仰向けに寝転がり頭だけ持ち上げ見つめる視線の先、自身のペニスが狭い秘所へと飲み込まれていく。澄ました耳に、ぬちゃりと湿ったいやらしい音と、相手の漏らす小さな呻き声と、キツい締め付けにこぼした自身のいやらしい吐息が混ざって届いた。
手を伸ばして上にまたがる相手の尻肉を掴み広げれば、止めろと相手の焦った声が響く。
「入るとこ見えた方が良いだろって言ったの誰だよ」
「だからって広げるヤツがあるか!」
「せっかくなら入ってくとこしっかり見たい」
「ざけんな。手、放せって」
「じゃ、入るの見れなくていいからこっち向いて」
代わりに顔見せてと言ったら即答で嫌だと返ってきた。
「なんで?」
「なんでも!」
「お前が初めて俺抱いた時、正常位だったろ。でもって苦しいのときもちぃのとでわけわかんなくなってる俺に、散々可愛いとか言いまくったよな?」
「お前は可愛いからそれでいーの」
「なんでだよ。俺だってお前に可愛いとか言いたいだろ」
そもそも背面騎乗位というらしい、今のこの体位で繋がる事にイマイチ納得が出来ていない。
初めて彼とセックスをした時、一度は抱かれる覚悟を決めた相手に上手く挿入出来ず、結果タチネコ交代した経緯があるので、百歩譲って相手が自分の意思で挿入される騎乗位なのは仕方がない。けれど、脱童貞するならちゃんと入ってくとこ見たいだろ、などという理由で背中を向けられたのはいただけない。
勢いに押されるまま、背中を向けた相手に跨がられてしまったが、入っていく所を見たいなんて欲求は特にないからだ。しかも見ろと言うならじっくり見てやろうと広げてみれば、こうして文句が飛んでくる。
「言わなくていい。てか可愛いとかないからっ」
「お前が可愛いかどうか決めるのは俺だ。てかお前、その体勢キツくないの?」
相手は先だけ入った状態の中腰で、若干前屈みになりながら身を固めている。もちろん、尻肉を開くこちらの手もそのままだった。
「キツイにきまってんだろ。だからさっさとその手放せよっ」
「やだ。つかさ、」
言いながら少し腰を突き出すように浮かせてみる。
「うわっ、バカっ」
そのまま入っていくところが見れるのかと思ったら、相手の尻も突いた分だけ浮いただけだった。
「無理にしようとすんなって。おとなしくその手放せば、俺がちゃんとお前の童貞貰ってやるってば」
「なんで入んねーんだ。俺はお前のあっさり入れられたのに」
「あったり前だっつーの! バリタチなめんな」
「バリタチ?」
「抱く側専門のこと」
「は? 何お前、抱く側のプロなの?」
「そーだよっ。俺に男抱いた経験あるのはお前もわかってんだろ」
「そりゃまぁ慣れてるとは思ったけど。でも抱く専門なんて聞いてない。てかなんで抱く専門のお前が俺に抱かれようとしてんの?」
「お前が抱く側ならだの童貞のまま抱かれるの嫌だのって言うから仕方なくだっつーの。だいたいさ、ちゃんとキモチくなれてんのに、なんでお前、抱かれるだけで満足しねーの? なんで俺、こんなことしてんの?」
「いやお前、自分で答え言ってるから。俺の童貞貰うって言い出したのお前の方だから」
「だってお前と恋人になりたいんだからしょーがないだろー」
童貞貰ったら恋人になるって約束したろ? したよな? と確かめるように問う声は僅かに鼻声だった。もしかして泣いてるのかと思ったら、どうにもその顔を見たくてたまらなくなった。けれど振り向いてとお願いした所で、絶対に叶えてはくれないだろうこともわかっている。
「あ、あのさ」
「なんだよっ」
「やっぱ一回抜いていい?」
「なんで!?」
「入るとこよりお前の顔みたいし」
「嫌だっ」
拒否の声を無視して相手の尻をぐいと持ち上げつつ腰を引けば、深くまで入っていなかったそれはあっさり相手との結合を解いた。そのまま相手の下から抜けだし起き上がり、背中を向ける相手の肩を掴んで勢い任せに引き倒す。
「ちょっ!!」
「泣いてんの?」
「泣いてねー」
そう言いながらも、上から覗き込んだ相手の目元は、泣くのを耐えてか赤く染まっている。胸がキュウとして鼓動が跳ねた。
「教えて」
「何を?」
「男の抱き方。上に乗られるんじゃなくて、自分で、お前に入れたい」
「だーかーらー! バリタチなんだっつったじゃん。入ったら童貞卒業に変わりないんだから、せめて俺に乗らせてよ」
ますます目元を赤くする相手に、愛しいようなもっとしっかり泣いた顔が見たいような、なんとも言えない気持ちが湧いて、黙れという気持ちも込めつつその口をキスで塞いだ。もちろん彼に抱かれる時だってキスはするけれど、自分から積極的に相手の唇を奪うことは今までしたことがなかった。初めてだということは、多分相手もわかっている。
「童貞捨てたいだけじゃなくて。お前を自分の手で、抱きたいって思ってる。今、かなり」
真剣に告げたら小さな溜息の後、引き倒した時に肩を押さえた手を放せという様子でピタピタ叩かれた。素直に従えば、クルリと位置を変えて、仰向けのままこちらに向かって足を開く体勢になる。
「ほら、こいよ」
「え?」
「今日は自分でしっかり慣らしてあるから、先っぽ押しあてて体重かけりゃそのまま入るよ。多分」
言われるままにその場所へ先端を押し当て体重をかけていけば、失敗したあの時とは違って、狭い場所を押し開きぬぷぬぷと沈んでいく。熱に包まれメチャクチャ気持ちが良い。
すぐに腰を振り始めた自分に、相手は苦しげに呻いたけれど、制止の声はかからなかった。
「ゴメン。俺ばっか、きもちぃ」
動くたびにあっアッと苦しそうな声が漏れて申し訳ないとは思うものの、動きを止めることが出来ない。
「んなのいーから」
むしろさっさとイッてと急かす声は本気だ。それに甘えてガツガツと腰を振れば、相手の目元からボロリ涙がこぼれていく。
胸が締め付けられて、ぎゅうと抱きしめてやりたい気持ちが押し寄せる。多分きっと、愛しいのだ。相手のことも気持よくさせたいという気持ちはあるのに、まったく上手くいかない。
「ゴメン、ごめんっ」
ゴメンを繰り返しながらあっさり果てて、それからようやく相手のことを抱きしめた。
「童貞卒業、おめでと」
疲れきった声が、それでもそんな言葉を掛けてくる。
「うん。ありがと。てか本当ゴメン」
「いーよ」
緩く抱きしめ返してくれながら、相手は続ける。
「でも、約束は守れよ」
「うん。好きだよ」
「えっ?」
「抱いたら、わかった。……と、思う。お前のこと、俺も、友人ってだけじゃなく好きなんだって」
だからまた抱かせてと言ったら、童貞じゃなくなったんだからもう良いだろと言われたけれど。
「だってお前が俺に気持ちよく抱かれるとこ見たい」
そんな姿を見たら、きっと今日とは比べ物にならないくらい、メチャクチャ愛しい気持ちが湧くだろう。
それを正直に言ったら、相手は暫く言葉に詰まった後で、善処はすると困惑の混ざる声で告げた。
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