追いかけて追いかけて28

1話戻る→   目次へ→

 それなら恋人として触れるし、たくさん好きって言っちゃうよと続いた言葉にも同じように頷いて見せれば、さっそく甘ったるく名前を呼ばれて好きだと囁かれる。宥めるみたいに頭を撫でてくれていた手が、そのままするりと首筋を下りて来て、肩と腕をゆるりと何度も撫でさする。同時に、項やら耳の裏やらに繰り返し唇が落ちて、ただ柔らかに唇を押し付けられるだけのキスに、やっぱり穏やかな快感が広がっていく。
「これが、恋人?」
 ただただ優しい接触には、性的な匂いがあまりない。思わず尋ねてしまったのは、まさかこのまま好きだの可愛いだの言いまくったら、相手は満足して終わるのではと思ったせいだ。
「そうだけど。だって恋人が泣いてるのを放っては置けないよ」
「泣かないで、とも、どうして泣くの、とも、言わないから、まさか泣いてるの慰められてるって、わからないです、よ」
「結果として、こうして話せるくらい落ち着いてくれたんだから、なんの問題もないけど」
 泣いてる理由多分わかってるし、何で泣いてるのなんて聞いたらもっと泣かせちゃうだけでしょと続けながら、肩と腕を撫でていた手が胸側に回ってくる。
「落ち着いたなら、耳以外のキモチイイとこも、探させてね。あと、照れて素直に言えないのもそれはそれで可愛いんけど、できればあんまり遠回しじゃなく、君の好きも伝えてほしいかな」
 本当は君の声ではっきり好きだって言われてみたいと言われて、抱える好意は認めてきたし好意はあるという言い方はしてきたが、好きですと伝えたことはないのだと気付いた。それくらいならすぐにでも叶えてあげられそうだ。そう、思ったのに。
「いいよ、無理しなくて。言おうとしてくれただけで、十分嬉しいから」
「いやその、無理とかじゃ、なくて……」
 好きですのたった四文字を、音にして相手に伝えることがこんなに難しいなんて思わなかった。たくさん好きって言うよと宣言済みの相手からは、すでに何度も繰り返されているのに。
 あなたが好きです。ちゃんと好きです。こんなに好きですって、はっきりと言葉で伝えたいと思うほどに、むずむずとした恥ずかしさが込み上げてしまって口から出すのを阻んでくる。
「意識したら余計に恥ずかしくなった?」
「それは、はい……」
「耳まで真っ赤だもんね」
 ふふっと笑う吐息が耳に掛かって、なんだかますます恥ずかしい上に、じわっとそこに熱がたまる気がした。
「ほんと、嬉しいよ」
「えっ?」
「意識して貰えるのが。俺に好きって言おうって、思って貰えたのが。結局言えなくて、照れちゃうとこもね。さっきまでは見せてもらえなかった姿だから」
 こうして触れてる間にももっと好きになるよなんて楽しげに言われながら、弄られて反応したらしい胸の先を摘ままれ息を呑む。
「可愛い反応だね。俺を好きって意識して、感度上がってるかな?」
「わ、わか、っな」
「何度だって好きって言うから、もっともっと、俺を好きって意識してね。俺たちが今、恋人同士なんだってことも、君は今、大好きな恋人に抱かれようとしてるんだってことも、うんと意識するといい」
「ぁ、ぁあっ……」
 わかってたつもりなのに、言葉にされて初めて、この状況への理解が追いついてくる気がした。背中から伝わる熱も、じわじわと快感を煽ってくる手も、優しい口調で話しかけてくれる声も。自分が知ってる彼のものであると当時に、大好きな恋人のものなんだって、頭が理解して体が反応を返す。キモチイイと言うよりはじんわりとした痛みを軽く感じる程度だった胸の先が、じれったく疼くような快感を生みはじめる。

続きました→

 
萌えたらポチッと応援よろしくお願いします。

1話完結作品/コネタ・短編 続き物/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す




Menu

HOME

TOP