いつか、恩返し4

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 当然の結果だけれど、彼と恋人になって、彼と過ごす時間が大幅に増えた。互いの家を行き来する頻度も増えたし、休日に一緒に遊ぶ時間も増えた。
 彼はどうか知らないが、少なくとも自分の方は、仲の良い友人とだってここまで親密に過ごした経験はない。ついでに言えば、実家住まいだった彼女ともだ。
 全く嫌だとは思わないどころか、これだけ一緒に居てもやっぱり彼と過ごす時間は居心地がいいと再確認する始末で、彼とのそんな相性の良さのようなものを、意識してしまう事が増えている。しかも時折、恋人だからね、だとか、デートしようか、などと言われる事があって、そんな時に妙にそわそわしてしまう自覚もあった。
 形だけにしろ恋人って関係なのは確かで、一緒に過ごすことをデートと呼ぶなら、互いの家で一緒に食事を摂るのだって、ついでのように一緒にゲームしたりテレビを見るのだって、充分おうちデートと呼べる内容だというのはわかる。一緒に買い物にでかけ、たまにはって映画館で映画を見たり、カラオケしたりゲーセン行ったりなんて、関係が恋人の今は間違いようもないデートだった。
 頭ではわかっている。彼は正しくデートをデートと呼んでいるだけだ。

 それは彼よりも数ヶ月遅れで迎えた自分の誕生日の事だ。形だけでも一応は恋人だしね、などと言いながら、彼の奢りで食べに出かけて、初めてアルコールを口にした。
 一足先に二十歳になっていた彼は、解禁とばかりに結構な頻度で俺だけ悪いなと言いつつ飲んでいたし、どうみてもお酒が好きなのは明らかだったから、これからは一緒に飲めると思うと嬉しかった。ただ、初めての酒で、しかも自分の誕生日祝いで、浮かれていたのかあっさり飲みすぎたらしい。
 気づいたら彼の家の彼のベッドの中に居て、当然隣には彼が寝ていて、ついでにいうなら辛うじて下着は脱いでいないという状態だった。
 互いの部屋に行き来する頻度は増えても、さすがに泊まったことはない。徒歩10分もない距離に住んでいて、わざわざ泊まる理由がない。
 つまりは寝起きから大いに焦るべき事案が発生していて、けれど昨夜何があったのか聞けたのは、そこから数時間は経過してからだった。なぜなら、世に言う二日酔いを体験していたせいだ。
 従兄弟は体質的に酒に強いのか、今の所二日酔いになったことはないらしく、どこか面白そうに、二日酔いの治し方を検索して、こまめに水分補給を促したりあっさり目の食事を作ってくれたりと、なんだかやたらと甲斐甲斐しい。しかも、やっとまともに話ができる状態に回復した後聞いた話によれば、昨夜も相当甲斐甲斐しくあれこれと世話をしてくれたのは間違いない。なんせ寝起きが下着姿だったのは、着ていた服を吐いて汚したせいだった。しかも吐いたのはトイレ数歩手前の廊下だったと言うから最悪だ。
 脱がすまではやったけど、何か着せてやるだけの気力も体力も残ってなかった。とは言われたが、脱がされた服は既に洗濯済みだったし、汚した廊下だって綺麗に片付けられている。
 聞けば聞くほど酷すぎる。せっかく落ち着いた二日酔いがぶり返しそうだ。
 頭を抱えるように項垂れてしまったこちらに、けれど相手はそんなに気にしなくていいよという。
 自分が昨夜飲みすぎてしまったのは彼にも充分に責任があるから、というのが一番の理由で、けれどやはり、恋人だというのも理由の一つではあるようだった。

続きました→

 
 
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