ホッと安堵の息を吐く。様子をうかがうように、背後から肩越しに顔を出してこちらの横顔を見つめる視線には気づいていたから、軽く振り向きゴメンと告げる。
「ここまでにするか?」
「ううん。続けて。というか、俺の反応なんて気にせず、好きにしていいよ?」
ちょっと体をこわばらせた程度でこんな反応をされる方が、正直どうしていいかわからない。なのにあっさりばっさり、嫌だと返され驚いた。
「嫌、って、でも、抱いてくれるつもりで、ここにいるんだよね?」
「俺がお前を好き勝手するようなセックスがしたいわけじゃない、って言ってるだけだ。お前にも、ちゃんと一緒に楽しんで欲しいと思ってるよ」
「あー、うん、まぁ、かなり久々だし体もそれなりに成長したから不安な部分もなくはないけど、俺に酷いことして楽しみたいって欲求がないのは明白だし、好き勝手していいよなんて言う相手は一応俺だって選んでる。つまり、好き勝手されても気持ちよくはなれると思うし、どんな要求されたってちゃんと一緒に楽しめるはずだから大丈夫」
そう作られたこの体が、たかが数年でそう変わっているとは思えない。だから安心して、好き勝手して欲しい。
そう思っただけなのに、どうやらそれは相手が欲しい言葉ではなかったらしい。
「そういう話でもないんだけど、あー……難しいな」
こちらの説得を完全に諦めきったような独り言を残して、体に回っていた腕が全て解かれしまう。スッと背中から遠ざかる相手の気配にこそ不安を煽られる。
どうしていいかもわからないまま、慌てて立ち上がり追いかけた。といっても相手だってまだ体中泡だらけで、裸で、自分を置いてどこかへ行ってしまうわけがないのだけれど。
「どうした?」
縋るように相手の腕に絡みつけば、驚かれるのも当然だった。驚かれて少しだけ冷静さが戻ってくる。どこへも行かないはずの相手を必死に引き止めた行動がにわかに恥ずかしくなって、今度は慌てて相手の腕を放した。
「な、なんでもない。それより、もう、あがるの?」
「そのつもりだけど」
ここでしておく準備はもうないだろと言われて頷けば、シャワーの湯が向けられる。互いの体の泡を綺麗に流し落としてしまえば、ここには暫く用がない。用はないのだけれど、このどこか気まずい雰囲気のまま部屋に戻るのも、出来れば避けたいような気がしていた。
「あ、のさ」
意を決して、バスルームを出ようとする相手の腕を再度捕まえ声をかける。どうしたと振り向いてくれた相手の顔を見返すことが出来なくて、そっと俯き相手の視線を避けながら口を開く。
「俺に好き勝手したくないのはそっちの都合で、途中で終わっちゃったけど、俺だけいたずらされたのは不公平だと思う」
早口で言い募れば、戸惑うような「えっ?」という声が聞こえてきたけれど、それを無視して更に言葉を続けていく。
「俺だっていたずらしたい。好き勝手触って、弄って、煽りたい」
「えー……っと、ここで?」
「えっ、いいの?」
何言ってんだという反応が返ると思っていたから、驚きに顔をあげながら確かめてしまう。食い気味に確認したのがおかしかったのか、相手がふふっと微かに笑ったのも嬉しかった。というかホッとした。
「不公平なのは事実だから、ダメだなんて言わないよ。でも好き勝手に俺を触って、弄って、煽りたいだけなら、ここじゃなくてベッドの上でも可能じゃないの?」
ここでしか出来ないような何かをしたいのかと聞かれて首を横に振れば、じゃあ部屋に戻ろうと促される。さっきまでの気まずい雰囲気もいくらか解消されていたので、今度は引き止めることなく、相手の後を追いかけた。
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