 びっくりしすぎて言葉を失くせば、知らなかっただろと、目の前の男が楽しげに笑った。

続きました→

 
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