追いかけて追いかけて27

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 たどたどしくも何が怖いかを伝えれば、相手からはやっぱり、わかってるよと返ってきた。傷つけたいとも悲しませたいとも思ってないことはわかっているのに、いちいち心揺らされて落ち込んでてゴメンねと、逆に謝られる始末だった。謝られたかったわけじゃないのに。また、余計なことを言ったのかもしれない。
「俺もう、話、しないほうが良くないですか?」
「なんで?」
「なんで、って……」
「俺は、聞きたいけどね。君の、本音」
「でも、その結果、あなた平静じゃ居られなくて、こんななのに」
「落ち込んで君の背中に張り付いてる俺に、幻滅しちゃう?」
「幻滅、は、しませんけど。でも、どうしたらいいかわからない、から」
「しないんだ」
 くすっと笑う気配のあと、ならもう少しだけ待ってという言葉が続いた。こうしている間にも、彼の中ではなにがしかの気持ちの切り替えが行われているらしい。だったら尚更、少し黙ってたほうが良さそうなものだけど。でもこちらが黙り込むのを阻むように、彼の方から話しかけてくる。
「さっき、罪悪感につけこむよって言ったの、さすがに覚えてるよね」
「はい」
「狡く悪く立ち回って、君に気づかせないまま、俺の好きなようにしていい。って君が言った事は? 覚えてる?」
「えっと、はい」
「嘘。忘れてたろ」
 確かに忘却の彼方ではあったけれど、言われてすぐに思い出せるくらいには新しい記憶だ。というかそれをわざわざ今言うってことは、彼にとってはこれも、罪悪感につけ込んでこちらに気づかせないまま、彼に都合よく展開された結果だってことなんだろうか。
 こちらが気に病まないようにという気遣いという可能性のが高そうで、そんなのにわかに信じられないんだけど。
「あなたが落ち込んでるの、演技には見えないんですけど」
「演技なわけ無いだろ」
 呆れた様子で否定された後、そういう話じゃなくてと彼の言葉が続いていく。
「俺が君のひどい仕打ちに打ちのめされて、気持ち揺らされて落ち込んで、こんな状態になってても君が大人しく腕の中に居てくれて、しかも気持ち悪いとも思わず、幻滅もしないって言い切ってくれるのはなんでだろうね。って話」
「悪い大人が罪悪感につけこんで、あなたを突き放せないように変えた、とか?」
「そうだよ。って言ったら信じられる?」
「いいえ」
「だよね。俺も信じない。というか自覚ない」
 はぁああと大きな溜め息が首筋に掛かって熱い。
「こんなにこんなに想われてるのに、俺が女性とも恋愛できるっていうその一点だけで、君と恋人になる未来を閉ざされてるかもなんて、あまりに不条理」
 気持ちに整理つけて諦めたくなんかないよねとぼやきながら、熱い息が掛かった項にそのまま彼の唇が押し当てられるのを感じた。触れられたところを起点に、サワワッと穏やかな快感が肌の上を広がっていく。
「でも君の言い分も一応は理解できるし、きっと強引に納得させて付き合ってもすぐに逃げられちゃうんだろうという予測もつくし、ここは諦めて手を引くのが得策だってのも、わかっちゃうんだよね」
 あーあ、とやっぱりぼやくような息が、背中から心臓を突き抜けてくるみたいで痛い。少しでも痛みを和らげようと、胸元を押さえて背を丸めようとて、相手の腕に阻まれた。そうだ。後ろから抱きかかえられているんだった。
 どうしたらいいのかわからなくて、代わりにギュッときつく目を閉じる。背中を向けているのに何を感じ取ったのか、宥めるみたいに頭を撫でられてじわっと閉じた瞼の隙間に涙が滲んでしまう。泣きたいのはきっと彼の方なのに。そう思うほどに、胸が苦しい。
「さっき、ここにいる間は恋人になってもいいって言ったのは、本気?」
 泣いてしまうのを耐えるように歯を食いしばっていたから、ハイと答える代わりに必死に首を縦に振った。

続きました→

 
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