いつか、恩返し16

1話戻る→   目次へ→

 今だから言う、というのは、今日あたりいい加減抱かれることになるだろうという予測を、肯定されたようなものでもある。そう思った矢先に、短な宣言が伝えられる。
「抱くね」
「ああ」
 頷けばアナルから相手の指が引き抜かれていき、暫くして、今度はペニスの尖端が押し当てられるのがわかる。期待と興奮と混じりに見上げてしまう相手の顔は、自分と同じように期待と興奮とが混じっているみたいだった。さすがにもう、キラキラとした輝きはない。
 目があって、少しの間黙ったまま見つめ合う。先に口を開いたのは、相手の方だった。
「楽しみ?」
「そりゃあな。お前は?」
「もちろん楽しみでもあるけど、」
「あるけど?」
「嬉しいって気持ちがとにかく強いかな」
「ちょっと気が早くないか? まだ入ってないのに」
「確かにそうなんだけどさ」
 苦笑する相手の顔が、前屈みに寄ってくる。両手を伸ばして相手の肩を掴み、相手を引き寄せると同時に、自分自身も軽く身を起こして、相手へと顔を寄せた。
「ね、好きだよ」
 柔らかな笑いに変えた相手が、甘い声で囁いてくる。
「……俺も、」
 好きだ、とまでは言えなかったが、それは相手に唇を塞がれたからにすぎない。
 軽いキスを何度か繰り返している中、ぐっと足を抱え直されて、くる、と思う。その直後、ぐぷっと太く熱い塊が押し込まれたのを感じた。
「ぁうぅっ」
「痛い?」
「いた、くなっ」
 痛くはない。でも指とは違う質量が、相手のペニスが、自分の体を押し開いて貫いていく、というのを意識せずにいられない。多分、体にかかる圧のせいだ。こんな風にのしかかられるみたいな格好で、解されたことはなかったから。
「痛かったら、言ってよ」
「ん、ぁ、ぁああぁあ、ああ」
 こちらが頷くのも待たずに、そのまま体重をかけられて、ぬぷぷと体内に相手のペニスが沈んでいく。それを感じながら吐き出す息は、戸惑いの交じる情けない音を乗せている。
「おまっ、おまえっ」
 ほぼ一息にきっちり最後まで繋がってきた相手の動きが止まって、文句の一つも言ってやろうと口を開いたけれど、上手く舌が回らない。強い痛みは確かになかったが、それなりに動揺はしていた。
「ゆっくりするより、こっちのが楽かと思って。経験的に」
 経験的にだなんて言われてしまうと、こちらは返せる言葉がない。
 彼を初めて抱いた時、めちゃくちゃ気を遣ってゆっくりと挿入したけれど、確かにずっと、ふぅふぅ荒い息を繰り返しながら辛そうな顔を見せていた。大丈夫って言いながら無理やり笑顔を作る姿に、胸を締め付けられるような思いだってした。さっさと繋がってしまった方が楽だった、と言われても納得ではある。
 不満を残しながらも口を閉じてしまえば、相手は少し困ったように笑って、ゴメン嘘、と続けた。
「うそ、って?」
「ゆっくり挿れてあげたかったけど、無理だった。思ったより難しい」
「思ったより?」
「ごめん。これは意図的に隠してたんだけど、ほんの数分前まで、童貞だった」
 はぁあああと声を上げたら、どうやら腹筋にけっこうな力が入ったらしい。その結果、二人同時に呻く羽目になった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

いつか、恩返し11

1話戻る→   目次へ→

「先っぽ入ったけど、このまま奥まで入ってみても平気そう?」
「ん、いい、よ」
 頷かれるのを待って、相手の足を抱え上げた。それを更に持ち上げるようにして、ゆっくり体重を掛けて行けば、ぬぷぷとペニスが飲み込まれていく。
 自分の下で、従兄弟が首まで赤くしながら、ふぅふぅと荒い息を繰り返している。辛そうな顔だと思ったが、腰を止めて様子を窺えば、大丈夫と言いながら笑って見せる。どうしたってむりやり作ったとしか思えない笑顔に、きゅっと胸が締めつけられる気がした。
 健気、だとか、いじらしい、だとか。そんな単語が頭の中をまわる。
 なんでそこまで自分を想ってくれるのかわからなくて、でも、嘘でもからかわれているのでも好奇心でもなく、彼に想われている事だけは、確かに伝わっていた。
 こんな彼を抱きしめてキスしてやりたい気持ちは、きっと好奇心なんかではない。ただ、でも、それが恋情なのかは、やっぱりわからなかった。だから、こんな曖昧な気持ちによる衝動で、抱きしめてキスしてしまっていいのかも、実のところよくわからない。
 けれど同じ想いなど求めず、好奇心でいいと言い切る彼にしてみれば、こちらの感情がなんであれ、しないよりはしてくれた方が嬉しい、と思うだろうこともわかっていた。とはいえ、この中途半端な挿入状態では、抱きしめるのもキスするのも難しい。
「痛めつけたいわけじゃないんだから、あんま無理はすんなよ」
 まずはしっかり繋がってしまえと、それだけ伝えて更に体重を掛けていく。相手はやっぱり苦しげな息を繰り返していたけれど、痛いとも辛いとも止まってくれとも言わないので、そのまま互いの肌がぴたりとくっつき合うまで押し込んでしまう。
「はい、った?」
「入った」
「ど? きもち、ぃ?」
 気持ちいいよと返せば、ホッとした様子で良かったと笑われて、またしても胸がきゅっとなる。相手は気持ちよくなんてないだろうと思うから、余計に胸が締め付けられる気がする。
「もちょっと、待て、る?」
 馴染むまでもう少し待って欲しい、ということらしい。当然、そのつもりでいた。
 ああと頷いて、それからようやく、なるべくゆっくり体を前傾させていく。相手の体の負担がよくわからないから、動作はきっと極力ゆっくりな方がいいだろう、という判断だった。
 おかげで、こちらを見上げる相手の顔が何をする気だと訝しげなものへ変わるのも、途中でこちらの意図を察したらしくじわっと驚きへ変わって行くのも、全て見てしまった。唇が触れる少し前、期待を混ぜた瞳が泣きそうに潤んでいたことさえも。
 キスはもう何度も繰り返している。相手の口内の弱い場所だって知っている。ちゅっちゅと何度も唇を吸って、招くように開かれた隙間に舌を差し入れて、感じる場所を擽ってやれば、甘い吐息を漏らしながらキュッキュとペニスを締め付けてくる。
 キスをしながら相手の胸に手を這わせ、小さな膨らみを捉えて指先で捏ねれば、ビクビクっと相手の体が跳ねた。抜きあう時にもたまに弄ってみたりはしていたが、こんな反応は初めてだ。もちろん、繋がる場所もきゅうきゅうと収縮を繰り返している。
「すごいな。今日は、胸も感じてる」
「ぁ、ゃっ、なん、で」
「なんでだろ? 俺も知りたい」
 指でこの反応なら、舐めたらどうなるんだろう。そんな衝動のままそこへ顔を寄せていけば、ダメっという声が耳に届く。
「なんで? 舐められるの、いや?」
「いや、っていう、か」
「舐めたらもっと気持ちよくなれそう」
「え、お前、が?」
 そうだと言ったら間違いなく、じゃあ舐めていいよって言われるんだろう。胸の奥が甘く疼いて仕方がない。
「お前も俺も、だよ。お前が気持ちよくなったら、俺も気持ちぃ。お前が気持ちぃとここがキュッキュってなる」
 ここ、と言いながら彼の中に埋まったペニスを意識させるように、軽く腰を揺すってやった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

いつか、恩返し10

1話戻る→   目次へ→

 多分、穴だけ差し出してこちらが気持ちよくなるだけだって、彼にとっては充分に満足する、好きな子とのセックスだ。こちらが抱かれる側になったって、こちらの快楽優先で抱いてくれる気でいるだろう。それは先程の会話からも明確だった。
 でもごっこだろうと、こちらにはっきりと恋愛感情だと言えるような想いがなかろうと、自分たちは恋人なのだ。今しているのは恋人同士のセックスだ。
「ごっこだろうとフリだとうと、恋人には違いないんだし、」
「ああ、うん。そうだね。わかった。いいよ」
 こちらの言葉を遮るように口を開いた相手は、続けてと先を促してくる。
「でも、さすがに前立腺いじめ抜かれる、みたいなの想定外だから、加減はしてよ。そんなとこ、自分で弄ったことなくて、自分がどうなるかわからないのは、ちょっと不安なのも、知っといて」
 なるほど、そういう理由で躊躇ったのか。
「ん、わかった。お前にしんどい思いさせたいわけじゃないし、いじめ抜く、なんて考えてない」
「ホントかよ。中弄られて感じる俺が面白くってやりすぎた、とか、ありそうで怖い」
「しないって。多分」
 多分は絶対に余計だった。相手はやっぱり諦めのにじむ呆れた息を吐きながら、ホント頼むよと念を押して、それから続きを待つように口を閉じた。
 釘を差されているので、そこばかりをしつこく弄ってしまわないように気をつけながら、指で中を探る行為を再開する。
「ぁっ…………ぁ、……ぁあ……」
 指先の動きに釣られるように、甘やかな吐息がゆるりゆるりと溢れでるのは確かに楽しい。
「ん、ぁっ、あぁっ」
 少し激しく動かせば、声も体もちゃんと大きな反応を返してくるのだって、楽しい。
 指を増やして拡げる動きに変えても辛そうな様子はなく、指の動きに合わせて甘い声を零すのも、体を震わせ腰が揺れるのも変わらなかったが、放射状に寄る皺が伸びてぐちゅぐちゅと濡れた音を立てる穴の卑猥さは格段に上がったと思う。
 ここに自分のペニスを入れて、現在指で感じている圧と蠢きを今度はペニスで感じるのだと思うほどに、興奮が増していく。
「な、も、じらさない、で」
 その声にハッとして、思わず指の動きを止めてしまった。耐えられなくなったら、その言葉で先を誘ってくれと言ったことは覚えている。
 でもどう見ても、もう耐えられなくてというより、こちらの興奮を読み取っての誘いだろうと思った。
 まぁ、相手の余裕を奪うような弄り方はせずにいられた、という意味でなら、安堵しておくべき場面かも知れないけれど。
「なぁ、も、いいだろ。も、入るよ、多分」
 だから挿れてと誘う相手に、そうだなと返しながら、埋めていた指をゆっくりと抜いていく。そしてその指が抜けた穴に、今度はペニスの先端を押し当てた。
「挿れる」
 そんな短い宣言には、うん、と小さな頷きが一つ返っただけだったけれど、さすがにもうそれ以上の言葉は不要だ。
 ぐっと腰を押し出すのに合わせて、尖端がアナルを拡げてくぷっと入り込んでいく。
「んっ……」
 少し苦しそうかとは思ったが、腰を引いたりはせず、そのままアナルを押し広げてまずはカリ首まで押し込んだ。一番太い部分を飲み込んで大きく広がったアナルが、今度は包み込むように窄まってくる。
「ぁっ……」
 どうやら相手もそれは感じ取れているらしい。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

追いかけて追いかけて29

1話戻る→   目次へ→

 好きだとか可愛いだとか繰り返されながら、慈しむみたいな手付きで肌の上を撫でられて、なのに体は簡単に昂ぶっていく。これが彼に、恋人に、愛される行為なのだと、巧みに意識させられ続けているからだ。
 いつの間にやら仰向けに転がされて、自らの意思で足を開いて、恋人に秘所を差し出している。薄いゴムとたっぷりのローションを纏わせた指は、欠片だってこの体を傷つけない。
 乾いた指をむりやりねじ込まれる痛みを思い出して竦んでいた体は、気持ちの準備が整うまでは入れたりしないと宣言されて、その言葉通り、ひたすらアナルとその周辺をぬるぬるな液体まみれにされて、クチュクチュと撫で突かれている間に弛緩した。むしろ早く入れて欲しいとだんだん体が焦れていたから、彼の指がようやく、想像していたよりずっと簡単にするりと体内に入り込んだ時には、いろいろな意味で安堵の吐息を漏らした。
 わきあがる羞恥も快感に変わることを教え込まれながら、小指一本の細さから焦れったいくらいにゆっくりと慣らされて、じわじわと拡げられていく。大好きな男の手によって、より深く愛されるための体に作り変えて貰う。
 彼は酷く辛抱強く、また、どこまでも優しい愛に溢れている。想像通りな気もしたし、想像以上でもあった。
 彼も既に裸なので、股間で反り立つペニスだって丸見えだったけれど、チラチラと視線を向けてしまうこちらに苦笑はしても、早く君の中に入りたいなとうっとり口にしながらも、慣らし拡げる行為を急ぐことはなかった。あまりの焦れったさと、早く入りたいの言葉に触発されて、こちらから早く入れてと頼んでも、上手に躱して宥めてこちらの言葉に流されてくれることもなかった。
 彼と恋人になるというのは、彼に愛されるというのは、こういうことなのだと身をもって知らされていく。刻み込まれていく。
 長い時間をかけてようやく彼と繋がったときも、圧迫感はあっても痛みは予想よりも遥かに少なかった。大事な恋人に痛い思いなんてさせたくないからと繰り返された、先を急ぐこちらを宥める言葉を思い出して胸が詰まる。
「いっぱい焦らしちゃったもんね。俺も、嬉しいよ」
 愛しい子とやっと繋がれたと言って、ふにゃっと崩した笑顔に胸の中で膨らんだ何かが弾ける気がした。
「すき、です」
「うん。俺も好き。やっと、言ってくれたね」
 このタイミングだなんて可愛すぎだよと笑いながら、流れてしまった涙を彼の指先が拭っていく。
「好き」
「好きだよ」
「好きです」
「俺も。すごく好き」
「だい、すき」
「ありがとう。嬉しい。愛してる」
 ふにゃふにゃと嬉しそうに笑う顔にどんどん涙腺が刺激されて、次から次へと涙があふれて止まらない。好きだ好きだとこぼすのも止められなくて、でも、どうしようという焦りも胸の中で広がっていく。
 これは一度限りの思い出になるはずの行為なのに、彼がこんな風に愛を注いだ相手が少なくとも二人いることに、バカみたいな嫉妬をしている。これから先、彼が別の誰かを愛して、その相手にもこんな風に優しく愛を刻み込むのかと思うと、やりきれない焦燥に胸が熱く焦がれていく。
 これは抱えてはいけない感情で、決して表にこぼしてはいけない想いだとわかっているのに、好きだ好きだとこぼすことを覚えてしまった体は、自覚してしまった抱えた想いを隠すことが出来なくなっていた。
「や、やだっ、も、いや、だ」
 好きだ好きだと甘ったるく繰り返しこぼしていた口から、唐突にそんな言葉を漏らされて、相手が驚き焦ったのがわかる。
「ん、なに? どうしたの? 何がいや?」
 探るようにぐっと顔を寄せて覗き込まれ、近づいた体に両腕を伸ばした。簡単に捉えた、意外と筋肉のついた細い体をぎゅうと抱きしめ、逃げるようになけなしの腹筋に力を込めて、その胸元に顔を寄せて隠す。
「ぅ゛う゛っっ」
「ちょっ、無茶しないで」
 強引に動いたせいか、繋がった場所の圧迫感の変動に小さく呻けば、焦った声とともに少しばかり浮いた背中に彼の腕が回されて、宥めるみたいに何度も背を撫でられた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

まるで呪いのような18

1話戻る→   目次へ→

 あんなに泣かれても止められないくらいやっぱりお前を抱きたいし、あんなに泣きまくったくせにそれでもまだちゃんと俺に抱かれてくれる気でいるお前の、泣きまくって酷くなった顔が可愛くないわけないだろと彼は続ける。その後、笑わせたいし、泣かせたくないし、でも泣かせたら泣かせたでこんなに可愛いと言って、真っ赤に腫れているだろう目元にそっとキスをくれた。
「ほ、本気で、言ってる?」
「言ってる」
「ホントに、萎えない?」
「萎えない。むしろギンギン」
 手を取られて彼の股間に導かれれば、ゴムの膜を被った熱の塊に指先が触れる。握ってと促されて、おずおずとその熱を握りしめた。
 初めて触れる自身以外の勃起ペニスは、ゴムを装着済みというのもあってか、やっぱりなんだか得体が知れないもののように思えたし、これが今から自分のお尻の穴に入ってくるのだと思うとどうしても体が震えそうになる。
「悪ぃ。怖がらせるつもりじゃなかった」
 握る手をそっと剥がされた後、今度はその手を強めに引かれて、少しばかり浮いた体を抱きしめられた。ギュッと背に回る腕に力が入って、互いの肌が密着して気持ちが良い。抱き返しながら、ホッと安堵の息を吐いた。
 好きだ、好きだよ、と繰り返してくれる優しい声は、やっぱり自分のためにと彼が与えてくれるものだけど、でももう、それでいいって十分に知ってる。好きだと言われるたびに頷いて、時々自分も好きだと返せば、やっぱり相手も頷いてくれた。
 ああ、なんて、嬉しい。こういう時間を、ずっと彼と持ちたかったんだなって、しみじみと思う。
「ありがと。落ち着いた。怖くなくはないけど、も、多分、大丈夫」
 だから挿れてと言えば、少し浮いたままだった背がベッドマットの上に降ろされ、なんどかチュッチュと唇を吸われたあとで彼が上体を起こしていく。足を開かれ腰を抱えられて、その場所に彼の熱の先が触れた。
 穏やかに抱き合って好きって言い合っている間も、萎えたりはしなかったらしい。その状態でオアズケされる苦しさがわからなくはないから、彼がくれた優しさも気遣いも、やっぱり嬉しいばっかりだった。
「挿れる」
「うん」
「我慢できないくらい痛かったら、言って」
「うん」
「息吸って」
「え、う、うん」
「吐いて」
 言われるまま息を吸って吐いてしている中で、少しずつ先程まで散々指で弄られ拡げられていた場所に、また圧がかかって拡げられていく。
「ぁ、っ……あぁっ……んんっっ」
「息して。吸って」
 もれ出る声が恥ずかしくて隠そうとしたら、必死な声が息をしてと促してくる。思わず見つめてしまった相手は、切羽詰まった顔でこちらを見下ろしていた。
 彼を受け入れる自分だけが大変な思いをしているわけじゃない。彼もまた、早く抱きたい繋がりたい自分のものにしたいって衝動と戦って、なるべく乱暴にしてしまわないようにと努めてくれているのだ。それがわかって、嬉しいのに、なんだか胸が詰まる。
 またじわっと涙が浮いてしまったけれど、でも多分顔は笑っているだろう。頷いて、言われた通りに、息を吸って吐いてを頑張って繰り返す。相手は一瞬躊躇う様子を見せたけれど、なにも言わずにまた少しずつ、奥へ奥へと入ってきた。
「はい、った」
 尻タブに彼の腰が密着している。涙でぼやぼやになった視界で相手を必死に見つめながら、何度も首を縦に振って、もういいよねって気持ちで腕を伸ばした。
 やっと繋がれた彼に、自分も触れたい。触れて、そしてぎゅって抱きしめてほしかった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

竜人はご飯だったはずなのに22

1話戻る→   目次へ→

 スリットは彼の性器を収めている袋であって、人間の女性の膣とは全く違う。自分が突っ込む側でのアナルセックス経験はないが、筒状の直腸はやはり膣に近いはずだし、自分の体感からしてもそうだろうなと思う。
 つまり何が言いたいかというと、スリットは射精を促すように、グニグニとペニスを締め付けてはくれないってことだ。ただ、ヌルヌルな粘液で満たされた中で、彼のペニスと自分のペニスが触れ合い擦れる刺激は悪くなかった。
「ぁ、う、うぁっ、ぁあっ」
 腰を突き入れるたびに、自分よりも体の大きな竜人が、戸惑いの滲む甘えたような声をあふれさせているのもたまらない。
「は、っはぁ、どうよ。痛いとか、しんどいとか、あるか?」
「それは、大丈夫そう、だ」
「ん、なら、もーちょい動く。やな感じしたら、教えろよ」
 単調な突き入れを止めて、どうすれば相手がもっと気持ちよくなれるかを探るように、腰を揺らしてペニスで中をかき回した。
「んぁっ」
 指を突っ込んで弄った時に、反応が良かった場所をペニスの先で狙って突いてみれば、思わずと言った様子の高めの声が漏れ落ちる。
「やっぱここ、か」
 スリット内の彼のペニスは、発情時に比べれば十分に小さいのだろうけれど、それなりに太さも大きさも硬さも保持している。
 実のところ、コツさえ掴めば強引にスリットから剥き出すことも可能だし、そうやって確かめた平時の彼のペニスは、人基準ならやや小ぶりかも程度の立派さがある。その状態を維持して貰えれば、それで尻穴を犯してもらうことも可能かな、なんてことを考えてしまった程度に魅力的だったけれど、さすがに提案したりはしなかった。
 まぁ、どれくらい維持できるのか試すみたいに、維持できなくなるまででいいからしゃぶらせて、っていう提案はしたけれど。結果、繋がる前に相当焦れきってなきゃ、その時間でイクのは無理だなって思ったから、尻穴で扱かせてなんてことは言わずに済んだってだけなんだけど。
「ぁあっっ」
 いくつもある段差の、一番付け根に近いところへペニスの先を押し当て、グッグと何度か押し上げたあと、ずりりとその段差を捲るように一つ上の窪みへペニスを滑らせてやった。
「……ぁあっ……あああっっ」
 段差の下部分が敏感で、ずりっと段差を捲られるのが、かなり弱いらしい。しかも感度はペニスの先端に近づくほど高くなる。そうやって段差を捲るたびに、堪えきれない嬌声が溢れてくる。指で弄るより、ずっと強く押し付け擦り上げている自覚はあるから、甘く吐息をこぼす程度じゃ収まらないんだろう。
 何かに耐えるように、脇に投げ出されている手がシーツをキツく握りしめていた。
「ツライ?」
「いい」
 多分、大丈夫という意味だろう。
「善いのか? きもちぃの? まだダイジョブ? もっとして、いい?」
 コクコクと頭が縦に揺れたけれど、どれに対する肯定かを確認するほど意地悪くはない。
 一度少し腰を引いて、また根本に近い部分から順に、段差を抉るように刺激してやる。先端まで到着したら、もう一度根本から。そうやって何度も自分のペニスを使って、相手のペニスを可愛がってやる。
 相手は何かに耐え続けながらも甘く啼き続けていて、もうやめてくれとは一切言わなかった。けれど、キモチイイからもっともっと続けて、という様子ではないのもわかっている。
 自分自身のペニスも気持ちはいいが、射精しそうだという感覚はやはり起こっていない。繁殖期ではなく薬も使用していない相手だって、当然射精はしないだろう。
 こちらの体力が尽きるまで、もしくは相手が刺激に耐えきれなくなるまで。やはりそれが終わりの目安だろうか?
 結構アレコレ指でも舌でも弄り回したけれど、自分が尻穴で絶頂を極めるように、彼がスリットで絶頂を極めたことはない。強い刺激にいつも以上に乱れた姿を見せてくれているけれど、だからって彼自身が全く未知の絶頂へ、連れていってやれるとは思えない。もちろん、いつかそうなればと思う気持ちはあるけれど。
 だとしたら、自分自身がイクことを目指すほうが、まだ可能性がありそうだと思った。間違いなく精液なんて出ないけど、大昔、射精を覚えてバカみたいにオナニーしまくっていた頃、白いものなんてもう出ないってほど出しまくった後で、精液を出さずにイッたような記憶がおぼろげにある。さすがにあれはやりすぎだったが、あんな感じで、射精しなくても絶頂に到れるんじゃないだろうか。
「なぁ、俺が気持ちぃように、動いてみて、いいか?」
「ぁあ……もちろん、だ」
 どこかホッとした様子を見せるから、やっぱり相当キツかったんじゃないかと思って苦笑する。
「じゃ、お言葉に甘えて。けど、止めてくれってときは、ちゃんと言えよ」
 わかってると返った言葉の信憑性はやっぱり薄そうだと思ったけれど、取り敢えず、相手を刺激する動きから、自分自身の気持ち良さを探っていく動きに変えた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁