親父のものだと思ってた32

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「はぁ……」
 詰めた息を吐きだして、体の力を抜こうとしているのがわかる。
 チラりとこちらを窺った視線と一瞬だけ目があったけれど、その目はすぐに伏せられて、ついでに顔も俯けてしまう。じわりと赤くなっていく耳先に相当恥ずかしいのだとわかって、俯かないで欲しいとは言えなかった。
 まぁ、顔が見れると喜べたのはわずかな時間でしかなかったけれど、向かい合っているのだからチャンスはまだある。それに相手の状況は、表情以外からだって色々伝わってくるのだから。
 ひっそりと繰り返される深呼吸に相手の緊張が伝わってきて、こちらも息を潜めてその先を待った。
「んっっ!」
「うっ……」
 クッと腰が沈んで、小さな呻き声とともに相手の体が硬直するのを見ながら、こちらもたまらず小さく呻く。
 相手は動きを止めているのに、ペニスの先端の膨らみが入り込んだ穴は、キュウキュウと何度も収縮している。先端部だけなのに、肉の筒に包まれ揉まれている快感と興奮とで、あっという間に射精欲が湧き上がった。
 それを鎮めるために、硬直したままの相手の体をじっと見つめる。相手の体の状況へ意識を向ける。
「どっか、痛い?」
 吐き出す自分の声こそが、痛みを堪えているかのように苦しげだ。痛いわけではないが、快感をこらえる苦しさは確かにあった。
「へ、いき。でも、ちょっと、待って」
 ゆると頭を左右に振った相手が、再度チラッとこちらに視線を走らせたあとで、深めの深呼吸を始める。ひっそりと行う余裕はないようで、その息遣いははっきりと耳に届いた。
「ぁ……」
 声を漏らしたのは相手ではなく自分の方だ。
 深呼吸を繰り返しながらタイミングを図っているのか、止まっていた腰がゆっくりと落ちていく。
 締め付けが一番強いのは入口付近で、上から順にキュッ、キュッ、キュッ、っと竿の根本までをゆっくり締め付けられていくのが、たまらなく気持ちがいい。
 深呼吸は繰り返されていて、相手はきっと快感なんて拾っていないと思うのに、一生懸命にその体内に迎え入れてくれる姿に胸の奥が熱くなった。
 より強い刺激と快感とを求めて腰をゆすりたいのを、こらえるのが難しい。どうにか耐えていられるのは、相手の必死さが伝わってくるせいだ。
 やっと好きな相手と体を繋いでいる、という感動や興奮ももちろんあった。しかも、相手がこんなにも頑張ってくれている、という喜びやら愛しさやらが混ざって、更に、体が直接受け取っている快感までが混ざって、頭の中がグチャグチャだ。グチャグチャだけど、幸せで、嬉しくて、気持ちがいいのは間違いなくて、こみ上げてくる何かで視界がぼやける。
「はい、った」
 むにっと相手の尻タブが肌に触れたとほぼ同時に、相手がホッとしたようにそう呟き、顔を上げた。
 ずっと相手を見つめていたこちらと目があって、滲む涙に気づいて驚いた後。おかしそうに、幸せそうに、嬉しそうに、笑う。それが最後のひと押しだった。
「あっ! あ、……あぁ……」
 体の中でグチャグチャに絡み合った幸せと喜びと快感が弾けて、次に押し寄せてくるのは絶望だ。
 肉の筒に包まれたペニスがピクピクと震えるのを感じながら、持ち上げた両腕をクロスさせて顔の上に置き、一転して情けなさで溢れる涙を隠した。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった49

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 じゃあお言葉に甘えて、なんて言いながら、開いた足の間に身を進めてきた相手に両足を抱えられ、更に開かれるのかと思いきや、軽く閉じるようにして両足とも相手の肩に乗せられる。
 なんで、という疑問は、少し前傾した相手によって肩に掛かった足ごと腰が浮いたことと、同時に相手の両手が尻を下から持ち上げるようにして、更には尻タブを左右に割り開いたことで、なんとなく察することができたけど。つまり、こちらの腰を浮かせるのに肩を使ったほうが楽なのと、両手を開けておきたいってことなんだろう。
 顔を起こして下腹部を覗いたって相手の手元はもちろん見えないが、何をされているかはだいたいわかる。左右に開かれた尻タブの間を相手の指に探られて、穴の位置を把握された後は、そこに熱い塊が押し付けられる。
「はぁ……」
 その熱さに、緊張と期待と恐怖とを混ぜて、震える息を吐き出した。
「深呼吸、出来る?」
「へ?」
「深呼吸。息、深く吸える?」
「あ、ああ」
「じゃあ吸って」
 促されるまま深く息を吸い込んで吐き出す。吐き出す息は最初やっぱり少し震えていたけれど、二度ほど繰り返せば震えは収まっていた。
「入って、いぃ?」
「ん、……ウッ」
 小さく頷けば、尻穴にぴたりと押し当てられていた熱の塊が、ぐっと押し付けられて息が詰まる。けっこう慣らされたと思うのに、やはりそう簡単にスルッと入るものではないようだ。
 相手のペニスのデカさを思い出して、早まったかなと少しばかり血の気が引く中、尻を支える両手がまた尻タブを左右に割り開く。
「ぁ、っく……ぅ」
 穴の近くに添えられている指先まで穴を広げるみたいに引っ張って、大きな塊がそこへ入り込むのを手伝っているのだ。そう認識するとほぼ同時に、ぬぽっと大きな塊が尻の中に入り込むのを感じ取った。
「んぁあっっ」
 実際、ぬぽっ、などという音がその場所から鳴ったわけではないと思う。でも体の中で、そんな音が響いた気がして、軽い衝撃にこらえきれなかった声が喉の奥から押し出されてきた。
「大丈夫? 痛くない?」
 少し焦ったような声に、痛くはないと返して、自主的に何度か深い呼吸を繰り返す。その間、相手はそれ以上挿入してくることはなかったけれど、肩に掛かっていた足を下ろしたり、尻ではなく腿裏を支えるように両手が添えられたりと、着々と次へ進む準備をされていた。
「そろそろ、もっと奥、行っていい?」
 こちらが落ち着くのを待って掛けられた声に黙って頷けば、腿裏に添えられていた手に力が入るのがわかる。
「痛いときは、痛いって言ってね」
 両足を左右に広げながら押し上げられて、ゆっくりと圧迫感が増していく。広がりきった尻穴が擦られて、痛いというよりはなんだか熱い気がして呻いた。
「うぅ、……」
 真剣な目に観察されている。こちらが痛みを感じているかを探っているんだろう。うっすらと額に汗が滲んでいて、歯を食いしばっているようにも見える。なんだかちっとも気持ちよさそうではなかった。
 なんかちょっとガッカリだなと思ってしまう中、ゆっくりとだが圧迫感は増していく。挿入継続の判断が下されたらしいのはわかったが、相手の真剣すぎる目に晒されて、今感じている苦しさが、ペニスの挿入によるものなのかわからなくなった。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった33

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 無理に力をかけなくても、押し付ける亀頭の先端がゆっくりと飲み込まれていく。ペニスの侵入が深まるに連れ、見下ろす相手の頬がじわじわと赤く染まってどんどんと息が乱れていったが、挿入が苦しいと言うよりは、どうやら興奮しているようだと思う。
 必死にアナルを開閉させてペニスを迎え入れようとするさまが、どうにも、一生懸命に欲しがられている、という気持ちにさせる。
 相変わらず献身的で、けなげで、可愛いらしい。そんな姿を見ていると、ちゃんと応じてやりたいと思うし、満たしてやりたいとも思ってしまう。
「ぁっ……」
 そんな気持ちに反応して、質量を増してしまったペニスを、相手も敏感に察したらしい。
「ははっ、お前が可愛すぎて、興奮した」
 ごめんなと謝りながらも、あとちょっとだから頑張れと促してしまう。興奮したと言われて嬉しげに口元を緩めるのを見てしまったら、もう少しこのまま、一生懸命に欲しがられて居たいと思ってしまう。
 相手も軽く頷くと、またアナルに意識を集中している。俺を見ながら、と言ったせいで顔も視線もこちらを向いているけれど、だからこそ、意識がこちらに向いていないのもわかってしまう。
「ぁあっ」
 さすがに一番太さのあるカリ部分が抜ける時はキツそうだったけれど、相手に合わせて押し付ける力を少しばかり強めてやれば、無事に亀頭部分全てが相手のアナルに包まれた。
 相手もきっと感じ取れたのだろう。抜ける瞬間には驚いた様子で幾分高い声を漏らし、その後、視線が一度下腹部に落ちた。
「一番おっきいとこ、入ったぞ」
「はい……」
「おっきいとこ抜けた時、痛かったか?」
「あ、いえ、痛いとかじゃなくて。入った、って自分でもわかったから、ちょっと、びっくりしちゃって」
「ああ、なるほど。今も、痛くない?」
「はい」
「ん、ならいい。本当によく頑張ったな。一生懸命お尻広げて、俺のちんこがちょっとずつ入ってくのに興奮してるお前、めちゃくちゃ可愛かったぞ」
 困った様子でううっと唸るが、アナルがきゅっとペニスを締め付けてくるから、やはり小さく笑いをこぼしてしまう。
「はは、可愛い。……って言うと、お尻が嬉しそうに応えてくるよな」
「やっ」
 可愛い、と繰り返してアナルの収縮を楽しんでしまえば、小さな声を漏らしながら恥ずかしそうにそっぽを向かれてしまった。少し意地悪が過ぎたらしい。
「悪かったよ。馴染むの待ってるついでに、つい、な」
「馴染むの……」
「そう。で、そろそろもっと奥に入りたいんだけど。おっきいとこ入るまではお前が頑張ってくれたから、今度は俺が動くよ」
「はいっ」
「ふはっ」
「えっ……」
 こちらが動くというのがそんなに嬉しいのか強く頷かれてしまい、申し訳ないと思いながらも吹き出してしまえば、相手が不安そうに視線を揺らす。
「すまん。お前があんま嬉しそうに頷くから、ちょっと、」
「ちょっと……?」
「可愛すぎて」
 アナルがきゅっと律儀に反応するので、またしても、ははっと小さく笑ってしまう。
「も、可愛い、禁止で」
 本気で嫌がっている顔ならともかく、しぶしぶと仕方なくな感じが余計に笑いを誘う。というよりも、ますます可愛い。

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俺が眠らせてあげるから・その後の二人の初エッチ3(終)

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 あまりにも珍しい光景に感動を覚えてしまい、胸の内に愛しさが溢れた。けれど申し訳ないことに、それを伝えるよりも早く、小さな笑いがこぼれ落ちて行く。
「ちょっ、もーっ!」
「ごめん。あんまり可愛いから、つい」
「その顔見ればわかるんで、わざわざ言わなくていいですよ」
「そう? 恋人に可愛いって言われるのも、慣れたら意外と嬉しいもんだよ?」
「え、嬉しいんですか!?」
 嫌がられてはいないと思っていたけれど、嬉しそうには見えなかったと続いた言葉に、伝わっているようで伝わっていないことも多いのかも知れないと思う。
「さすがにあからさまに喜ぶのはね、まだ抵抗があるかな。でも、本気で言ってるんだろうなってのは伝わってくるから、気恥ずかしいけどなんだかんだやっぱり嬉しいよ。まぁ、可愛いって言って蕩けるみたいに笑うケイくんのが、よっぽど可愛いのにって思ってることも多いけど」
「ううっ、今そんな事言うの、ずるいっ」
「そうだね。好きだよ、ケイくん」
「ほんっと、ずるいっ」
 俺だって好きですと張り合うように告げられて、やっぱり愛しさが笑いとなってこぼれ落ちた。
「ね、汚いとも気持ち悪いとも、ちっとも思ってないから、続き、していい?」
「はい。でもだいぶ覚悟も決まってきたんで、ゆっくり慣らすとか不要です。というか、早く、修司さんが欲しいです」
「ん、俺も、早くケイくんが欲しくなってきた」
 多少は不安が解消されたのか、それこそ覚悟が決まったのか、ガチガチだった緊張が解けている。様子を見ながら、2本、3本と指の数を増やして行っても、そこまで辛そうな顔を見せはしなかった。
 それどころか、戸惑いと躊躇いをたっぷりと混ぜながらも、気持ちが良い場所を知らせるように時折小さく喘いでもくれて、それがまたたまらなく可愛らしい。慣れないながらも必死に応じようとしてくれる様が愛おしい。
 そんなのを見せられていたのだから、一瞬だって萎える隙はなかったし、それはケイの目にも明らかだったはずだ。
 だからだろうか。指を抜いて足を抱えた時には随分とホッとした様子だったし、無事に体を繋げきり、全部入ったよという申告には感極まったように泣かれてしまって驚いた。泣きそうな顔は見たことがあっても、本当に泣いている姿を見るのは初めてで、内心かなり焦ってもいた。
「え、ちょ、ケイくん!?」
「ご、ごめっなさっ、うれ、嬉しくてっ」
「そ、そっか」
「しゅぅじ、さん」
 伸ばされた手を取れば足りないとでも言うように強く引かれ、それと同時に、待てないとばかりに上体を起こそうとする。慌ててその背を支えるように空いた側の手を回し、少し迷ったものの、結局そのまま抱き起こしてしまった。
 対面座位で腿の上に乗っているので、当然ケイの顔のほうが上に位置する。軽く見上げた先にあるのは、涙を流してはいるものの、確かに満足げな笑顔だった。
 その笑顔が近づいて、何度かチュッチュと唇を啄んでいく。そっと舌を差し出せば、すぐに絡め取られて深いキスになる。
 乱暴ではないが、どことなく衝動で貪られているようなキスを黙って受け止める。やっと開放される頃には、その頬を濡らす雫はもうなかった。
「落ち着いた?」
「はい。というかなんか、すみません」
「ちょっとビックリしたけど、嬉しくて感極まっちゃったのは事実なんでしょ?」
「う、はい……」
「初めて体を繋げたってことを、こんなにも喜んでくれる恋人が居て、俺はなんて幸せ者なんだろう。って思ってた」
 気にすることはないというつもりで口に出したが、どうやら逆効果だったらしい。
「そう言われちゃうと、なんか申し訳ないような気もしてくるんですけど……」
 また少し困ったように顔を曇らせながら言われた言葉の意味は、正直よくわからなかった。
「申し訳ないって、どうして?」
「だって多分俺、修司さんが俺を好きって、きっとどこかでちょっと疑ってたんですよ。修司さん優しいから、俺の好きを受け入れてくれて恋人にしてくれたけど、でも安眠に必要で手放せないからって理由も少しくらいはあるんだろうなって思ってて」
「不安にさせてた?」
「不安、だったのかな? あまり不安だった自覚はなくて、でも、もっともっと必要とされたいって、頑張ってたとこはあります」
 ずっと色々と頑張ってくれてたのはもちろん伝わっているけれど、その根底に、もっと必要とされたい気持ちがあったからだなんて、こうして言われるまで考えもしなかったことを恥じる。
「俺が抱かれる側になろうと思ったのだって、元カノに対抗する気持ちが無かったとは言えないし、俺の体で気持ちよくイカせられたら自信が持てそうな気がしてたからで、でも今日、俺が上手く出来なくて、途中から修司さんが変わって俺を抱いてくれて、可愛いって言って貰って、繋がれる場所、汚いとか気持ち悪いとか思わないよって言ってくれて、いっぱい弄ってくれて、その間ずっと俺のこと愛しそうに見てたし、ちっとも萎えないの見てたら、俺、本当に、」
 またじわじわと涙が滲んできた目元をそっとぬぐってやりながら。
「俺がどれだけケイくんを愛してるか、実感できた?」
 はいと頷かれて、申し訳ないのはこっちの方だと思う。
「ごめんね。言葉も、態度も、足りなすぎたね。ケイくんが男の子で、しかも俺よりよっぽど男前でカッコイイから、俺が受け身で居たほうが扱いやすいのかと思ってた。でもそうじゃないってわかったから、これからは俺ももっと、ケイくんを甘やかすの頑張っていくね」
「でも俺、多分、甘えるの、下手なんで。見た目可愛い系なの自覚あるんですけど、だからこそ可愛いって思われるんじゃなくて、カッコイイとか、頼りになる男目指してたから、甘やかすの頑張られても、きっと上手に甘えられない、です」
 むしろ男前でカッコイイって言って貰えたのが嬉しかったとはにかまれたら、ますます頑張らねばと思ってしまうし、我儘な恋人に散々振り回されても全く苦にならないどころかそれが愛しいと思っていたような男が、恋人にどれだけの情を注ぐのか思い知ればいいとも思う。
 必要がなさそうだとか、むしろ嫌がられそうだと思っていただけで、相手の機嫌を探って尽くすことも、本来はそう苦手ではない。今日、修司が積極的になったことで、あんなにも可愛らしい姿が色々と見れたのだから、尽くし甲斐もあるだろう。
「あのね、ケイくん。ケイくんが下手くそに甘えてくれるの、絶対に嬉しい自信がある」
「ちょっ、それ、」
 ずるいとぼやかれたけれど、狙い通りの反応だ。
「それと、ケイくん自身、その身を持ってわかってると思うんだけど、こうやって喋ってても一切萎えてないくらいには、俺も、男としての欲がはっきりあるんだよね」
「う、あ、それは、はい」
「だからね、俺に愛されることにも、これから否応なく慣れてくはずだし、これから先、ケイくんがちょっとずつ俺に愛されることを覚えていってくれるんだって思うと、楽しみでたまらない」
「ううっ、お手柔らかに、お願いします」
 既に結構限界ですと、真っ赤になった顔を隠すように抱きつかれてしまった。

<終>

 
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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ19

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 足を抱えられて、再度、受け入れる穴に先端が押し付けられる。ハッとして思わず開いた股間の間を覗き見てしまったが、最後の方は尻穴だけ弄られていたのにしっかり反応している自身の息子が邪魔をして、相手の状態はよくわからない。
「どうかした?」
「あ、いや……」
「まだ怖い?」
「じゃなくて。お前、」
「俺が?」
「あー……ゴム、着け直したり、しないんだ、って、思って」
 それはつまり、結構長々と弄られていたはずのその間、着けたゴムが緩んだり外れたりはしなかった、って事なんだろう。
「まぁ、着け直す必要なさそうだから。てかもしかして引かれてる?」
「ひく、っていうか……」
「好きな子に受け入れて貰うための準備で、相手が少しずつ感じてくれるようになるのを目の前にして、萎える要素なんてないんだけど?」
「あー、うん、うん、まぁ、それは」
 そうなんだろう、というのはわかる。頭では理解できる。でもなんか、実感が湧かないというか、この体を弄っているだけで興奮が持続するらしいという事実が受け入れがたいというか、要するに、どうにも気持ちが落ち着かない。
「俺としては、俺が全く萎えなかったことを、自分にはそれだけの魅力があるんだって自信を持つか、俺にそれだけ愛されてるって喜ぶかして欲しい所だけど」
「あ、いされ、て……!?」
 好きだとは言ってもらったが、愛されているって何事だと慌ててしまえば、そんな驚かないでよと苦笑された後。
「俺の好きは、恋情ってより愛情だよ。とっくにね」
 照れるでもなくシレッと、愛してるよと柔らかに零す相手に思わず見惚れてしまったその瞬間、グッと相手の腰が押し付けられて、散々弄られた穴が相手を迎え入れるようにクプッと開くのがわかった。
「ふぁあっっ」
 耐える準備が全く整って居なかった口から、押し出されるまま声を上げると同時に、多分、先端の膨らみが通り抜けた。思ったよりすんなり入ってしまった、というのが正直な感想で、入っているという違和感はもちろんあるけれど、痛みなどはない。
「大丈夫そうだね」
 一旦止まって様子を窺う相手も、こちらのダメージのなさにはすぐに気付いた様子で、すぐにそのままググッと押し込まれてくる。たっぷりローションを使われているせいか、感覚的にはヌププと滑り込んでくるようだったけれど。
「ぁぁあああああ」
 やっぱり閉じ忘れた口からは、押し出されるみたいに声が漏れてしまったけれど、反射的なもので痛いとか苦しいとかはあまりなかった。さっきまで散々指で弄り回されていたからか、指程器用に動かない分、ただ、そこにあるのを感じているだけに近い。
 慣らした所で苦しい目にはあうんだろうと思っていたせいで、安堵よりも若干拍子抜けなのは否めなかった。しかもそんなこちらの気持ちは、相手にもだだ漏れらしい。
「ねぇ、これ、間違いなくただの俺の劣等感のせいなんだけど、なんだこんなもんか、みたいな顔されると、結構困る」
 根本まで埋めたのか、相手の腰が尻タブに密着した後、相手の顔が近づいてきてそんな事を言う。言葉通り、少し困った様子の苦笑顔で。
「あ、いや、ゴメン。お前がいっぱい慣らしてくれたから、ってのは、わかってる、から」
「ああうん、それは理解してくれてありがとう。ただ、困るってそういう話じゃないっていうか」
「え、じゃあ、何が?」
「大きけりゃ大きいなりの使い方があるんだろうけど、それはこっちも同じなんだよね、っていう」
「え? は? 何の話?」
「つまり、こんなもんか、なんて顔されたら、そのコンナモンで、うんと感じさせてやりたくなるから、困ったね、と思って」
 意地悪されたって泣かれたくないんだけど加減が難しいなんて続く言葉に、全く想定外の不安が湧き出す。ここにきて、テクには自信あります的な宣言に近いものを出されても、こっちこそどうしたらいいかわからなくてめちゃくちゃ困る。

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いつか、恩返し16

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 今だから言う、というのは、今日あたりいい加減抱かれることになるだろうという予測を、肯定されたようなものでもある。そう思った矢先に、短な宣言が伝えられる。
「抱くね」
「ああ」
 頷けばアナルから相手の指が引き抜かれていき、暫くして、今度はペニスの尖端が押し当てられるのがわかる。期待と興奮と混じりに見上げてしまう相手の顔は、自分と同じように期待と興奮とが混じっているみたいだった。さすがにもう、キラキラとした輝きはない。
 目があって、少しの間黙ったまま見つめ合う。先に口を開いたのは、相手の方だった。
「楽しみ?」
「そりゃあな。お前は?」
「もちろん楽しみでもあるけど、」
「あるけど?」
「嬉しいって気持ちがとにかく強いかな」
「ちょっと気が早くないか? まだ入ってないのに」
「確かにそうなんだけどさ」
 苦笑する相手の顔が、前屈みに寄ってくる。両手を伸ばして相手の肩を掴み、相手を引き寄せると同時に、自分自身も軽く身を起こして、相手へと顔を寄せた。
「ね、好きだよ」
 柔らかな笑いに変えた相手が、甘い声で囁いてくる。
「……俺も、」
 好きだ、とまでは言えなかったが、それは相手に唇を塞がれたからにすぎない。
 軽いキスを何度か繰り返している中、ぐっと足を抱え直されて、くる、と思う。その直後、ぐぷっと太く熱い塊が押し込まれたのを感じた。
「ぁうぅっ」
「痛い?」
「いた、くなっ」
 痛くはない。でも指とは違う質量が、相手のペニスが、自分の体を押し開いて貫いていく、というのを意識せずにいられない。多分、体にかかる圧のせいだ。こんな風にのしかかられるみたいな格好で、解されたことはなかったから。
「痛かったら、言ってよ」
「ん、ぁ、ぁああぁあ、ああ」
 こちらが頷くのも待たずに、そのまま体重をかけられて、ぬぷぷと体内に相手のペニスが沈んでいく。それを感じながら吐き出す息は、戸惑いの交じる情けない音を乗せている。
「おまっ、おまえっ」
 ほぼ一息にきっちり最後まで繋がってきた相手の動きが止まって、文句の一つも言ってやろうと口を開いたけれど、上手く舌が回らない。強い痛みは確かになかったが、それなりに動揺はしていた。
「ゆっくりするより、こっちのが楽かと思って。経験的に」
 経験的にだなんて言われてしまうと、こちらは返せる言葉がない。
 彼を初めて抱いた時、めちゃくちゃ気を遣ってゆっくりと挿入したけれど、確かにずっと、ふぅふぅ荒い息を繰り返しながら辛そうな顔を見せていた。大丈夫って言いながら無理やり笑顔を作る姿に、胸を締め付けられるような思いだってした。さっさと繋がってしまった方が楽だった、と言われても納得ではある。
 不満を残しながらも口を閉じてしまえば、相手は少し困ったように笑って、ゴメン嘘、と続けた。
「うそ、って?」
「ゆっくり挿れてあげたかったけど、無理だった。思ったより難しい」
「思ったより?」
「ごめん。これは意図的に隠してたんだけど、ほんの数分前まで、童貞だった」
 はぁあああと声を上げたら、どうやら腹筋にけっこうな力が入ったらしい。その結果、二人同時に呻く羽目になった。

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