親父のものだと思ってた32

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「はぁ……」
 詰めた息を吐きだして、体の力を抜こうとしているのがわかる。
 チラりとこちらを窺った視線と一瞬だけ目があったけれど、その目はすぐに伏せられて、ついでに顔も俯けてしまう。じわりと赤くなっていく耳先に相当恥ずかしいのだとわかって、俯かないで欲しいとは言えなかった。
 まぁ、顔が見れると喜べたのはわずかな時間でしかなかったけれど、向かい合っているのだからチャンスはまだある。それに相手の状況は、表情以外からだって色々伝わってくるのだから。
 ひっそりと繰り返される深呼吸に相手の緊張が伝わってきて、こちらも息を潜めてその先を待った。
「んっっ!」
「うっ……」
 クッと腰が沈んで、小さな呻き声とともに相手の体が硬直するのを見ながら、こちらもたまらず小さく呻く。
 相手は動きを止めているのに、ペニスの先端の膨らみが入り込んだ穴は、キュウキュウと何度も収縮している。先端部だけなのに、肉の筒に包まれ揉まれている快感と興奮とで、あっという間に射精欲が湧き上がった。
 それを鎮めるために、硬直したままの相手の体をじっと見つめる。相手の体の状況へ意識を向ける。
「どっか、痛い?」
 吐き出す自分の声こそが、痛みを堪えているかのように苦しげだ。痛いわけではないが、快感をこらえる苦しさは確かにあった。
「へ、いき。でも、ちょっと、待って」
 ゆると頭を左右に振った相手が、再度チラッとこちらに視線を走らせたあとで、深めの深呼吸を始める。ひっそりと行う余裕はないようで、その息遣いははっきりと耳に届いた。
「ぁ……」
 声を漏らしたのは相手ではなく自分の方だ。
 深呼吸を繰り返しながらタイミングを図っているのか、止まっていた腰がゆっくりと落ちていく。
 締め付けが一番強いのは入口付近で、上から順にキュッ、キュッ、キュッ、っと竿の根本までをゆっくり締め付けられていくのが、たまらなく気持ちがいい。
 深呼吸は繰り返されていて、相手はきっと快感なんて拾っていないと思うのに、一生懸命にその体内に迎え入れてくれる姿に胸の奥が熱くなった。
 より強い刺激と快感とを求めて腰をゆすりたいのを、こらえるのが難しい。どうにか耐えていられるのは、相手の必死さが伝わってくるせいだ。
 やっと好きな相手と体を繋いでいる、という感動や興奮ももちろんあった。しかも、相手がこんなにも頑張ってくれている、という喜びやら愛しさやらが混ざって、更に、体が直接受け取っている快感までが混ざって、頭の中がグチャグチャだ。グチャグチャだけど、幸せで、嬉しくて、気持ちがいいのは間違いなくて、こみ上げてくる何かで視界がぼやける。
「はい、った」
 むにっと相手の尻タブが肌に触れたとほぼ同時に、相手がホッとしたようにそう呟き、顔を上げた。
 ずっと相手を見つめていたこちらと目があって、滲む涙に気づいて驚いた後。おかしそうに、幸せそうに、嬉しそうに、笑う。それが最後のひと押しだった。
「あっ! あ、……あぁ……」
 体の中でグチャグチャに絡み合った幸せと喜びと快感が弾けて、次に押し寄せてくるのは絶望だ。
 肉の筒に包まれたペニスがピクピクと震えるのを感じながら、持ち上げた両腕をクロスさせて顔の上に置き、一転して情けなさで溢れる涙を隠した。

続きました→

 
 
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