応じるみたいに好きだよと囁かれて、優しい顔が近づいてくる。キスをされるのだと思ってそっと目を閉じたのに、唇が触れたのは先程親指に撫でられた目尻の辺りだった。
相変わらず言葉と行動がなんとなくチグハグだ、と思った。保護者と家族は卒業したと言っていたくせに。気遣いのようなものは感じるが、好きな子を抱きたいという欲のようなものは感じられない。
「キスひとつちゃんと口にはしてこないで、その好きを信じろって言うの?」
「お前が黙って目を閉じる理由を知ってるのに、口にキスできるわけ無いだろ」
したい気持ちがないわけじゃないよと言いながら、親指がふにっと唇に押し当てられる。けれど結局その指だって、やっぱりあっさりと外されてしまう。本当に、欲を感じない。
したい気持ちはある、という言葉への信頼まで崩れて行きそうで、なんだか泣いてしまいそうだった。ここはラブホの一室で、今までとは違ういやらしい触れ方で体を洗われて、フェラで相手をイカせてそれを飲み下した後だと言うのに、やっぱりセックスはなしと言われる可能性を考えてしまう。
だってずっと、相手のくれる言葉だけが頼りだった。抱きたい気持ちがあるという言葉を信じてたから、高校生相手には出来ないとの言葉を信じていたから、待っていたのに。
「どうしたら口にキスしてくれるの? まさか、セックスの最中もキスはしないつもりでいるの? それとも、ここまできといて、抱くのなしって言い出す気?」
高校卒業するまでどんだけ待たされたと思ってるのと、恨みがましく言ってしまえば、諦めた様子でため息がひとつ。
「お前がどうしても、今までの礼をセックスで返さないと気が済まないって言うなら、このまま抱くし、まぁ、セックスの一部としてのキスは、するよ」
「じゃあして。早く。いますぐに」
まだ抱いてくれる気が残っているらしいと知って、食い気味に急かしてしまった。だってダラダラと話していたら、したくないって方向にどんどん相手の気持ちが流れてしまうんじゃないかと不安だった。
わかった、という短な了承の後、再度顔が寄せられて今度こそ唇が触れ合った。食い気味に急かしたおかげか、唇に吸い付かれて食まれて、口を開けばすぐに舌が差し込まれてくる。
今度こそはっきりと感じる相手の欲に、ホッとして体の力が抜けていく。別にちっとも下手じゃないと思いながら、応じるように舌を差し出し絡めて、口内を擽られる気持ちよさに身を委ねた。
相手の腕にしっかりと体を支えられているので、どれだけ快感に没頭していても体が崩れ落ちてキスが中断してしまう、なんてことは起こらない。もちろん嫌がって相手を押し返す真似をするはずもなく、つまり、ひどく長々とキスを、キスだけを、続けていた。
セックスの一部としてのキス、にしてはあまりに長い気がしたし、こんなにキスばかりに時間を掛けてくれる事こそが、大事にされているという気にさせる。先程聞いた、好きだよの言葉が時折頭の中に繰り返し響いて、じわじわと嬉しくなる。
気持ちよくして欲しいよりも気持ちよくしてやりたい、なんてことを言ってもいたから、キスだけでもこんなにはっきりと快感を示している自分に、相手も安心しているだろうか。
「んっ、ふぁっ、ぁふん」
だったらいいなと思いながら、合わさる口の隙間から甘やかな吐息をこぼして、こんなにも気持ちがいいと、少しでもたくさん相手に伝えようとした。
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